詩百篇第9巻44番

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[[詩百篇第9巻]]>44番* *原文 [[Migres>migrer]]&sup(){1} migre&sup(){2} de Genesue&sup(){3} [[trestous]]&sup(){4}, Saturne d'or en fer&sup(){5} se changera, Le contre&sup(){6} [[RAYPOZ]]&sup(){7} exterminera tous&sup(){8}, Auant l'a [[ruent>ruer]]&sup(){9} le ciel&sup(){10} signes&sup(){11} fera. **異文 (1) Migres : Migrés 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1628dR 1649Ca 1650Mo 1650Ri 1667Wi 1668 1716PR 1772Ri 1791Ga 1792Du 1793Bo 1800Sa, Migrez 1644Hu 1653AB 1665Ba 1672Ga 1720To (2) migre : migres 1568C, migrés 1591BR 1597Br 1603Mo 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1628dR 1649Ca 1649Xa 1650Mo 1650Ri 1650Le 1667Wi 1668 1716PR 1772Ri 1791Ga 1792Du 1793Bo 1800Sa, migrez 1644Hu 1653AB 1665Ba 1672Ga 1720To (3) Genesue : Genefue 1590Ro 1591BR 1597Br 1603Mo 1605sn 1606PR 1628dR 1649Ca 1649Xa 1650Mo 1792Du, Geneue 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1668A 1672Ga 1720To, Genéve 1667Wi 1668P, Genefve 1611 1716PR (4) trestous : tretous 1672Ga 1720To (5) fer : Fer 1672Ga (6) contre : contte 1650Mo (7) RAYPOZ : Raypoz 1590Ro 1672Ga, FAYPOZ 1606PR 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To, RAIPOZ 1800Sa (8) exterminera tous : exterminera a tous 1792Du (9) l'a ruent 1568 1772Ri 1791Ga 1793Bo 1800Sa : l'[[aduent>advent]] 1590Ro 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1650Le 1650Ri 1650Mo 1653AB 1981EB 1665Ba 1667Wi 1668 1672Ga, l'Aduent 1627Di 1627Ma 1644Hu 1716PR, l'aruent 1605sn 1628dR 1649Ca 1649Xa 1792Du, l'advant 1720To 1840 (10) ciel : Ciel 1605sn 1628dR 1649Xa 1667Wi 1668 1672Ga 1716PR 1792Du 1793Bo 1800Sa (11) signes : sigges 1611, signe 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To (注記1)1568年の4行目 l'a ruent は1568Xのみ r が不鮮明。rが反転した l'a ɹuent のようにも見える。 (注記2)1791Ga は1791年ガリガン版、1792Du は1792年ヴァン・デュレン版、1793Bo は1793年ボネ兄弟版、1800Sa は1800年ノストラダムス出版社版。以下で触れる五島の主張の検討のために、あえて加えた。 **校訂  1行目の Migres migre は活用語尾が混在していて不自然である。後の時代の版に出てくるように、Migrez migrez で統一してしまうのが自然といえる。  4行目の l'a ruent はフランス語として意味をなさない。ruent は [[ruer]](投げる)の活用形と見ることも出来るが、直前に a を取るのは構文としてあり得ないためである。l'aruent としても、そのような単語は古語辞典の類にも見当たらない。  