Selin

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 &bold(){Selin} は現代フランス語式に読めば「スラン」。綴り字記号を補えば「セラン」(sélin)で、フランス語の一般名詞としては「はまぜり(浜芹)」の意味。  しかし、ノストラダムスの用語としては、月の女神セレネ(Sélènê)の派生語、つまりはギリシャ語に由来する「月」の関連語とされることが多い。名詞的に捉える場合([[エドガー・レオニ]]など)と形容詞的に捉える場合([[ベルナール・シュヴィニャール]])があり、後者の場合、女性形[[Seline]]に対応する男性形とされる。  フランス王[[アンリ2世]]はディアーヌ・ド・ポワチエを溺愛し、彼女の名前ディアーヌ(月の女神)に因んだものか、自分の紋章にも三日月の意匠を取りいれていた。このことから、エドガー・レオニ、[[ピエール・ブランダムール]]、[[ロジェ・プレヴォ]]らは、特に「偉大なスラン」(le grand Selin)や「シラン・スラン」([[Chyren]] Selin)の文脈では、アンリ2世を指す用語と理解している((Leoni [1982], Brind’Amour [1996] p.298, Prévost [1999] pp.70-71))。  他方で、プレヴォは当時「三日月」はイスラームの象徴としても用いられていたことを踏まえ、文脈によってはイスラーム勢力を指しているとしている((Prévost [1999] pp.71-72))。[[ピーター・ラメジャラー]]も、一部の詩でアンリ2世を指しているとしている一方で、多くの場合、イスラーム勢力を指すものとして解釈している((Lemesurier [2003b]))。なかには、[[ジャン=ポール・クレベール]]のように、ほとんどの登場箇所でイスラーム勢力と関連付けている者もいる。こうした見解の場合、[[マリニー・ローズ]]のように、オスマントルコの君主セリム(Selim ; 1世・在位1512年-1520年)と結び付ける者もいる。  このほか、[[百詩篇第6巻58番]]の「太陽の光がスランによって失われる」のように、単なる天体の「月」の意味に用いられているらしい場合もある。実際、この詩句については、ブランダムール、プレヴォ、ラメジャラー、クレベールらが日蝕と解釈している ((Brind’Amour [1993] p.280, Prévost [1999] pp.123-124, Lemesurier [2003b], Clébert [2003]))。ただし、レオニや[[リチャード・スモーレー]]は、これも月の紋章、アンリ2世を指すと理解している((Leoni [1982], Smoley [2006]))。  関連して、港との複合語 Port Selin(スランの港)として登場していることが3度ある。そちらは、ボルドー、ラ・ロッシェル、ジェノヴァ、コンスタンティノープルなどと理解されるが、詳しくは「[[スランの港]]」の記事を参照のこと。  なお、ブランダムールは暦書に何度も登場する [[Solin]]も、この Selin と同じものとして、アンリ2世と理解していた。ただし、これについてシュヴィニャールはむしろ「太陽」に近い意味ではないかとしている。 *登場箇所  参考のため、Seline も含めた。用例を紹介しているが、原文は1568Bで統一している。また、校訂された結果 selin と見なされているものも含む。 -[[百詩篇第1巻94番]](Au port Selin) -[[百詩篇第2巻1番]](Port Selyn) -[[百詩篇第2巻79番]](par Seline baniere) -[[百詩篇第4巻23番]](Port Selyn, Hercle) -[[百詩篇第4巻77番]](SELIN monarch) -[[百詩篇第5巻35番]](la grand mer Seline) -[[百詩篇第6巻27番]](du grand Chyren Selin) -[[百詩篇第6巻42番]](Du grand Selin) -[[百詩篇第6巻58番]](par Selin) -[[百詩篇第6巻78番]](du grand Selin) -[[百詩篇第8巻31番]](par plus ioyue Celin) -[[百詩篇第8巻54番]](par grand Chyren selin) -[[百詩篇第10巻53番]](Le grand Selin) -[[百詩篇第10巻58番]](le felin monarch) ---- #comment
