百詩篇第4巻50番

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[[百詩篇第4巻]]>50番 *原文 Libra verra regner les Hesperies, De ciel&sup(){1},& terre tenir&sup(){2} la monarchie&sup(){3}: D'Asie forces&sup(){4} nul&sup(){5} ne verra peries Que sept ne tiennent par rang&sup(){6} la [[hierarchie]]&sup(){7}. **異文 (1) ciel : Ciel 1672 (2) terre tenir : tenir 1600 1610 1716, Terre tenir 1672 (3) monarchie : Monarchie 1588-89 1590SJ 1605 1611 1628 1644 1649Ca 1649Xa 1650Le 1653 1665 1668 1672 1772Ri 1981EB (4) forces : force 1649Xa (5) nul : nulle 1589PV (6) rang : ranc 1557U 1557B 1568A 1590Ro (7) hierarchie : Ierarchie 1588-89, Hierarchie 1590SJ 1611B 1649Ca 1650Le 1668 1672 1772Ri *日本語訳 天秤宮は目にするだろう、[[ヘスペリア]]諸邦が統治し、 天と地の君主国を保つのを。 誰もアジアの軍隊が滅ぶのを目にしないだろう、 七人が順番通りに[[ヒエラルキア]]を保つまでは。 **訳について  当「大事典」の訳は基本的に[[ピエール・ブランダムール]]の釈義を踏まえている。  4行目 par rang は「決まった順番に従い」(suivant un ordre déterminé)((p.528)) の意味。なお、que は中期フランス語において que を含む様々な句の代用になったので、いろいろな可能性がありうる。ただし、ここでは、ブランダムールが avant que と釈義し、[[ピーター・ラメジャラー]]や[[リチャード・シーバース]]が until と英訳していることを踏まえた。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  1行目 「天秤座はスペインを統治するのを見」((大乗 [1975] p.135。以下、この詩の引用は同じページから。))は許容範囲だろう。[[ヘスペリア]]はイタリアもしくはスペインを指す語である。  2行目「天と地の君主国となり」は tenir の処理の仕方に若干の疑問がある。  3行目「だれもがアジアの軍勢の滅びるのを見る」は誤訳。nul ne は「誰も~ない」の意味である。  4行目「七つまで一連の階級がつづくだろう」も誤訳。元になった[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳 Till seven have kept the Hierarchy successively.((Roberts (1947)[1949]))を訳し間違えた (Tillは行全体にかかるが、sevenのみにかかると誤認した)のだろう。少なくともこの詩に関しては、ロバーツの英訳自体は別におかしなものではない。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]について。  1行目 「天秤座が西を支配するのが見られよう」((山根 [1988] p.162。以下、この詩の引用は同じページから。))は、on が省略されていると見なし、それが verra の主語になっていると理解すれば可能な訳だが、位置関係からするとやや強引に思える。  2行目「天と地を完全にわがものとして」は意訳にしてもアレンジしすぎではないだろうか。  4行目「やがて七が継続して階層を握ることになる」は、前述のように que の機能は多様なので、「やがて」というのも無理ではない。ただし、「七が継続して」という訳し方は、7人(または7つの存在)が順番に、という原文の意味合いを汲み取りづらいように思われる。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、天秤宮はスペインに好意的な宮であり、スペインがローマ教皇への命令権を持つようになることが前半で言われているとした。