後の版に登場する l'[[advent]](l'avent)は「(一般的な)到来」または「待降節」などの意味で、すんなりと理解することができる。正当性に疑問もないではないが、この異文は[[ピーター・ラメジャラー]]、[[ジャン=ポール・クレベール]]も支持している。 *日本語訳 離れよ、一人残らず[[ジュネーヴ]]から離れよ。 黄金の[[サトゥルヌス]]は鉄に変わるだろう。 レポの反対が全てを滅ぼすだろう。 到来の前に、天が徴を示すだろう。 **訳について  この詩については、大乗訳、山根訳と並び、[[五島勉]][[『ノストラダムスの大予言』シリーズ]]の訳も大きな影響を及ぼしてきた。そこで、それも視野に入れつつ、訳語を検討してゆきたい。  まず、五島訳1行目「逃げよ、逃げよ、[[すべてのジュネーブ]]から逃げだせ」((五島 [1973] p.174))は、多くの追随者を生んだ訳だが、全く支持できない。この場合の [[trestous]] は「皆」(tous)の強調表現であって、ジュネーヴにかかっているわけではない。  また、五島は逃げ出せと「三回繰り返して警告している」((五島 [1973] p.176))というが、原文で「逃げ出せ」と訳せるのは2箇所の migrez だけである。「三回」とするのは[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳 Leave, leave, go forth out of Geneva, all((Roberts [1949] p.292. 以下この詩の英訳は同じページから))に影響されたものだろう。ちなみに&color(red){そのロバーツ訳でも「全てのジュネーブ」となっていないことは見ての通りであり、海外の英訳や現代フランス語訳にはそういうものが見当たらない。}([[すべてのジュネーブ]]参照)  大乗訳は3行目「可視光線の逆のものはすべて消え」((大乗 [1975] p.269))が問題である。五島訳「巨大な光の反対のものがすべてを絶滅する」((五島 [1973] p.174))も似たような問題を抱えているが、これらはロバーツの英訳 The contrary of the positive ray shall exterminate all に引きずられたものである。しかし、&color(red){RAYPOZ を Ray. pos. と分けて読むのは、信奉者、非信奉者を問わず全く支持されていない。五島訳にある「巨大な光」の「巨大な」に至っては、対応する単語が原文にないため、根拠がまったく分からない}。  山根訳は4行目前半を「突撃の前」と訳しているのが少々訳しすぎの感もありはするが、おおむね許容範囲内である。「突撃」という訳は[[エリカ・チータム]]の英訳を踏まえたものだが、チータムがそのように訳したのは Avant la ruée とでも読み替えたものか(([[http://asakura.asablo.jp/blog/2009/10/20/4644437>>http://asakura.asablo.jp/blog/2009/10/20/4644437]]))。  五島はこの場合の l'advent は「再臨」の意味だとするが、誰一人そのように訳していない。五島は欧米の研究者たちが真実を知っていて無視している結果だと主張するが、そうではなく、&color(red){「再臨」という訳が語学的に支持しづらい}だけのことである([[advent]]を参照のこと)。  なお、ノストラダムスは当時の暦書の中で advent を「待降節」の意味で使っているので、[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]や[[ジャン=ポール・クレベール]]のように、「待降節の前に天は徴を示すだろう」と訳すことも可能である。 *信奉者側の見解  マックス・ド・フォンブリュヌは、1939年時点での近未来に起こるであろう戦争の一場面と解釈した((Fontbrune [1939] p.144))。後の改訂版でも未来の予言とする位置づけに変化はない((Fontbrune [1975] p.185))。  近未来の戦争とするプロットは息子の[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]にも引き継がれたが、彼の場合1980年代にイランがスイスに侵攻する予言ということになっていた((Fontbrune [1980/1982]))。  [[ロルフ・ボズウェル]]や[[アンドレ・ラモン]]は、第一次世界大戦後のジュネーヴに国際連盟の本部が置かれていたことを踏まえ、ヒトラーによってその体制が破綻したことの予言と解釈した((Boswell [1943] pp.183-185, Lamont [1943] p.153))。  [[M.-P.エドゥアール]]は解説らしい解説をつけていないが、第二次世界大戦期の文脈で扱っている((Edouard [1947] p.40))。  [[ヘンリー・C・ロバーツ]]は原子力時代到来の予言とし、原子力が文明を崩壊させうることの警鐘と解釈した((Roberts [1949]))。