百詩篇第4巻93番

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*原文 Vn serpent veu proche du lict royal&sup(){1}, Sera par dame&sup(){2} nuict chiens&sup(){3} n'abayeront&sup(){4}: Lors naistre&sup(){5} en France vn prince&sup(){6} tant royal&sup(){7}, Du ciel&sup(){8} venu tous les princes&sup(){9} verront. **異文 (1) royal 1557U 1557B 1568 1589PV 1600 1610 1627 1772Ri : Royal &italic(){T.A.Eds.} (2) par dame : pardame 1600 1610 1716, par dame?[&italic(){sic.}] 1627, par Dame 1665 1672 1840 (3) chiens : chien 1605 1611 1628 1649Xa 1660 1672 (4) n'abayeront : n'abboyeront 1588-89, n'abageronts 1672 (5) naistre : naistra 1588-89, nastre 1672 (6) prince 1557U 1557B 1568 1588Rf 1588Me 1589PV 1627 : Prince &italic(){T.A.Eds.} (7) royal : Royal 1588-89 1590 1605 1611 1628 1649Ca 1649Xa 1672, loyal 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1660 1667 1668 1840 (8) ciel : Ciel 1649Ca 1650Le 1668A 1672 (9) princes : Princes 1568 1590Ro 1597 1600 1605 1610 1611 1628 1649Xa 1653 1660 1665 1667 1672 1716 1772Ri *日本語訳 王家の寝所の近くで一匹の蛇が目撃されるであろう、 婦人によって。夜、犬たちは吠えないだろう。 その時、フランスでは、王にふさわしい一人の王子が生まれるだろう。 全ての君主たちは、(彼が)天から来たと認識するだろう。 **訳について  山根訳は2行目が少々分かりづらいように感じるが、訳し方として誤りはない。  大乗訳4行目「すべての王子たちは 天からそのことを知るだろう」((大乗 [1975] p.146))は誤訳。venu(「来る」の過去分詞)を見落として訳したものか(ロバーツの英訳では Come from heaven と、venu も訳されている)。 *信奉者側の見解  [[アナトール・ル・ペルチエ]]は、ボルドー公(シャンボール伯)アンリ誕生(1820年)の予言と解釈している((Le Pelletier [1867a] pp.245-246))。復古王朝の正統な継承者であったベリー公は、身重だった妻を残して1820年2月13日に暗殺された。その7か月ほど後に誕生した子どもが男児だったため、王党派は天来の贈り物と絶賛した。この男児がアンリ・デュードンネ・ダルトワであり、のちに爵位をもとにボルドー公、シャンボール伯などと呼ばれた。デュードンネ(Dieudonné)とは「神からの贈り物」の意味であり、この詩の4行目に見事に当てはまっていると解釈される。また、「蛇」は後にフランス国王となるルイ=フィリップ・ドルレアンのことだという。シャンボール伯とする解釈は、[[エリカ・チータム]]も支持している((Cheetham [1990]))。  [[ジョン・ホーグ]]は、[[カトリーヌ・ド・メディシス]]が夫[[アンリ2世]]の死後、紋章に蛇を加えることが1行目で予言されているとした。彼の場合、残りの部分は回顧的な描写で、新婚当初、なかなか子どもに恵まれなかった中で待望の世継フランソワ(2世)が生まれたことを描いたのだとしている((Hogue [1997/1999]))。 *同時代的な視点  寝室と蛇については、[[テオフィル・ド・ガランシエール]]が指摘するように、プルタルコス『対比列伝』でアレクサンドロス大王の誕生に際して似通ったエピソードが語られている。また、[[ジャン=ポール・クレベール]]は、スエトニウスが語るアウグストゥスの生涯でも似たようなエピソードがあることを指摘している。  [[ピーター・ラメジャラー]]は、そうした古代の大君主誕生のエピソードと重ねつつ、フランスに現れるであろう未来の大君主を予言したものだと見ている((Lemesurier[2003b]))。実際、ラメジャラーが指摘する『[[ミラビリス・リベル]]』をはじめ、中世から近世の予言文書には、未来のフランスに現れる大君主のモチーフが見られるので、こうした解釈は十分にありうるように思える。 ---- #comment