後半は、そのスペインの党派に属する人物が順に7人、ローマ教皇に即位するまでは、オスマン帝国の軍隊はキリスト教国から打撃を受けることはないと解釈した((Garencieres [1672]))。  [[アンリ・トルネ=シャヴィニー]](1862年)は前半を聖俗双方の権力を有していたローマと解釈し、[[シクストゥス5世]](在位1585年 - 1590年)の時代以降のガリカニスムの動きと、レパントの海戦(1571年)が描写されているとした((Torné-Chavigny [1860-1862] p.5 (グーグルブックスのf.152)。))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)は、天秤宮を正義の象徴と理解したうえで、フランス革命以降の君主、すなわちナポレオン1世、ルイ18世、シャルル10世、ルイ=フィリップ、ナポレオン3世に続く2人の君主が近未来に即位するまで、アジアの軍勢が滅ぶことはないと解釈した (フォンブリュヌの解釈当時のフランスは第三共和政だが、フォンブリュヌは近く王政復古が起こると信じていた)((Fontbrune (1938)[1939] p.121))。この解釈は1937年、すなわち日中戦争から近未来の予測へと踏みこむ文脈で展開されていた。後の増補版(1975年)では時期を後にずらされた上に、7人については指導者(chefs)と曖昧にされ、君主に限定されなくなった((Fontbrune (1938)[1975] p.181))。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)はフォンブリュヌの当初の解釈をかなり取り入れ、日中戦争についてと解釈した。ラモンはヴィシー政権元首のペタン元帥を6人目の指導者とし、7人目は1944年以降に即位するフランス王で、それまでは日中戦争が続くとした((Lamont [1943] p.327))。  [[ロルフ・ボズウェル]](1943年)は天秤宮を自由と正義の象徴、ヘスペリアをアメリカと解釈し、前半はアメリカの繁栄と解釈した。また、3行目についてはアジアの軍勢が何らかの地殻変動、おそらくは大地震によって打撃を受けると解釈した((Boswell [1943] p.350))。  [[エリカ・チータム]](1973年)はアメリカの繁栄とする解釈を引き継ぎつつ、アジアにも同様の繁栄が見られること、7が示すのが1970年代だとすれば、その間に東西の戦争が起こるのではないかと解釈した。7についての別解釈として、1973年にヨーロッパ共同体にイギリス、アイルランド、デンマークが加盟したことを踏まえ、あと4か国が新規に加盟するときを示すのかもしれないとした((Cheetham [1973]))。  後の著書(1989年)では1970年代やECへの言及が削られ、[[反キリスト]]出現に関連する東西の戦争の詩かもしれないと修正された((Cheetham (1989)[1990]))。  [[ヴライク・イオネスク]](1976年)は、天秤宮の守護星が金星であり、金星は共産主義に繋がる暗示を含むとして、天秤宮を共産主義諸国と解釈し、それらの国々が第二次世界大戦後にアメリカの繁栄を目の当たりにすることとした。そして、この場合の「アジアの軍隊」はソ連を指し、トルーマン以降、7人のアメリカ大統領が就任した後でソ連が敗れると解釈した((Ionescu [1976] pp.790-791))。イオネスクが解釈した時点ではトルーマンから数えて5代目のフォードの在任中だった。7代目にあたるのはレーガンで、確かにソ連崩壊はレーガンの次代、ブッシュ(父)の在任中のことであった。  しかし、イオネスク自身はこの詩を冷戦終結には結びつけず、1993年にフランスと日本で出した著書ではいずれでも、金星はイスラームのシンボルであって天秤宮はイスラーム諸国、すなわちここで言われているのは湾岸戦争でのアメリカの勝利であると解釈した((Ionescu & De Brosse [1993] p.109 ; イオネスク [1993] pp.67-68))。  [[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]](1980年)は近未来に起こる世界大戦で西欧が勝利し、ソ連とワルシャワ条約機構加盟国(ソ連以外は7か国)が失墜することと解釈した((Fontbrune (1980)[1982]))。  このような出来事は起こらないままソ連もワルシャワ条約機構も解体されたが、フォンブリュヌは後の著書(2006年、2009年)では[[イスラーム]]勢力ないし中国と欧米が軍事衝突する予言で、アジアの敗戦は先進7か国(G7)の経済力が失墜したあとのことになると解釈した((Fontbrune [2006] p.478, Fontbrune [2009] p.95))。 *同時代的な視点  古代ローマのマルクス・マニリウスの占星術書によれば、天秤宮が支配する地域は[[ヘスペリア]]である。ゆえに、ここでいわれているのはローマかスペイン(複数形になっていることに注目すればその両方か)であろう。 「天秤こそはイタリアにふさわしい宮なのである。ローマは天秤宮の勢力のもとで建設された。ローマが全世界の盟主として、諸国民の運命を掌握し、ひとびとを天秤皿に乗せて思いのままに秤量し、世界を支配して己が法律をもれなく行なわせるのは、ひとえに天秤宮の保護下にあればこそである」((マルクス・マニリウス『占星術または天の聖なる学』有田忠郎訳、白水社))  [[ピエール・ブランダムール]]はマニリウスとの関連性を指摘したものの、具体的な事件とは結び付けていなかった。なお、ブランダムールの釈義では、4行目は7人の教皇の即位のこととされている((Brind'Amour [1993] p.290, Brind'Amour [1996]))。  この解釈は[[ピーター・ラメジャラー]]が踏襲した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  [[ロジェ・プレヴォ]]は、4行目の[[ヒエラルキア]]を天の位階、すなわち7人の天使と結びつけ、354年4ヶ月の周期と解釈した。[[百詩篇第1巻48番]]でも示されているように、7人の天使が守護する星とともに354年4ヵ月ごとに世界を支配するという思想では、ノストラダムスの時代は月の時代(西暦1533年 - 1887年)に入ったばかりで、次に太陽の時代(1887年 - 2242年)が巡り終えると3巡目を終えることになった。プレヴォはこの思想に基づいてオスマン帝国終焉の時期を描いたのだろうと推測した((Prevost [1999] p.118))。  プレヴォ自身は関連付けていないが、[[百詩篇第3巻97番]]はまさに月の時代か太陽の時代にオスマン帝国が滅びることを描いている可能性があるので、確かに4行目の7人が、教皇ではなく天使を指している可能性もあるのではないかと思われる。 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。なお、当「大事典」としては、以下に投稿されたコメントの信頼性などをなんら担保するものではありません (当「大事典」管理者である sumaru 自身によって投稿されたコメントを除く)。 #comment
[[百詩篇第4巻]]>50番 *原文 Libra verra regner les Hesperies, De ciel&sup(){1},& terre tenir&sup(){2} la monarchie&sup(){3}: D'Asie forces&sup(){4} nul&sup(){5} ne verra peries Que sept ne tiennent par rang&sup(){6} la [[hierarchie]]&sup(){7}. **異文 (1) ciel : Ciel 1672 (2) terre tenir : tenir 1600 1610 1716, Terre tenir 1672 (3) monarchie : Monarchie 1588-89 1590SJ 1605 1611 1628 1644 1649Ca 1649Xa 1650Le 1653 1665 1668 1672 1772Ri 1981EB (4) forces : force 1649Xa (5) nul : nulle 1589PV (6) rang : ranc 1557U 1557B 1568A 1590Ro (7) hierarchie : Ierarchie 1588-89, Hierarchie 1590SJ 1611B 1649Ca 1650Le 1668 1672 1772Ri *日本語訳 天秤宮は目にするだろう、[[ヘスペリア]]諸邦が統治し、 天と地の君主国を保つのを。 誰もアジアの軍隊が滅ぶのを目にしないだろう、 七人が順番通りに[[ヒエラルキア]]を保つまでは。 **訳について  当「大事典」の訳は基本的に[[ピエール・ブランダムール]]の釈義を踏まえている。  4行目 par rang は「決まった順番に従い」(suivant un ordre déterminé)((p.528)) の意味。なお、que は中期フランス語において que を含む様々な句の代用になったので、いろいろな可能性がありうる。ただし、ここでは、ブランダムールが avant que と釈義し、[[ピーター・ラメジャラー]]や[[リチャード・シーバース]]が until と英訳していることを踏まえた。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  1行目 「天秤座はスペインを統治するのを見」((大乗 [1975] p.135。以下、この詩の引用は同じページから。))は許容範囲だろう。[[ヘスペリア]]はイタリアもしくはスペインを指す語である。  2行目「天と地の君主国となり」は tenir の処理の仕方に若干の疑問がある。  3行目「だれもがアジアの軍勢の滅びるのを見る」は誤訳。nul ne は「誰も~ない」の意味である。  4行目「七つまで一連の階級がつづくだろう」も誤訳。元になった[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳 Till seven have kept the Hierarchy successively.((Roberts (1947)[1949]))を訳し間違えた (Tillは行全体にかかるが、sevenのみにかかると誤認した)のだろう。少なくともこの詩に関しては、ロバーツの英訳自体は別におかしなものではない。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]について。  1行目 「天秤座が西を支配するのが見られよう」((山根 [1988] p.162。以下、この詩の引用は同じページから。))は、on が省略されていると見なし、それが verra の主語になっていると理解すれば可能な訳だが、位置関係からするとやや強引に思える。  2行目「天と地を完全にわがものとして」は意訳にしてもアレンジしすぎではないだろうか。  4行目「やがて七が継続して階層を握ることになる」は、前述のように que の機能は多様なので、「やがて」というのも無理ではない。ただし、「七が継続して」という訳し方は、7人(または7つの存在)が順番に、という原文の意味合いを汲み取りづらいように思われる。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、天秤宮はスペインに好意的な宮であり、スペインがローマ教皇への命令権を持つようになることが前半で言われているとした。後半は、そのスペインの党派に属する人物が順に7人、ローマ教皇に即位するまでは、オスマン帝国の軍隊はキリスト教国から打撃を受けることはないと解釈した((Garencieres [1672]))。  [[アンリ・トルネ=シャヴィニー]](1862年)は前半を聖俗双方の権力を有していたローマと解釈し、[[シクストゥス5世]](在位1585年 - 1590年)の時代以降のガリカニスムの動きと、レパントの海戦(1571年)が描写されているとした((Torné-Chavigny [1860-1862] p.5 (グーグルブックスのf.152)。))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)は、天秤宮を正義の象徴と理解したうえで、フランス革命以降の君主、すなわちナポレオン1世、ルイ18世、シャルル10世、ルイ=フィリップ、ナポレオン3世に続く2人の君主が近未来に即位するまで、アジアの軍勢が滅ぶことはないと解釈した (フォンブリュヌの解釈当時のフランスは第三共和政だが、フォンブリュヌは近く王政復古が起こると信じていた)((Fontbrune (1938)[1939] p.121))。この解釈は1937年、すなわち日中戦争から近未来の予測へと踏みこむ文脈で展開されていた。後の増補版(1975年)では時期を後にずらされた上に、7人については指導者(chefs)と曖昧にされ、君主に限定されなくなった((Fontbrune (1938)[1975] p.181))。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)はフォンブリュヌの当初の解釈をかなり取り入れ、日中戦争についてと解釈した。ラモンはヴィシー政権元首のペタン元帥を6人目の指導者とし、7人目は1944年以降に即位するフランス王で、それまでは日中戦争が続くとした((Lamont [1943] p.327))。  [[ロルフ・ボズウェル]](1943年)は天秤宮を自由と正義の象徴、ヘスペリアをアメリカと解釈し、前半はアメリカの繁栄と解釈した。また、3行目についてはアジアの軍勢が何らかの地殻変動、おそらくは大地震によって打撃を受けると解釈した((Boswell [1943] p.350))。  [[エリカ・チータム]](1973年)はアメリカの繁栄とする解釈を引き継ぎつつ、アジアにも同様の繁栄が見られること、7が示すのが1970年代だとすれば、その間に東西の戦争が起こるのではないかと解釈した。