この解釈は娘夫妻や孫による改訂版でも変更はなかった。  また、この解釈は、日本でも[[黒沼健]]によって比較的早い段階で紹介されていた((黒沼『世界の予言』1970年、p.156))。  [[セルジュ・ユタン]]は「黄金が鉄に」をとりあげ、第二次世界大戦期に貨幣経済が混乱したことの予言とした。[[ボードワン・ボンセルジャン]]による改訂版では、それに加えて、第三次世界大戦でジュネーヴが崩壊するという解釈が載せられている((Hutin [1978], Hutin [2002/2003]))。  [[エリカ・チータム]]は後出の「同時代的な視点」の節で扱うカルヴァン派関連の解釈を、疑問符つきながら採用している((Cheetham [1990]))。  以上のように、&color(red){海外ではこの詩が全人類の存亡にかかわるというような解釈はなされてこなかった}。ロバーツの解釈は一応それに通じると見なすこともできるが、具体的な期日を示したものでもなく、決定的な破局を断定したものでもなかった。  それに対し、日本では[[五島勉]]によってかなり極端な位置づけが与えられることになった。  五島は3行目に「全てを滅ぼす」とあることを強調して、それが全人類に関わる破滅的な出来事であると解釈し、[[恐怖の大王]]が登場する[[詩百篇第10巻72番]]とともに、1999年人類滅亡の鍵を握る詩だと繰り返し主張したのである。  また、その際には1行目を「[[すべてのジュネーヴ>すべてのジュネーブ]]」と曲解することによって、ジュネーヴに限定されていた予言を、国際的な都市全てを対象とするものへと転換させた((五島勉『ノストラダムスの大予言』祥伝社、1973年、pp.174-177 ; 同『ノストラダムスの大予言・地獄編』祥伝社、1994年、pp.62-64 etc.))。  『[[ノストラダムスの大予言・最終解答編]]』では、4行目の「ラドヴァン」(l'advent)が1568年版以降全ての版に見られる原文と説明した上で、「イエスの再臨」と解釈した((同書 pp.170-179))。  そして、ジュネーヴを1998年に核保有の五大国が会議を開いた場所として、それに象徴される核兵器の時代から抜け出すように警告した詩だと解釈した((同書 pp.209-217))。  しかし、21世紀に刊行された五島の著書では、この詩は事実上無視されることとなった。  21世紀になると、他の解釈者らから、2007年に欧州原子核機構(CERN)がスイスとフランスの国境付近に建設した大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の実験で、光の反対のものであるブラックホールが生成され、悲劇に結びつく可能性があることを警告しているとする解釈が見られるようになった((『戦慄!! 世界の大予言』学研、2008年、p.69 ;[[安土龍]]『[[1999年7の月 あの予言は的中していた]]』p.12))。 **懐疑的な視点  五島が主張していた 「l'advent が1568年版以降全ての版に見られる」とする主張は、上の異文欄からも明らかな通り、事実に反している。  現存最古の原文では l'a ruentだったし、18世紀にはそれを踏襲する版がいくつもあった。  また、17世紀にはそれを誤写(?)して l'aruent とする版がいくつもあった。  l'advent が可能性の高い原文なのは事実であり、当「大事典」でも、上ではそのように訳しているが、原文の系統についてウソを主張したり、[[advent]]の本来の意味から拡大解釈した意味を唯一の意味であるかのように主張する手法は、問題が多いと言わざるをえない。  [[ジュネーヴ]]という一都市についてを対象とした予言を、「すべてのジュネーヴ」などと読み替えて全世界の破局の予言であるかのようにすり替える手法ともども、当「大事典」としては、まったく支持できない。  ブラックホール生成の解釈については、「光の反対のもの」という従来の不適切な訳に立脚しており、妥当性は疑問である。なお、ブラックホール生成が地球滅亡につながるという主張に対する懐疑的な見解としては、ナショナルジオグラフィックの記事「[[ブラックホール生成? LHCに懸念>>http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=5410713&expand]]」(外部リンク)も参照のこと。 *同時代的な視点  歴史的な視点からは、カルヴァン派への警告とする解釈も提示されている。当時のジュネーヴはカルヴァン派の牙城であったからである。信奉者の中でも[[テオフィル・ド・ガランシエール]]などは、カトリックのノストラダムスが、カルヴァン入市によってジュネーヴの黄金時代が鉄の時代に失墜すると警告したものであろうとする解釈を展開していた((Garencieres [1672]))。  