 &bold(){Selin} は現代フランス語式に読めば「スラン」。綴り字記号を補えば「セラン」(sélin)で、フランス語の一般名詞としては「はまぜり(浜芹)」の意味。  しかし、ノストラダムスの用語としては、月の女神セレネ(Sélènê)の派生語、つまりはギリシャ語に由来する「月」の関連語とされることが多い。名詞的に捉える場合([[エドガー・レオニ]]など)と形容詞的に捉える場合([[ベルナール・シュヴィニャール]])があり、後者の場合、女性形[[Seline]]に対応する男性形とされる。  フランス王[[アンリ2世]]はディアーヌ・ド・ポワチエを溺愛し、彼女の名前ディアーヌ(月の女神)に因んだものか、自分の紋章にも三日月の意匠を取りいれていた。このことから、エドガー・レオニ、[[ピエール・ブランダムール]]、[[ロジェ・プレヴォ]]らは、特に「偉大なスラン」(le grand Selin)や「シラン・スラン」([[Chyren]] Selin)の文脈では、アンリ2世を指す用語と理解している((Leoni [1982], Brind’Amour [1996] p.298, Prévost [1999] pp.70-71))。  他方で、プレヴォは当時「三日月」はイスラームの象徴としても用いられていたことを踏まえ、文脈によってはイスラーム勢力を指しているとしている((Prévost [1999] pp.71-72))。[[ピーター・ラメジャラー]]も、一部の詩でアンリ2世を指しているとしている一方で、多くの場合、イスラーム勢力を指すものとして解釈している((Lemesurier [2003b]))。なかには、[[ジャン=ポール・クレベール]]のように、ほとんどの登場箇所でイスラーム勢力と関連付けている者もいる。こうした見解の場合、[[マリニー・ローズ]]のように、オスマントルコの君主セリム(Selim ; 1世・在位1512年-1520年)と結び付ける者もいる。  このほか、[[百詩篇第6巻58番]]の「太陽の光がスランによって失われる」のように、単なる天体の「月」の意味に用いられているらしい場合もある。実際、この詩句については、ブランダムール、プレヴォ、ラメジャラー、クレベールらが日蝕と解釈している ((Brind’Amour [1993] p.280, Prévost [1999] pp.123-124, Lemesurier [2003b], Clébert [2003]))。ただし、レオニや[[リチャード・スモーレー]]は、これも月の紋章、アンリ2世を指すと理解している((Leoni [1982], Smoley [2006]))。  関連して、港との複合語 Port Selin(スランの港)として登場していることが3度ある。そちらは、ボルドー、ラ・ロッシェル、ジェノヴァ、コンスタンティノープルなどと理解されるが、詳しくは「[[スランの港]]」の記事を参照のこと。  なお、ブランダムールは暦書に何度も登場する [[Solin]]も、この Selin と同じものとして、アンリ2世と理解していた。ただし、これについてシュヴィニャールはむしろ「太陽」に近い意味ではないかとしている。 *登場箇所  参考のため、Seline も含めた。用例を紹介しているが、原文は1568Bで統一している。また、校訂された結果 selin と見なされているものも含む。 -[[百詩篇第1巻94番]](Au port Selin) -[[百詩篇第2巻1番]](Port Selyn) -[[百詩篇第2巻79番]](par Seline baniere) -[[百詩篇第4巻23番]](Port Selyn, Hercle) -[[百詩篇第4巻77番]](SELIN monarch) -[[百詩篇第5巻35番]](la grand mer Seline) -[[百詩篇第6巻27番]](du grand Chyren Selin) -[[百詩篇第6巻42番]](Du grand Selin) -[[百詩篇第6巻58番]](par Selin) -[[百詩篇第6巻78番]](du grand Selin) -[[百詩篇第8巻31番]](par plus ioyue Celin) -[[百詩篇第8巻54番]](par grand Chyren selin) -[[百詩篇第10巻53番]](Le grand Selin) -[[百詩篇第10巻58番]](le felin monarch) ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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