*原文 Vn serpent veu proche du lict royal&sup(){1}, Sera par dame&sup(){2} nuict chiens&sup(){3} n'abayeront&sup(){4}: Lors naistre&sup(){5} en France vn prince&sup(){6} tant royal&sup(){7}, Du ciel&sup(){8} venu tous les princes&sup(){9} verront. **異文 (1) royal 1557U 1557B 1568 1589PV 1600 1610 1627 1772Ri : Royal &italic(){T.A.Eds.} (2) par dame : pardame 1600 1610 1716, par dame?[&italic(){sic.}] 1627, par Dame 1665 1672 1840 (3) chiens : chien 1605 1611 1628 1649Xa 1660 1672 (4) n'abayeront : n'abboyeront 1588-89, n'abageronts 1672 (5) naistre : naistra 1588-89, nastre 1672 (6) prince 1557U 1557B 1568 1588Rf 1588Me 1589PV 1627 : Prince &italic(){T.A.Eds.} (7) royal : Royal 1588-89 1590 1605 1611 1628 1649Ca 1649Xa 1672, loyal 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1660 1667 1668 1840 (8) ciel : Ciel 1649Ca 1650Le 1668A 1672 (9) princes : Princes 1568 1590Ro 1597 1600 1605 1610 1611 1628 1649Xa 1653 1660 1665 1667 1672 1716 1772Ri *日本語訳 王家の寝所の近くで一匹の蛇が目撃されるであろう、 婦人によって。夜、犬たちは吠えないだろう。 その時、フランスでは、王にふさわしい一人の王子が生まれるだろう。 全ての君主たちは、(彼が)天から来たと認識するだろう。 **訳について  山根訳は2行目が少々分かりづらいように感じるが、訳し方として誤りはない。  大乗訳4行目「すべての王子たちは 天からそのことを知るだろう」((大乗 [1975] p.146))は誤訳。venu(「来る」の過去分詞)を見落として訳したものか(ロバーツの英訳では Come from heaven と、venu も訳されている)。 *信奉者側の見解  [[1689年ルーアン版『予言集』>ミシェル・ノストラダムス師の真の百詩篇集と予言集 (ブゾンニュ、1689年)]]に掲載された「当代の一知識人」の解釈では、当時フランス王だったルイ14世のこととされていた。  [[アナトール・ル・ペルチエ]]は、ボルドー公(シャンボール伯)アンリ誕生(1820年)の予言と解釈している((Le Pelletier [1867a] pp.245-246))。復古王朝の正統な継承者であったベリー公は、身重だった妻を残して1820年2月13日に暗殺された。その7か月ほど後に誕生した子どもが男児だったため、王党派は天来の贈り物と絶賛した。この男児がアンリ・デュードンネ・ダルトワであり、のちに爵位をもとにボルドー公、シャンボール伯などと呼ばれた。デュードンネ(Dieudonné)とは「神からの贈り物」の意味であり、この詩の4行目に見事に当てはまっていると解釈される。また、「蛇」は後にフランス国王となるルイ=フィリップ・ドルレアンのことだという。シャンボール伯とする解釈は、[[エリカ・チータム]]も支持している((Cheetham [1990]))。  [[ジョン・ホーグ]]は、[[カトリーヌ・ド・メディシス]]が夫[[アンリ2世]]の死後、紋章に蛇を加えることが1行目で予言されているとした。彼の場合、残りの部分は回顧的な描写で、新婚当初、なかなか子どもに恵まれなかった中で待望の世継フランソワ(2世)が生まれたことを描いたのだとしている((Hogue [1997/1999]))。 *同時代的な視点  寝室と蛇については、[[テオフィル・ド・ガランシエール]]が指摘するように、プルタルコス『対比列伝』でアレクサンドロス大王の誕生に際して似通ったエピソードが語られている。また、[[ジャン=ポール・クレベール]]は、スエトニウスが語るアウグストゥスの生涯でも似たようなエピソードがあることを指摘している。  [[ピーター・ラメジャラー]]は、そうした古代の大君主誕生のエピソードと重ねつつ、フランスに現れるであろう未来の大君主を予言したものだと見ている((Lemesurier[2003b]))。実際、ラメジャラーが指摘する『[[ミラビリス・リベル]]』をはじめ、中世から近世の予言文書には、未来のフランスに現れる大君主のモチーフが見られるので、こうした解釈は十分にありうるように思える。 ---- #comment

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