詩百篇第10巻36番

「詩百篇第10巻36番」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

詩百篇第10巻36番」(2019/02/27 (水) 21:37:28) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

[[百詩篇第10巻]]>36番 *原文 Apres&sup(){1} le Roy du [[soucq]]&sup(){2} guerres&sup(){3} parlant, L'isle&sup(){4} Harmotique&sup(){5} le tiendra à mespris&sup(){6}, Quelques ans bons rongeant vn & pillant Par tyrannie&sup(){7} à l'isle&sup(){8} changeant pris. **異文 (1) Apres : Apes 1611A, A pres 1611B (2) soucq : Sud 1672 (3) guerres : querres 1653 1665 (4) L’isle : Lisle 1568A, L’Isle 1597 1603Mo 1653 1665 1672 1840, L’esle 1627, L’ sle 1630Ma (5) Harmotique : Harmorique 1568A 1600 1668A 1716, Armorique 1590Ro, Harmoʇique 1627 (6) à mespris : a mespris 1568A 1672 (7) tyrannie : ty annie 1981EB (8) à l'isle : a lisle 1568A, à l'Isle 1591BR 1597 1600 1603Mo 1610 1611 1644 1653 1665 1716 1840 1981EB, a l'Isle 1672 (注記)1627は Harmotique の t が逆に印字。 **校訂  1行目 guerres についてはそのまま読む論者が多いが、[[ジャン=ポール・クレベール]]は guere (guère) と見なしている。なお、1、3、4行目はそれぞれ1音節足りない。  2行目 Harmotique についてはいくつかの読みがある。[[エドガー・レオニ]]、[[リチャード・シーバース]]らのようにそのまま読む場合がある一方、[[ピーター・ラメジャラー]]は疑問符つきで Hermetique としている。しかし、最古と推測される 1568A が Harmorique となっていることからすれば、それが最も可能性が高いと見るべきではないかと思われる。クレベールは(1568Aを認識していなかったにもかかわらず) Harmorique とする読みを示していた。 *日本語訳 スークの王が戦争に言及した後、 [[アルモリカ]]の島が彼を軽蔑するだろう。 良好な数年、一人が貪り、そして掠奪し、 島での暴政によって価値を変える。 **訳について  まず1行目は [[soucq]] が最大の難物である。[[ピーター・ラメジャラー]]、[[リチャード・シーバース]]は「(アラブ圏の)市場」(souk) と理解している。[[エドガー・レオニ]]や[[ジャン=ポール・クレベール]]は「切り株」(souche) の意味に理解しており、特にクレベールは「先祖」の意味を導いている。  当「大事典」ではとりあえず「スーク」とカタカナ書きしたが、これはアラブ圏の市場という読みを支持しているわけではなく、読みが特定できないものをそのままカタカナで音写したというだけの話である。  クレベールの場合 guerres を guere と読み替えることで、「王が先祖についてほとんど語らなかった後に」と理解している。  そのまま guerres と捉える論者たちは「soucq の王が戦争について語った後に」と読むのが普通である。「~について語る」という場合の parler は de を採るのが普通ではあるが、1行目は1音節足りないので、ことによると guerres の前に de ないし des が脱落しているのかもしれない。  ただ、前半律は roy までなので、du soucq は戦争の方を形容している可能性も否定できない。すなわち、「王が soucq の戦争について語った後に」というわけである。  2行目 Harmotique について、[[アナトール・ル・ペルチエ]]はギリシア語の armotikos からとし、「統一された、連合した」の意味を導いており、[[エドガー・レオニ]]や[[マリニー・ローズ]]が支持していた。[[ピーター・ラメジャラー]]は疑問符つきで Hermetique とし、「[[ヘルメス]](主義)的な」の意味を導いた。