百詩篇第4巻86番

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*原文 L'an que&sup(){1} Saturne&sup(){2} en eaue&sup(){3} sera&sup(){4} conioinct, Auecques [[Sol]]&sup(){5}, le&sup(){6} Roy fort & puissant&sup(){7}: A Reims &&sup(){8} Aix sera receu & oingt, Apres conquestes meurtrira innocens&sup(){9}. **異文 (1) L'an que : Icy 1592Pi (2) Saturne : saturne 1588-89 (3) eaue 1557U 1557B 1588Rf 1588Me 1589PV : eau &italic(){T.A.Eds.} (4) sera : estant 1592Pi (5) Sol : sol 1588Rf 1589Rg (6) le : vn 1592Pi (7) & puissant : puissant 1610 1716 (8) & : && 1716 (9) meurtrira innocens : meurtrira innocent 1588Rf 1589Rg 1611B 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1660 1665 1667 1668, meurtrir ainnocent 1589Me, meurtrira l'innocent 1592Pi *日本語訳 その年に土星が水の宮にて 太陽と合するであろう。強大な王が、 ランスとエクスで受け入れられ、油を塗られる。 征服した後で、彼は無垢な者たちを傷つけるだろう。 **訳について  1行目 eau(水)を「水の宮」(巨蟹宮、天蠍宮、双魚宮)と訳したが、後述するように、「宝瓶宮」とする読み方もある。  山根訳はほとんど問題無い。  大乗訳2行目「太陽神と王は強い力をもち」((大乗 [1975] p.144))は誤訳。Avec Sol は前の行にかからせるべき。  同3行目「レイヌとアイクスを受けとり 頭に油を注ぐだろう」も誤訳。「レイヌ」「アイクス」という固有名詞の読みの不適切さは言うまでもないが、ロバーツの英訳 Shall be received and anointed at Rheims and Aix((roberts [1949] p.139))と見比べると、受動態を無視していることが明らかである。 同4行目「征服ののち彼は無罪な人に殺害されるだろう」では、逆に能動態を受動態に勝手に変えてしまった結果、動作主が逆転してしまっている。 *信奉者側の見解  ノストラダムスの詩では「エクス」はしばしば[[エクス=アン=プロヴァンス]](Aix-en-Provence)を指すが、ここではエクス=ラ=シャペル(Aix-la-Chapelle, [[アーヘン]]のフランス語名)を指しているとされる。ランスはフランス王の即位式が行われていた都市であり、アーヘンは神聖ローマ皇帝の即位式の行われていた都市である。  そこで、この詩はフランスとドイツを支配する強大な君主の登場を予言したものと解釈される((Fontbrune [1980/1982], Hutin [2002]))。 *同時代的な視点  [[エドガー・レオニ]]は、信奉者側と同じくランスとアーヘンで即位する人物の予言と解釈した。ただし、彼の場合は、同時代的にフランス王[[アンリ2世]]が神聖ローマ皇帝にもなることを期待したものだろうと見ていた((Leoni [1982]))。アンリ2世の父[[フランソワ1世]]は、神聖ローマ皇帝選挙に出馬したこともあったが、アンリ2世自身はそうすることなく歿した。  [[ピエール・ブランダムール]]も似たような読みだが、彼の場合は、太陽と土星が宝瓶宮で合になる時期のうち、1611年を想定していた可能性を挙げている((Brind’Amour [1993]p.260))。  それらとは全く異なる読みを提示したのが、[[ロジェ・プレヴォ]]である。彼は「エクス」はあくまでも「エクス=アン=プロヴァンス」として、ここで示されているのはフランス王国とプロヴァンス伯領(首都エクス=アン=プロヴァンス)の併合という過去のモデルを下敷きにしたものと解釈した。  ノストラダムスの時代のプロヴァンスは、名目上はプロヴァンス伯領という「外国」だったが、プロヴァンス伯の称号はフランス王が継承していたので、実質的にはフランス王国領となっていた。これは、フランス王シャルル8世の時代からのことであるが、彼は1494年から1495年にかけてイタリア戦争の口火を切った王でもあり、「強大な王」と呼ばれる資格は十分にある。  4行目は1495年にシャルル8世の手に委ねられていたトルコの王子ジジム(Zizim)が毒殺されたことを指しているとしている。プレヴォが採用した原文では「無垢な者」が単数になっているが、本来の原文は上に示したように複数である。この解釈を支持するピーター・ラメジャラーは原文を単数形に校訂している。  星位についても、1495年3月には水の宮のひとつである双魚宮で土星と太陽が合になっており、あてはまっている((Prévost [1999] pp.113-114 ; Lemesurier [2003b]))。 ---- #comment
