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*原文
L'an&sup(){1} que Mercure, Mars, Venus&sup(){2} retrograde&sup(){3},
Du grand Monarque&sup(){4} la ligne ne faillir&sup(){5} :
Esleu du peuple l'vsitant&sup(){6} pres de [[Gagdole]]&sup(){7},
Qu'en paix & [[regne]]&sup(){8} viendra&sup(){9} fort [[enuieillir>envieillir]]&sup(){10}.
**異文
(1) an : An 1672
(2) Venus : Ven' 1557B, Venu 1627
(3) retrograde : retrogarde 1610 1611B 1716
(4) Monarque : monarque 1588-89 1590Ro 1627 1650Ri
(5) faillir : faillit 1568B 1568C 1568I 1597 1605 1611A 1628 1649Xa 1672
(6) l'vsitant : Lusitan 1627, L'usitain 1650, Lusitain 1644 1650Ri 1668, Lusitant 1672, de Lusitam 1665, Lusitam 1653 1840
(7) de Gagdole : de Gandole 1557B 1589PV, Gahdole 1588-89, de Cagdole 1590Ro, de Gahdole 1611B 1660, de Gaudole 1600 1610 1716, de Graudale 1650Le 1650Ri, Graudale 1644 1653 1665, de Graulade 1668, de Pactole 1672, Grandale 1627 1840, d'Almade &italic(){conj.(PB)}
(8) paix & regne : regne & paix 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1840, Paix & Regne 1672
(9) viendra : vindra 1668
(10) enuieillir : enuillir 1589PV, enueillir 1649Xa, enviellir 1668
(注記)Leoni [1982] ではl'vsitant の 1597 における異文として Lusitan が挙げられているが、何らかの誤認(1643年ガルサン版と間違えた?)と考えられる。
**校訂
3行目 pres de Gagdole は非常に異文が多い。少なくとも初出の Gagdole は意味不明な上、1行目の retrograde とも韻を踏んでいないので明らかに誤りである。韻を踏むように -ade(s) となる語で意味の通るものを探すと、de Gades か d'Almade のいずれかの可能性が高い。後者の方が(かなり大胆な改変ではあるものの)文脈にも良く当てはまる。
これに対し、同じ行の l'vsitant が Lusitain の誤植であることには異論はないものと思われる。
*日本語訳
水星、火星、金星が逆行する年、
偉大な君主の家柄が衰えることはなく、
[[アルマダ]]近くの[[ルシタニア]]人たちから選ばれた者は
平和裏に君臨する中で非常に長生きすることになるだろう。
**訳について
山根訳は十分許容されうる訳。大乗訳2行目「大君主の列が欠け」((大乗 [1975] p.147))は、ne が訳されておらず、意味が逆になっている。また、「列」は誤りではなくとも文脈に適していない。同4行目「しばらくは平和に統治するだろう」の「しばらく」という期間設定は、fort envieillir の訳としては不適切。
3行目はブランダムールの校訂を採用して訳した。4行目の「平和裏に君臨し」の直訳は「平和と統治(君臨)の中で」だが、あえて意訳した。
*信奉者側の見解
ポルトガルがスペインとの同君統治(1580年-1640年)を脱し、独立を回復したことの予言と解釈される。[[ヘンリー・C・ロバーツ]]、[[エリカ・チータム]]、[[ジョン・ホーグ]]らがこの解釈を取っているが、ホーグが認めるように、1640年に即位したジョアン4世は16年の在位で51歳で没している。これについてホーグは、むしろ彼の治世を通じてポルトガルがその地位を高めたことを指摘している。
*同時代的な視点
該当の星位は1502年にも見られる。この年に生まれたジョアン3世は、ノストラダムスがこの詩を書いた1556年頃にちょうどポルトガルの王だった。実際には、ジョアン3世は1557年に55歳で36年間の治世を閉じることになるが、[[ピエール・ブランダムール]]は、ノストラダムスの予想ではもっと長生きすることが期待されていたのだろうとする((Brind’Amour [1993] p.275))。[[ピーター・ラメジャラー]]もこの読み方を支持している((Lemesurier [2003b]))。
アルマダはテージョ川を挟んでリスボンと向かい合っている港町。つまり、「アルマダ近くのルシタニア人」とは「リスボン市民」にほかならない。
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#comment
*原文
L'an&sup(){1} que Mercure, Mars, Venus&sup(){2} retrograde&sup(){3},
Du grand Monarque&sup(){4} la ligne ne faillir&sup(){5} :
Esleu du peuple l'vsitant&sup(){6} pres de [[Gagdole]]&sup(){7},
Qu'en paix & [[regne]]&sup(){8} viendra&sup(){9} fort [[enuieillir>envieillir]]&sup(){10}.