[[リチャード・シーバース]]はそのまま Harmotic と英訳しつつ、語註としてル・ペルチエ式とラメジャラー式の読みを疑問符つきで併記した。  当「大事典」は上記「校訂」節で述べたように、最古と思われるテクスト Harmorique を採用し、「アルモリカ」と読んだ。  3行目も1音節足りない。「良好な数年」と「一人」の関係は不明瞭。その「一人」にとって順調な期間という意味なのか、皆にとって順調な期間が過ぎると「一人」が暴政を敷くということなのか、(おそらく前置詞が欠落しているので)判断が難しい。ラメジャラーやシーバースの英訳では(後半の訳語に違いはあるが)「貪りと掠奪の良き数年間」(a good few years of...)という訳になっている。  [[ピエール・ブランダムール]]は釈義をしているわけではないが、[[百詩篇第2巻59番]]の語註として、ronger はこの場合、人々に税などを課すことを指しているとした。当「大事典」ではどちらの ronger も「貪る」で統一している。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  1行目 「南の王が戦争について語ったあとで」((大乗 [1975] p.293。以下、この詩の引用は同じページから。))は、底本に基づく訳としては妥当である。ただし、[[soucq]]を sud (南) と読み替えることを支持する論者はほとんどいないと言ってよい。  2行目「ハーモティック島はかれらをきらい」は単数の人称代名詞 le を「かれら」とする根拠が疑問。元になったはずの[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳でも him になっている。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]について。  1行目 「足の悪い国王が戦争の話をすると」((山根 [1988] p.324 。以下、この詩の引用は同じページから。))は転訳による誤訳。元になった[[エリカ・チータム]]の英訳では、souche と同一視するレオニの英訳を踏まえて、[[soucq]] がstump と英訳されていた。確かに stump には「切り株」以外に「義足」という意味もあるので「義足の王」=「足の悪い王」という訳は成立するかのようである。しかし、フランス語の souche には「義足」という意味はないので、「足の悪い」という訳し方は不当である。  2行目「連合諸島は彼を見くびるだろう」は、上述の通り、harmotique をギリシア語 armotikos からと理解する場合には一応成立するが、島は単数形なので「諸島」は不適切。  3行目「数年間 善良なる者がかみ 略奪する」は、bons を主語に採ることが妥当かが疑問。その場合、un の位置づけが不明瞭になる。もっとも、ラメジャラー、シーバース、クレベールらの訳や釈義では事実上 un は省かれている。 *信奉者側の見解  基本的に全訳本の類でしか解釈されてこなかった詩である。  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、1行目でいわれている王をスペイン王フェリペ2世、2行目のHarmotique の島を(根拠を挙げずに)[[イングランド]]とし、1588年にスペインの無敵艦隊がイギリス海軍に大敗を喫し、イングランドの価値を高めたことと解釈した((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]、[[シャルル・ニクロー]]、[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]、[[アンドレ・ラモン]]、[[ロルフ・ボズウェル]]、[[ジェイムズ・レイヴァー]]の著書には載っていない。  [[ヘンリー・C・ロバーツ]](1947年)は無敵艦隊敗北とするガランシエールの解釈を踏襲した((Roberts (1947)[1949/1982/1994]))。  [[エリカ・チータム]](1973年)もほぼ同時期のイングランド情勢と解釈し、3行目はドレイクら私掠船と結びつけた((Cheetham [1973]))。  [[セルジュ・ユタン]](1978年)はピューリタン革命からクロムウェル独裁に至る時期のイングランドと解釈した((Hutin [1978]))。 *同時代的な視点  この詩は1行目の [[soucq]] と2行目の Harmotique (Harmorique) をどう解釈するかについて、必ずしも有力な解釈が確立しておらず、細かい情景の特定が難しいという事情がある。