ガランシエールは Raypoz にコメントしていなかったが、現在では「RAYPOZの反対」は綴りをほぼ反対にした人名ゾピュラ(Zopyra)と見なされ、これを題銘(devise / motto)に採り入れていたフェリペ2世と理解される((cf. Leoni[1982] pp.725-726, Lemesurier[2003] pp.317-318. レオニらの3行目の訳は上記とやや異なるが、意味するところは同じである。なお、ラメジャラーはゾピュラを銘句に用いていたのはカール5世としている。))。  2行目はヘシオドスの五時代の説話(神々の「黄金の時代」から現世の「鉄の時代」へと時代が衰えてきた、とするモチーフ)に基づいたものであろう。 &color(green){オリュンポスの館に住まう神々は、} &color(green){最初に人間の黄金の種族をお作りなされた。} &color(green){これはクロノスがまだ天上に君臨しておられた} &color(green){クロノスの時代の人間たちで、} &color(green){心に悩みもなく、労苦も悲歎も知らず、神々と異なることなく暮らしておった。} (略) &color(green){かくなればわしはもう、第五の種族とともに生きたくはない、} &color(green){むしろその前に死ぬか、その後に生れたい。} &color(green){今の世はすなわち鉄の種族の時代なのじゃ。} &color(green){昼も夜も労役と苦悩に苛まれ、その熄む時はないであろうし、} &color(green){神々は過酷な心労の種を与えられるであろう、}((松平千秋 訳『ヘーシオドス 仕事と日』岩波文庫、1986年、109-113行および174-178行)) #amazon(4003210727) 【画像】ヘーシオドス 『仕事と日』  ウェルギリウスなどでも「サトゥルヌスの治世」は黄金時代の喩えとされる。 #amazon(4876981515) 【画像】ウェルギリウス 『牧歌/農耕詩』  要するに、カルヴァン派の理想はすぐに色褪せて世俗的な苦悩の中に埋没するといった意味であろう。  まとめると、この詩はジュネーヴのカルヴァン派が衰退し、フェリペ2世によって駆逐される上に、それは天も前兆を示してくれる(=神意にかなう)ものだという描写と考えられる。  ただし、そのような事件は実現しなかった。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - サン・バルテルミ虐殺事件とアンリ四世の暗殺、プロテスタント(カルヴァン派)への警告予言 -- とある信奉者 (2010-03-21 19:54:18) - ジュネーブはレマン湖の南西に位置にあって、ちょうど湾奥に位置している。入り江、湾奥から離れろという意味。 -- fk (2011-03-19 00:56:11) - 「黄金のサチュルヌ」は別名「七殺」とされる「艮の金神」。艮(うしとら)は北東の方位。 -- fk (2011-03-19 00:58:02) - サトゥルヌスはローマ神話における農業神なので、東北穀倉地帯への津波・原発からのダメージ、「みずほ」銀行のトラブルなども含意しているのかも知れない。 -- fk (2011-03-19 00:59:30) - RAYPOZ は、Ray(光線)と接尾語 -Pose(Exposed to Radiation. などExposeのそれ)で「曝す光」=放射能=福島第一原子力発電所。 -- fk (2011-03-19 01:02:33) - Raypoz = Positive Rayかも知れない。その反対は、Negative/Darkness. Le Contre RAYPOZは冥府の王Pluto=プルトニウムの謂いか。 -- fk (2011-03-30 17:49:09) - ジュネーブはCERNやろ -- あばば (2019-01-19 00:47:37) - ジュネーヴはCERNを意味していて、このLHCやFCCの実験の副産物によって生まれた新たな世界(パラレルワールド) へ移住せよ -- mmm (2019-01-19 00:55:41) - 黄金のサトゥルヌスは鉄に変わるだろう…は、農耕時代から我々を支配してきたお金や権力がその価値を落とし、常識とされてきたものが、全てデタラメだと気づくときが来た -- 名無しさん (2019-01-19 01:03:12) - レポの反対(RAYPOZは Ray Positive=陽光。太陽。これの反対は人工による光=原子核エネルギー)つまりこのままの原子力による世界支配を続ければ、全てを滅ぼすことになる -- mmm (2019-01-19 01:12:29) - 到来の前に、天が徴を示すだろう。…まさに今、世界中で起きてるマンデラエフェクト(=天の兆候)。これからもっともっと不思議なこと増えるからよろしくちゃん。 -- mmm (2019-01-19 01:21:39) - 巨大な光(太陽・フレアー・コロナ) 反対のもの → (小さな太陽・フレアー・コロナ) → コロナウイルス 太陽に似ていると感じました。 -- 名無しさん (2020-03-01 15:00:32)