**異文
(1) an : An 1672
(2) Venus : Ven' 1557B, Venu 1627
(3) retrograde : retrogarde 1610 1611B 1716
(4) Monarque : monarque 1588-89 1590Ro 1627 1650Ri
(5) faillir : faillit 1568B 1568C 1568I 1597 1605 1611A 1628 1649Xa 1672
(6) l'vsitant : Lusitan 1627, L'usitain 1650, Lusitain 1644 1650Ri 1668, Lusitant 1672, de Lusitam 1665, Lusitam 1653 1840
(7) de Gagdole : de Gandole 1557B 1589PV, Gahdole 1588-89, de Cagdole 1590Ro, de Gahdole 1611B 1660, de Gaudole 1600 1610 1716, de Graudale 1650Le 1650Ri, Graudale 1644 1653 1665, de Graulade 1668, de Pactole 1672, Grandale 1627 1840, d'Almade &italic(){conj.(PB)}
(8) paix & regne : regne & paix 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1840, Paix & Regne 1672
(9) viendra : vindra 1668
(10) enuieillir : enuillir 1589PV, enueillir 1649Xa, enviellir 1668
(注記)Leoni [1982] ではl'vsitant の 1597 における異文として Lusitan が挙げられているが、何らかの誤認(1643年ガルサン版と間違えた?)と考えられる。
**校訂
3行目 pres de Gagdole は非常に異文が多い。少なくとも初出の Gagdole は意味不明な上、1行目の retrograde とも韻を踏んでいないので明らかに誤りである。韻を踏むように -ade(s) となる語で意味の通るものを探すと、de Gades か d'Almade のいずれかの可能性が高い。後者の方が(かなり大胆な改変ではあるものの)文脈にも良く当てはまる。
これに対し、同じ行の l'vsitant が Lusitain の誤植であることには異論はないものと思われる。
*日本語訳
水星、火星、金星が逆行する年、
偉大な君主の家柄が衰えることはなく、
[[アルマダ]]近くの[[ルシタニア]]人たちから選ばれた者は
平和裏に君臨する中で非常に長生きすることになるだろう。
**訳について
山根訳は十分許容されうる訳。大乗訳2行目「大君主の列が欠け」((大乗 [1975] p.147))は、ne が訳されておらず、意味が逆になっている。また、「列」は誤りではなくとも文脈に適していない。同4行目「しばらくは平和に統治するだろう」の「しばらく」という期間設定は、fort envieillir の訳としては不適切。
3行目はブランダムールの校訂を採用して訳した。4行目の「平和裏に君臨し」の直訳は「平和と統治(君臨)の中で」だが、あえて意訳した。
*信奉者側の見解
ポルトガルがスペインとの同君統治(1580年-1640年)を脱し、独立を回復したことの予言と解釈される。
[[ヘンリー・C・ロバーツ]]、[[エリカ・チータム]]、[[ジョン・ホーグ]]らがこの解釈を取っているが、ホーグが認めるように、1640年に即位したジョアン4世は16年の在位で51歳で没している。
これについてホーグは、むしろ彼の治世を通じてポルトガルがその地位を高めたことを指摘している。
*同時代的な視点
該当の星位は1502年にも見られる。
この年に生まれたジョアン3世は、ノストラダムスがこの詩を書いた1556年頃にちょうどポルトガルの王だった。
実際には、ジョアン3世は1557年に55歳で36年間の治世を閉じることになるが、[[ピエール・ブランダムール]]は、ノストラダムスの予想ではもっと長生きすることが期待されていたのだろうとする((Brind’Amour [1993] p.275))。
[[ピーター・ラメジャラー]]もこの読み方を支持している((Lemesurier [2003b]))。
アルマダはテージョ川を挟んで[[リスボン]]と向かい合っている港町。つまり、「アルマダ近くのルシタニア人」とは「リスボン市民」にほかならない。
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