ただ、2行目 harmotique をギリシア語 armotikos からとして「連合した島」と読もうと、「アルモリカの島」と読もうと、それがグレート・ブリテン島(ないし[[イギリス諸島]]のいずれかの島)を指している可能性は高い(アルモリカそのものはブルターニュ周辺を指すに過ぎないので、そこからグレート・ブリテン〔グランド・ブルターニュ〕を導くのは少々の飛躍を必要とするが)。  ただ、そうだとしても、そのイングランド等から軽んじられることになる [[soucq]] の王が誰なのかはよく分からない。  [[ピーター・ラメジャラー]]は『[[ミラビリス・リベル]]』、特にその「[[偽メトディウス]]の予言」において、[[イスラーム]]勢力によるヨーロッパ侵攻が地中海の島々を経るとされていることを踏まえ、それがモデルと推測した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。この読みが正しいとすればイングランドやブルターニュ沖の島(?)の出る幕はないので、ラメジャラーが Harmotique を Hermetique と校訂した理由は分からないことはない。ただし、ではその「[[ヘルメス]](主義)の島」が何を指すのかについて、ラメジャラーは一言も説明しなかった。  当「大事典」でも一つ可能性を加えておく。  soucq を soc (q) と読むことが可能なら、中世イギリスのある種の農民身分を指す可能性が出てくる([[soucq]]参照)。その場合、戦争をちらつかせてイングランド(の執政者たち?)から軽んじられる soucq の王とは、農民反乱の指導者なのではないかと考えられる。  そうなれば最有力の候補として想定できるのはワット・タイラーの乱(1381年)だろう。他にも有名なイギリス農民一揆としてジャック・ケイドの乱(1450年)、ロバート・ケットの乱(1549年)などもあるが、タイラーのそれはロンドンを一時占拠し、時の国王に要求の少なからぬ部分を飲ませるところまでいった点で他よりも規模が大きかった。  詩の情景に全面的に当てはまるとはいえないかもしれないが、一つの可能性として一応記載しておく。 #ref(souk.PNG) 【画像】 関連地図 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。なお、当「大事典」としては、以下に投稿されたコメントの信頼性などをなんら担保するものではありません (当「大事典」管理者である sumaru 自身によって投稿されたコメントを除く)。 #comment
[[詩百篇第10巻]]>36番* *原文 Apres&sup(){1} le Roy du [[soucq]]&sup(){2} guerres&sup(){3} parlant, L'isle&sup(){4} Harmotique&sup(){5} le tiendra à mespris&sup(){6}, Quelques ans bons rongeant vn & pillant Par tyrannie&sup(){7} à l'isle&sup(){8} changeant pris. **異文 (1) Apres : Apes 1611A, A pres 1611B (2) soucq : Sud 1672Ga (3) guerres : querres 1653AB 1665Ba (4) L’isle : Lisle 1568X, L’Isle 1597Br 1603Mo 1650Mo 1653AB 1665Ba 1667Wi 1672Ga 1720To 1840, L’ sle 1627Ma, L’esle 1627Di (5) Harmotique : Harmorique 1568X 1610Po 1668A, Armorique 1590Ro, Harmoʇique 1627Di, Harmotigue 1716PR(a b) (6) à mespris : a mespris 1568X 1672Ga (7) tyrannie : ty annie 1981EB (8) à l'isle : a lisle 1568X, à l'Isle 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1610Po 1611 1644Hu 1650Mo 1653AB 1665Ba 1667Wi 1716PR(a c) 1720To 1840 1981EB, a l'Isle 1672Ga (注記)1627Diは Harmotique の t が逆に印字。 **校訂  1行目 guerres についてはそのまま読む論者が多いが、[[ジャン=ポール・クレベール]]は guere (guère) と見なしている。なお、1、3、4行目はそれぞれ1音節足りない。  2行目 Harmotique についてはいくつかの読みがある。[[エドガー・レオニ]]、[[リチャード・シーバース]]らのようにそのまま読む場合がある一方、[[ピーター・ラメジャラー]]は疑問符つきで Hermetique としている。