*原文 L'an que&sup(){1} Saturne&sup(){2} en eaue&sup(){3} sera&sup(){4} conioinct, Auecques [[Sol]]&sup(){5}, le&sup(){6} Roy fort & puissant&sup(){7}: A Reims &&sup(){8} Aix sera receu & oingt, Apres conquestes meurtrira innocens&sup(){9}. **異文 (1) L'an que : Icy 1592Pi (2) Saturne : saturne 1588-89 (3) eaue 1557U 1557B 1588Rf 1588Me 1589PV : eau &italic(){T.A.Eds.} (4) sera : estant 1592Pi (5) Sol : sol 1588Rf 1589Rg (6) le : vn 1592Pi (7) & puissant : puissant 1610 1716 (8) & : && 1716 (9) meurtrira innocens : meurtrira innocent 1588Rf 1589Rg 1611B 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1660 1665 1667 1668, meurtrir ainnocent 1589Me, meurtrira l'innocent 1592Pi *日本語訳 その年に土星が水の宮にて 太陽と合するであろう。強大な王が、 ランスとエクスで受け入れられ、油を塗られる。 征服した後で、彼は無垢な者たちを傷つけるだろう。 **訳について  1行目 eau(水)を「水の宮」(巨蟹宮、天蠍宮、双魚宮)と訳したが、後述するように、「宝瓶宮」とする読み方もある。  山根訳はほとんど問題無い。  大乗訳2行目「太陽神と王は強い力をもち」((大乗 [1975] p.144))は誤訳。Avec Sol は前の行にかからせるべき。  同3行目「レイヌとアイクスを受けとり 頭に油を注ぐだろう」も誤訳。「レイヌ」「アイクス」という固有名詞の読みの不適切さは言うまでもないが、ロバーツの英訳 Shall be received and anointed at Rheims and Aix((roberts [1949] p.139))と見比べると、受動態を無視していることが明らかである。 同4行目「征服ののち彼は無罪な人に殺害されるだろう」では、逆に能動態を受動態に勝手に変えてしまった結果、動作主が逆転してしまっている。 *信奉者側の見解  ノストラダムスの詩では「エクス」はしばしば[[エクス=アン=プロヴァンス]](Aix-en-Provence)を指すが、ここではエクス=ラ=シャペル(Aix-la-Chapelle, [[アーヘン]]のフランス語名)を指しているとされる。ランスはフランス王の即位式が行われていた都市であり、アーヘンは神聖ローマ皇帝の即位式の行われていた都市である。  そこで、この詩はフランスとドイツを支配する強大な君主の登場を予言したものと解釈される((Fontbrune [1980/1982], Hutin [2002]))。 *同時代的な視点  [[エドガー・レオニ]]は、信奉者側と同じくランスとアーヘンで即位する人物の予言と解釈した。ただし、彼の場合は、同時代的にフランス王[[アンリ2世]]が神聖ローマ皇帝にもなることを期待したものだろうと見ていた((Leoni [1982]))。アンリ2世の父[[フランソワ1世]]は、神聖ローマ皇帝選挙に出馬したこともあったが、アンリ2世自身はそうすることなく歿した。  [[ピエール・ブランダムール]]も似たような読みだが、彼の場合は、太陽と土星が宝瓶宮で合になる時期のうち、1611年を想定していた可能性を挙げている((Brind’Amour [1993]p.260))。  それらとは全く異なる読みを提示したのが、[[ロジェ・プレヴォ]]である。彼は「エクス」はあくまでも「エクス=アン=プロヴァンス」として、ここで示されているのはフランス王国とプロヴァンス伯領(首都エクス=アン=プロヴァンス)の併合という過去のモデルを下敷きにしたものと解釈した。  ノストラダムスの時代のプロヴァンスは、名目上はプロヴァンス伯領という「外国」だったが、プロヴァンス伯の称号はフランス王が継承していたので、実質的にはフランス王国領となっていた。これは、フランス王シャルル8世の時代からのことであるが、彼は1494年から1495年にかけてイタリア戦争の口火を切った王でもあり、「強大な王」と呼ばれる資格は十分にある。  4行目は1495年にシャルル8世の手に委ねられていたトルコの王子ジジム(Zizim)が毒殺されたことを指しているとしている。プレヴォが採用した原文では「無垢な者」が単数になっているが、本来の原文は上に示したように複数である。この解釈を支持するピーター・ラメジャラーは原文を単数形に校訂している。  星位についても、1495年3月には水の宮のひとつである双魚宮で土星と太陽が合になっており、あてはまっている((Prévost [1999] pp.113-114 ; Lemesurier [2003b]))。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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