7についての別解釈として、1973年にヨーロッパ共同体にイギリス、アイルランド、デンマークが加盟したことを踏まえ、あと4か国が新規に加盟するときを示すのかもしれないとした((Cheetham [1973]))。  後の著書(1989年)では1970年代やECへの言及が削られ、[[反キリスト]]出現に関連する東西の戦争の詩かもしれないと修正された((Cheetham (1989)[1990]))。  [[ヴライク・イオネスク]](1976年)は、天秤宮の守護星が金星であり、金星は共産主義に繋がる暗示を含むとして、天秤宮を共産主義諸国と解釈し、それらの国々が第二次世界大戦後にアメリカの繁栄を目の当たりにすることとした。そして、この場合の「アジアの軍隊」はソ連を指し、トルーマン以降、7人のアメリカ大統領が就任した後でソ連が敗れると解釈した((Ionescu [1976] pp.790-791))。イオネスクが解釈した時点ではトルーマンから数えて5代目のフォードの在任中だった。7代目にあたるのはレーガンで、確かにソ連崩壊はレーガンの次代、ブッシュ(父)の在任中のことであった。  しかし、イオネスク自身はこの詩を冷戦終結には結びつけず、1993年にフランスと日本で出した著書ではいずれでも、金星はイスラームのシンボルであって天秤宮はイスラーム諸国、すなわちここで言われているのは湾岸戦争でのアメリカの勝利であると解釈した((Ionescu & De Brosse [1993] p.109 ; イオネスク [1993] pp.67-68))。  [[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]](1980年)は近未来に起こる世界大戦で西欧が勝利し、ソ連とワルシャワ条約機構加盟国(ソ連以外は7か国)が失墜することと解釈した((Fontbrune (1980)[1982]))。  このような出来事は起こらないままソ連もワルシャワ条約機構も解体されたが、フォンブリュヌは後の著書(2006年、2009年)では[[イスラーム]]勢力ないし中国と欧米が軍事衝突する予言で、アジアの敗戦は先進7か国(G7)の経済力が失墜したあとのことになると解釈した((Fontbrune [2006] p.478, Fontbrune [2009] p.95))。 *同時代的な視点  古代ローマのマルクス・マニリウスの占星術書によれば、天秤宮が支配する地域は[[ヘスペリア]]である。ゆえに、ここでいわれているのはローマかスペイン(複数形になっていることに注目すればその両方か)であろう。 「天秤こそはイタリアにふさわしい宮なのである。ローマは天秤宮の勢力のもとで建設された。ローマが全世界の盟主として、諸国民の運命を掌握し、ひとびとを天秤皿に乗せて思いのままに秤量し、世界を支配して己が法律をもれなく行なわせるのは、ひとえに天秤宮の保護下にあればこそである」((マルクス・マニリウス『占星術または天の聖なる学』有田忠郎訳、白水社))  [[ピエール・ブランダムール]]はマニリウスとの関連性を指摘したものの、具体的な事件とは結び付けていなかった。なお、ブランダムールの釈義では、4行目は7人の教皇の即位のこととされている((Brind'Amour [1993] p.290, Brind'Amour [1996]))。  この解釈は[[ピーター・ラメジャラー]]が踏襲した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  [[ロジェ・プレヴォ]]は、4行目の[[ヒエラルキア]]を天の位階、すなわち7人の天使と結びつけ、354年4ヶ月の周期と解釈した。[[百詩篇第1巻48番]]でも示されているように、7人の天使が守護する星とともに354年4ヵ月ごとに世界を支配するという思想では、ノストラダムスの時代は月の時代(西暦1533年 - 1887年)に入ったばかりで、次に太陽の時代(1887年 - 2242年)が巡り終えると3巡目を終えることになった。プレヴォはこの思想に基づいてオスマン帝国終焉の時期を描いたのだろうと推測した((Prevost [1999] p.118))。  プレヴォ自身は関連付けていないが、[[百詩篇第3巻97番]]はまさに月の時代か太陽の時代にオスマン帝国が滅びることを描いている可能性があるので、確かに4行目の7人が、教皇ではなく天使を指している可能性もあるのではないかと思われる。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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