しかし、最古と推測される 1568A が Harmorique となっていることからすれば、それが最も可能性が高いと見るべきではないかと思われる。クレベールは(1568Aを認識していなかったにもかかわらず) Harmorique とする読みを示していた。 *日本語訳 スークの王が戦争に言及した後、 [[アルモリカ]]の島が彼を軽蔑するだろう。 良好な数年、一人が貪り、そして掠奪し、 島での暴政によって価値を変える。 **訳について  まず1行目は [[soucq]] が最大の難物である。[[ピーター・ラメジャラー]]、[[リチャード・シーバース]]は「(アラブ圏の)市場」(souk) と理解している。[[エドガー・レオニ]]や[[ジャン=ポール・クレベール]]は「切り株」(souche) の意味に理解しており、特にクレベールは「先祖」の意味を導いている。  当「大事典」ではとりあえず「スーク」とカタカナ書きしたが、これはアラブ圏の市場という読みを支持しているわけではなく、読みが特定できないものをそのままカタカナで音写したというだけの話である。  クレベールの場合 guerres を guere と読み替えることで、「王が先祖についてほとんど語らなかった後に」と理解している。  そのまま guerres と捉える論者たちは「soucq の王が戦争について語った後に」と読むのが普通である。「~について語る」という場合の parler は de を採るのが普通ではあるが、1行目は1音節足りないので、ことによると guerres の前に de ないし des が脱落しているのかもしれない。  ただ、前半律は roy までなので、du soucq は戦争の方を形容している可能性も否定できない。すなわち、「王が soucq の戦争について語った後に」というわけである。  2行目 Harmotique について、[[アナトール・ル・ペルチエ]]はギリシア語の armotikos からとし、「統一された、連合した」の意味を導いており、[[エドガー・レオニ]]や[[マリニー・ローズ]]が支持していた。[[ピーター・ラメジャラー]]は疑問符つきで Hermetique とし、「[[ヘルメス]](主義)的な」の意味を導いた。[[リチャード・シーバース]]はそのまま Harmotic と英訳しつつ、語註としてル・ペルチエ式とラメジャラー式の読みを疑問符つきで併記した。  当「大事典」は上記「校訂」節で述べたように、最古と思われるテクスト Harmorique を採用し、「アルモリカ」と読んだ。  3行目も1音節足りない。「良好な数年」と「一人」の関係は不明瞭。その「一人」にとって順調な期間という意味なのか、皆にとって順調な期間が過ぎると「一人」が暴政を敷くということなのか、(おそらく前置詞が欠落しているので)判断が難しい。ラメジャラーやシーバースの英訳では(後半の訳語に違いはあるが)「貪りと掠奪の良き数年間」(a good few years of...)という訳になっている。  [[ピエール・ブランダムール]]は釈義をしているわけではないが、[[百詩篇第2巻59番]]の語註として、ronger はこの場合、人々に税などを課すことを指しているとした。当「大事典」ではどちらの ronger も「貪る」で統一している。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  1行目 「南の王が戦争について語ったあとで」((大乗 [1975] p.293。以下、この詩の引用は同じページから。))は、底本に基づく訳としては妥当である。ただし、[[soucq]]を sud (南) と読み替えることを支持する論者はほとんどいないと言ってよい。  2行目「ハーモティック島はかれらをきらい」は単数の人称代名詞 le を「かれら」とする根拠が疑問。元になったはずの[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳でも him になっている。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]について。  1行目 「足の悪い国王が戦争の話をすると」((山根 [1988] p.324 。以下、この詩の引用は同じページから。))は転訳による誤訳。元になった[[エリカ・チータム]]の英訳では、souche と同一視するレオニの英訳を踏まえて、[[soucq]] がstump と英訳されていた。確かに stump には「切り株」以外に「義足」という意味もあるので「義足の王」=「足の悪い王」という訳は成立するかのようである。しかし、フランス語の souche には「義足」という意味はないので、「足の悪い」という訳し方は不当である。  