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『&bold(){アバモンの答え}』、正式名 『&bold(){ポルフュリオスがアネボーに宛てた手紙に対する師アバモンの答えと、その手紙で提示された諸問題の解法}』 は、3世紀後半から4世紀前半に活躍した新プラトン主義哲学者[[イアンブリコス]]の著書。『&bold(){エジプト人の秘儀について}』という通称でも知られるが、これはルネサンス期以降に定着した名称である。
*題名
正式名は上記の通りである。しかし、これをラテン語で釈義したマルシリオ・フィチーノが 『エジプト人、カルデア人、アッシリア人の秘儀』(1489年) と題して公刊し、さらにラテン語全訳であるニコラス・スクテッリ版(1556年)がさらに簡略に 『エジプト人の秘儀について』 と題したことで、そちらが定着するようになった。
ただし、近年は本来の題名の方が、成立経緯が鮮明になると言われている。
*内容
この書は正式名にあるように、イアンブリコスの弟子であるエジプト人アネボーに向けて、ポルフュリオスが示した『アネボーへの手紙』に対する反論である。アネボーという弟子が実在したかは分かっていないが、その人物に託けて自らに寄せられた疑問に対し、イアンブリコスはアバモンという仮名を使って反論する。
全10巻に分けられているが、これはスクテッリ版(1556年)からの慣例である。
第1巻は返答者についての前置きの後、多岐に渡る質問に分野ごとに答えていくことが示され、いくつかの問いが俎上に載せられている。
第2巻では神々、大天使、天使、ダイモーン、英雄、アルコーンの顕現形態の違いが論じられる。
第3巻は未来予知の手法について論じられ、ここでデルフォイや[[ブランキダイ>ブランコス]]の神託のほか、腸占い、鳥占い、星占いといった「しるし」を読み解く占いなども扱われる。
第4巻は召喚される上位の存在が下位のはずの人間に使役されうる背景などが論じられる。
第5巻は供犠について、第6巻では死肉に触れることの禁忌と生贄を捧げることの関係などが扱われる。
第7巻はエジプト人の秘儀とシンボルについて論じられ、第8巻では[[ヘルメス]]文書について紹介される。
第9巻は個につくダイモーンが採り上げられ、第10巻では神的な予言術と自然的・技術的予言術の違いが幸福をもたらすか否かという観点で比較される((以上、堀江聡「イアンブリコス」(『新プラトン主義を学ぶ人のために』世界思想社、2014年、所収)による。))。
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【画像】 『新プラトン主義を学ぶ人のために』
*ノストラダムス関連
ノストラダムスがこの書物(ラテン語版)から、少なくともデルフォイやブランキダイの神託の描写について、影響を受けていたことはほぼ確実視される。
ただし、再版されていたラテン語版を直接参照したのか、イアンブリコスを参照していた[[クリニトゥス]]やコルネリウス・アグリッパらの著書からの間接的な影響なのかは、論者によって見解が分かれる(詳しくは、[[百詩篇第1巻1番]]・[[百詩篇第1巻2番]]の両記事を参照のこと)。
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#comment
『&bold(){アバモンの答え}』、正式名 『&bold(){ポルフュリオスがアネボーに宛てた手紙に対する師アバモンの答えと、その手紙で提示された諸問題の解法}』 は、3世紀後半から4世紀前半に活躍した新プラトン主義哲学者[[イアンブリコス]]の著書。
『&bold(){エジプト人の秘儀について}』という通称でも知られるが、これはルネサンス期以降に定着した名称である。
*題名
正式名は上記の通りである。しかし、これをラテン語で釈義したマルシリオ・フィチーノが 『エジプト人、カルデア人、アッシリア人の秘儀』(1489年) と題して公刊し、さらにラテン語全訳であるニコラス・スクテッリ版(1556年)がさらに簡略に 『エジプト人の秘儀について』 と題したことで、そちらが定着するようになった。
ただし、近年は本来の題名の方が、成立経緯が鮮明になると言われている。
*内容
この書は正式名にあるように、イアンブリコスの弟子であるエジプト人アネボーに向けて、ポルフュリオスが示した『アネボーへの手紙』に対する反論である。
アネボーという弟子が実在したかは分かっていないが、その人物に託けて自らに寄せられた疑問に対し、イアンブリコスはアバモンという仮名を使って反論する。
全10巻に分けられているが、これはスクテッリ版(1556年)からの慣例である。
第1巻は返答者についての前置きの後、多岐に渡る質問に分野ごとに答えていくことが示され、いくつかの問いが俎上に載せられている。
第2巻では神々、大天使、天使、ダイモーン、英雄、アルコーンの顕現形態の違いが論じられる。
第3巻は未来予知の手法について論じられ、ここでデルフォイや[[ブランキダイ>ブランコス]]の神託のほか、腸占い、鳥占い、星占いといった「しるし」を読み解く占いなども扱われる。
第4巻は召喚される上位の存在が下位のはずの人間に使役されうる背景などが論じられる。
第5巻は供犠について、第6巻では死肉に触れることの禁忌と生贄を捧げることの関係などが扱われる。
第7巻はエジプト人の秘儀とシンボルについて論じられ、第8巻では[[ヘルメス]]文書について紹介される。
第9巻は個につくダイモーンが採り上げられ、第10巻では神的な予言術と自然的・技術的予言術の違いが幸福をもたらすか否かという観点で比較される((以上、堀江聡「イアンブリコス」(『新プラトン主義を学ぶ人のために』世界思想社、2014年、所収)による。))。
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【画像】 『新プラトン主義を学ぶ人のために』
*ノストラダムス関連
ノストラダムスがこの書物(ラテン語版)から、少なくともデルフォイやブランキダイの神託の描写について、影響を受けていたことはほぼ確実視される。
ただし、再版されていたラテン語版を直接参照したのか、イアンブリコスを参照していた[[クリニトゥス]]やコルネリウス・アグリッパらの著書からの間接的な影響なのかは、論者によって見解が分かれる(詳しくは、[[詩百篇第1巻1番]]・[[詩百篇第1巻2番]]の両記事を参照のこと)。
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