[[詩百篇第9巻]]>44番* *原文 [[Migres>migrer]]&sup(){1} migre&sup(){2} de Genesue&sup(){3} [[trestous]]&sup(){4}, Saturne d'or en fer&sup(){5} se changera, Le contre&sup(){6} [[RAYPOZ]]&sup(){7} exterminera tous&sup(){8}, Auant l'a [[ruent>ruer]]&sup(){9} le ciel&sup(){10} signes&sup(){11} fera. **異文 (1) Migres : Migrés 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1628dR 1649Ca 1650Mo 1650Ri 1667Wi 1668 1716PR 1772Ri 1791Ga 1792Du 1793Bo 1800Sa, Migrez 1644Hu 1653AB 1665Ba 1672Ga 1720To (2) migre : migres 1568C, migrés 1591BR 1597Br 1603Mo 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1628dR 1649Ca 1649Xa 1650Mo 1650Ri 1650Le 1667Wi 1668 1716PR 1772Ri 1791Ga 1792Du 1793Bo 1800Sa, migrez 1644Hu 1653AB 1665Ba 1672Ga 1720To (3) Genesue : Genefue 1590Ro 1591BR 1597Br 1603Mo 1605sn 1606PR 1628dR 1649Ca 1649Xa 1650Mo 1792Du, Geneue 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1668A 1672Ga 1720To, Genéve 1667Wi 1668P, Genefve 1611 1716PR (4) trestous : tretous 1672Ga 1720To (5) fer : Fer 1672Ga (6) contre : contte 1650Mo (7) RAYPOZ : Raypoz 1590Ro 1672Ga, FAYPOZ 1606PR 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To, RAIPOZ 1800Sa (8) exterminera tous : exterminera a tous 1792Du (9) l'a ruent 1568 1772Ri 1791Ga 1793Bo 1800Sa : l'[[aduent>advent]] 1590Ro 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1650Le 1650Ri 1650Mo 1653AB 1981EB 1665Ba 1667Wi 1668 1672Ga, l'Aduent 1627Di 1627Ma 1644Hu 1716PR, l'aruent 1605sn 1628dR 1649Ca 1649Xa 1792Du, l'advant 1720To 1840 (10) ciel : Ciel 1605sn 1628dR 1649Xa 1667Wi 1668 1672Ga 1716PR 1792Du 1793Bo 1800Sa (11) signes : sigges 1611, signe 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To (注記1)1568年の4行目 l'a ruent は1568Xのみ r が不鮮明。rが反転した l'a ɹuent のようにも見える。 (注記2)1791Ga は1791年ガリガン版、1792Du は1792年ヴァン・デュレン版、1793Bo は1793年ボネ兄弟版、1800Sa は1800年ノストラダムス出版社版。以下で触れる五島の主張の検討のために、あえて加えた。 **校訂  1行目の Migres migre は活用語尾が混在していて不自然である。後の時代の版に出てくるように、Migrez migrez で統一してしまうのが自然といえる。  4行目の l'a ruent はフランス語として意味をなさない。ruent は [[ruer]](投げる)の活用形と見ることも出来るが、直前に a を取るのは構文としてあり得ないためである。l'aruent としても、そのような単語は古語辞典の類にも見当たらない。  後の版に登場する l'[[advent]](l'avent)は「(一般的な)到来」または「待降節」などの意味で、すんなりと理解することができる。正当性に疑問もないではないが、この異文は[[ピーター・ラメジャラー]]、[[ジャン=ポール・クレベール]]も支持している。 *日本語訳 離れよ、一人残らず[[ジュネーヴ]]から離れよ。 黄金の[[サトゥルヌス]]は鉄に変わるだろう。 レポの反対が全てを滅ぼすだろう。 到来の前に、天が徴を示すだろう。 **訳について  この詩については、大乗訳、山根訳と並び、[[五島勉]][[『ノストラダムスの大予言』シリーズ]]の訳も大きな影響を及ぼしてきた。そこで、それも視野に入れつつ、訳語を検討してゆきたい。  まず、五島訳1行目「逃げよ、逃げよ、[[すべてのジュネーブ]]から逃げだせ」((五島 [1973] p.174))は、多くの追随者を生んだ訳だが、全く支持できない。この場合の [[trestous]] は「皆」(tous)の強調表現であって、ジュネーヴにかかっているわけではない。  また、五島は逃げ出せと「三回繰り返して警告している」((五島 [1973] p.176))というが、原文で「逃げ出せ」と訳せるのは2箇所の migrez だけである。「三回」とするのは[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳 Leave, leave, go forth out of Geneva, all((Roberts [1949] p.292. 以下この詩の英訳は同じページから))に影響されたものだろう。ちなみに&color(red){そのロバーツ訳でも「全てのジュネーブ」となっていないことは見ての通りであり、海外の英訳や現代フランス語訳にはそういうものが見当たらない。}([[すべてのジュネーブ]]参照)  大乗訳は3行目「可視光線の逆のものはすべて消え」((大乗 [1975] p.269))が問題である。五島訳「巨大な光の反対のものがすべてを絶滅する」((五島 [1973] p.174))も似たような問題を抱えているが、これらはロバーツの英訳 The contrary of the positive ray shall exterminate all に引きずられたものである。しかし、&color(red){RAYPOZ を Ray. pos. と分けて読むのは、信奉者、非信奉者を問わず全く支持されていない。五島訳にある「巨大な光」の「巨大な」に至っては、対応する単語が原文にないため、根拠がまったく分からない}。  山根訳は4行目前半を「突撃の前」と訳しているのが少々訳しすぎの感もありはするが、おおむね許容範囲内である。「突撃」という訳は[[エリカ・チータム]]の英訳を踏まえたものだが、チータムがそのように訳したのは Avant la ruée とでも読み替えたものか(([[http://asakura.asablo.jp/blog/2009/10/20/4644437>>http://asakura.asablo.jp/blog/2009/10/20/4644437]]))。  五島はこの場合の l'advent は「再臨」の意味だとするが、誰一人そのように訳していない。五島は欧米の研究者たちが真実を知っていて無視している結果だと主張するが、そうではなく、&color(red){「再臨」という訳が語学的に支持しづらい}だけのことである([[advent]]を参照のこと)。  なお、ノストラダムスは当時の暦書の中で advent を「待降節」の意味で使っているので、[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]や[[ジャン=ポール・クレベール]]のように、「待降節の前に天は徴を示すだろう」と訳すことも可能である。 *信奉者側の見解  マックス・ド・フォンブリュヌは、1939年時点での近未来に起こるであろう戦争の一場面と解釈した((Fontbrune [1939] p.144))。後の改訂版でも未来の予言とする位置づけに変化はない((Fontbrune [1975] p.185))。  近未来の戦争とするプロットは息子の[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]にも引き継がれたが、彼の場合1980年代にイランがスイスに侵攻する予言ということになっていた((Fontbrune [1980/1982]))。  [[ロルフ・ボズウェル]]や[[アンドレ・ラモン]]は、第一次世界大戦後のジュネーヴに国際連盟の本部が置かれていたことを踏まえ、ヒトラーによってその体制が破綻したことの予言と解釈した((Boswell [1943] pp.183-185, Lamont [1943] p.153))。  [[M.-P.エドゥアール]]は解説らしい解説をつけていないが、第二次世界大戦期の文脈で扱っている((Edouard [1947] p.40))。  [[ヘンリー・C・ロバーツ]]は原子力時代到来の予言とし、原子力が文明を崩壊させうることの警鐘と解釈した((Roberts [1949]))。この解釈は娘夫妻や孫による改訂版でも変更はなかった。  また、この解釈は、日本でも[[黒沼健]]によって比較的早い段階で紹介されていた((黒沼『世界の予言』1970年、p.156))。  [[セルジュ・ユタン]]は「黄金が鉄に」をとりあげ、第二次世界大戦期に貨幣経済が混乱したことの予言とした。[[ボードワン・ボンセルジャン]]による改訂版では、それに加えて、第三次世界大戦でジュネーヴが崩壊するという解釈が載せられている((Hutin [1978], Hutin [2002/2003]))。  [[エリカ・チータム]]は後出の「同時代的な視点」の節で扱うカルヴァン派関連の解釈を、疑問符つきながら採用している((Cheetham [1990]))。  以上のように、&color(red){海外ではこの詩が全人類の存亡にかかわるというような解釈はなされてこなかった}。ロバーツの解釈は一応それに通じると見なすこともできるが、具体的な期日を示したものでもなく、決定的な破局を断定したものでもなかった。  それに対し、日本では[[五島勉]]によってかなり極端な位置づけが与えられることになった。  五島は3行目に「全てを滅ぼす」とあることを強調して、それが全人類に関わる破滅的な出来事であると解釈し、[[恐怖の大王]]が登場する[[詩百篇第10巻72番]]とともに、1999年人類滅亡の鍵を握る詩だと繰り返し主張したのである。  また、その際には1行目を「[[すべてのジュネーヴ>すべてのジュネーブ]]」と曲解することによって、ジュネーヴに限定されていた予言を、国際的な都市全てを対象とするものへと転換させた((五島勉『ノストラダムスの大予言』祥伝社、1973年、pp.174-177 ; 同『ノストラダムスの大予言・地獄編』祥伝社、1994年、pp.62-64 etc.))。  『[[ノストラダムスの大予言・最終解答編]]』では、4行目の「ラドヴァン」(l'advent)が1568年版以降全ての版に見られる原文と説明した上で、「イエスの再臨」と解釈した((同書 pp.170-179))。  そして、ジュネーヴを1998年に核保有の五大国が会議を開いた場所として、それに象徴される核兵器の時代から抜け出すように警告した詩だと解釈した((同書 pp.209-217))。  しかし、21世紀に刊行された五島の著書では、この詩は事実上無視されることとなった。  21世紀になると、他の解釈者らから、2007年に欧州原子核機構(CERN)がスイスとフランスの国境付近に建設した大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の実験で、光の反対のものであるブラックホールが生成され、悲劇に結びつく可能性があることを警告しているとする解釈が見られるようになった((『戦慄!! 世界の大予言』学研、2008年、p.69 ;[[安土龍]]『[[1999年7の月 あの予言は的中していた]]』p.12))。 **懐疑的な視点  五島が主張していた 「l'advent が1568年版以降全ての版に見られる」とする主張は、上の異文欄からも明らかな通り、事実に反している。  現存最古の原文では l'a ruentだったし、18世紀にはそれを踏襲する版がいくつもあった。  また、17世紀にはそれを誤写(?)して l'aruent とする版がいくつもあった。  l'advent が可能性の高い原文なのは事実であり、当「大事典」でも、上ではそのように訳しているが、原文の系統についてウソを主張したり、[[advent]]の本来の意味から拡大解釈した意味を唯一の意味であるかのように主張する手法は、問題が多いと言わざるをえない。  [[ジュネーヴ]]という一都市についてを対象とした予言を、「すべてのジュネーヴ」などと読み替えて全世界の破局の予言であるかのようにすり替える手法ともども、当「大事典」としては、まったく支持できない。  ブラックホール生成の解釈については、「光の反対のもの」という従来の不適切な訳に立脚しており、妥当性は疑問である。なお、ブラックホール生成が地球滅亡につながるという主張に対する懐疑的な見解としては、ナショナルジオグラフィックの記事「[[ブラックホール生成? LHCに懸念>>http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=5410713&expand]]」(外部リンク)も参照のこと。 *同時代的な視点  歴史的な視点からは、カルヴァン派への警告とする解釈も提示されている。当時のジュネーヴはカルヴァン派の牙城であったからである。信奉者の中でも[[テオフィル・ド・ガランシエール]]などは、カトリックのノストラダムスが、カルヴァン入市によってジュネーヴの黄金時代が鉄の時代に失墜すると警告したものであろうとする解釈を展開していた((Garencieres [1672]))。  ガランシエールは Raypoz にコメントしていなかったが、現在では「RAYPOZの反対」は綴りをほぼ反対にした人名ゾピュラ(Zopyra)と見なされ、これを題銘(devise / motto)に採り入れていたフェリペ2世と理解される((cf. Leoni[1982] pp.725-726, Lemesurier[2003] pp.317-318. レオニらの3行目の訳は上記とやや異なるが、意味するところは同じである。なお、ラメジャラーはゾピュラを銘句に用いていたのはカール5世としている。))。  2行目はヘーシオドスの五時代の説話、すなわち神々の「黄金の時代」から現世の「鉄の時代」へと時代が衰えてきた、とするモチーフに基づいたものであろう。 &color(green){オリュンポスの館に住まう神々は、} &color(green){最初に人間の黄金の種族をお作りなされた。} &color(green){これはクロノスがまだ天上に君臨しておられた} &color(green){クロノスの時代の人間たちで、} &color(green){心に悩みもなく、労苦も悲歎も知らず、神々と異なることなく暮らしておった。} (略) &color(green){かくなればわしはもう、第五の種族とともに生きたくはない、} &color(green){むしろその前に死ぬか、その後に生れたい。} &color(green){今の世はすなわち鉄の種族の時代なのじゃ。} &color(green){昼も夜も労役と苦悩に苛まれ、その熄む時はないであろうし、} &color(green){神々は過酷な心労の種を与えられるであろう、}((松平千秋 訳『ヘーシオドス 仕事と日』岩波文庫、1986年、109-113行および174-178行)) #amazon(4003210727) 【画像】ヘーシオドス 『仕事と日』  上の「クロノス」は、ローマ神話ではサトゥルヌスに対応する。  そして、ウェルギリウスなどでも「サトゥルヌスの治世」は黄金時代の喩えとされる。 #amazon(4876981515) 【画像】ウェルギリウス 『牧歌/農耕詩』  要するに、カルヴァン派の理想はすぐに色褪せて世俗的な苦悩の中に埋没するといった意味であろう。  まとめると、この詩はジュネーヴのカルヴァン派が衰退し、フェリペ2世によって駆逐される上に、それは天も前兆を示してくれる(=神意にかなう)ものだという描写と考えられる。  ただし、そのような事件は実現しなかった。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - サン・バルテルミ虐殺事件とアンリ四世の暗殺、プロテスタント(カルヴァン派)への警告予言 -- とある信奉者 (2010-03-21 19:54:18) - ジュネーブはレマン湖の南西に位置にあって、ちょうど湾奥に位置している。入り江、湾奥から離れろという意味。 -- fk (2011-03-19 00:56:11) - 「黄金のサチュルヌ」は別名「七殺」とされる「艮の金神」。艮(うしとら)は北東の方位。 -- fk (2011-03-19 00:58:02) - サトゥルヌスはローマ神話における農業神なので、東北穀倉地帯への津波・原発からのダメージ、「みずほ」銀行のトラブルなども含意しているのかも知れない。 -- fk (2011-03-19 00:59:30) - RAYPOZ は、Ray(光線)と接尾語 -Pose(Exposed to Radiation. などExposeのそれ)で「曝す光」=放射能=福島第一原子力発電所。 -- fk (2011-03-19 01:02:33) - Raypoz = Positive Rayかも知れない。その反対は、Negative/Darkness. Le Contre RAYPOZは冥府の王Pluto=プルトニウムの謂いか。 -- fk (2011-03-30 17:49:09) - ジュネーブはCERNやろ -- あばば (2019-01-19 00:47:37) - ジュネーヴはCERNを意味していて、このLHCやFCCの実験の副産物によって生まれた新たな世界(パラレルワールド) へ移住せよ -- mmm (2019-01-19 00:55:41) - 黄金のサトゥルヌスは鉄に変わるだろう…は、農耕時代から我々を支配してきたお金や権力がその価値を落とし、常識とされてきたものが、全てデタラメだと気づくときが来た -- 名無しさん (2019-01-19 01:03:12) - レポの反対(RAYPOZは Ray Positive=陽光。太陽。これの反対は人工による光=原子核エネルギー)つまりこのままの原子力による世界支配を続ければ、全てを滅ぼすことになる -- mmm (2019-01-19 01:12:29) - 到来の前に、天が徴を示すだろう。…まさに今、世界中で起きてるマンデラエフェクト(=天の兆候)。これからもっともっと不思議なこと増えるからよろしくちゃん。 -- mmm (2019-01-19 01:21:39) - 巨大な光(太陽・フレアー・コロナ) 反対のもの → (小さな太陽・フレアー・コロナ) → コロナウイルス 太陽に似ていると感じました。 -- 名無しさん (2020-03-01 15:00:32)

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