2行目「連合諸島は彼を見くびるだろう」は、上述の通り、harmotique をギリシア語 armotikos からと理解する場合には一応成立するが、島は単数形なので「諸島」は不適切。  3行目「数年間 善良なる者がかみ 略奪する」は、bons を主語に採ることが妥当かが疑問。その場合、un の位置づけが不明瞭になる。もっとも、ラメジャラー、シーバース、クレベールらの訳や釈義では事実上 un は省かれている。 *信奉者側の見解  基本的に全訳本の類でしか解釈されてこなかった詩である。  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、1行目でいわれている王をスペイン王フェリペ2世、2行目のHarmotique の島を(根拠を挙げずに)[[イングランド]]とし、1588年にスペインの無敵艦隊がイギリス海軍に大敗を喫し、イングランドの価値を高めたことと解釈した((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]、[[シャルル・ニクロー]]、[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]、[[アンドレ・ラモン]]、[[ロルフ・ボズウェル]]、[[ジェイムズ・レイヴァー]]の著書には載っていない。  [[ヘンリー・C・ロバーツ]](1947年)は無敵艦隊敗北とするガランシエールの解釈を踏襲した((Roberts (1947)[1949/1982/1994]))。  [[エリカ・チータム]](1973年)もほぼ同時期のイングランド情勢と解釈し、3行目はドレイクら私掠船と結びつけた((Cheetham [1973]))。  [[セルジュ・ユタン]](1978年)はピューリタン革命からクロムウェル独裁に至る時期のイングランドと解釈した((Hutin [1978]))。 *同時代的な視点  この詩は1行目の [[soucq]] と2行目の Harmotique (Harmorique) をどう解釈するかについて、必ずしも有力な解釈が確立しておらず、細かい情景の特定が難しいという事情がある。ただ、2行目 harmotique をギリシア語 armotikos からとして「連合した島」と読もうと、「アルモリカの島」と読もうと、それがグレート・ブリテン島(ないし[[イギリス諸島]]のいずれかの島)を指している可能性は高い(アルモリカそのものはブルターニュ周辺を指すに過ぎないので、そこからグレート・ブリテン〔グランド・ブルターニュ〕を導くのは少々の飛躍を必要とするが)。  ただ、そうだとしても、そのイングランド等から軽んじられることになる [[soucq]] の王が誰なのかはよく分からない。  [[ピーター・ラメジャラー]]は『[[ミラビリス・リベル]]』、特にその「[[偽メトディウス]]の予言」において、[[イスラーム]]勢力によるヨーロッパ侵攻が地中海の島々を経るとされていることを踏まえ、それがモデルと推測した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。この読みが正しいとすればイングランドやブルターニュ沖の島(?)の出る幕はないので、ラメジャラーが Harmotique を Hermetique と校訂した理由は分からないことはない。ただし、ではその「[[ヘルメス]](主義)の島」が何を指すのかについて、ラメジャラーは一言も説明しなかった。  当「大事典」でも一つ可能性を加えておく。  soucq を soc (q) と読むことが可能なら、中世イギリスのある種の農民身分を指す可能性が出てくる([[soucq]]参照)。その場合、戦争をちらつかせてイングランド(の執政者たち?)から軽んじられる soucq の王とは、農民反乱の指導者なのではないかと考えられる。  そうなれば最有力の候補として想定できるのはワット・タイラーの乱(1381年)だろう。他にも有名なイギリス農民一揆としてジャック・ケイドの乱(1450年)、ロバート・ケットの乱(1549年)などもあるが、タイラーのそれはロンドンを一時占拠し、時の国王に要求の少なからぬ部分を飲ませるところまでいった点で他よりも規模が大きかった。  詩の情景に全面的に当てはまるとはいえないかもしれないが、一つの可能性として一応記載しておく。 #ref(souk.PNG) 【画像】 関連地図 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。なお、当「大事典」としては、以下に投稿されたコメントの信頼性などをなんら担保するものではありません (当「大事典」管理者である sumaru 自身によって投稿されたコメントを除く)。 #comment

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: