Eclaircissement des veritables Quatrains de Maistre Michel Nostradamus

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 『&bold(){ミシェル・ノストラダムス師の真の四行詩集の解明}』(Eclaircissement des veritables Quatrains de Maistre Michel Nostradamus)は、1656年に出版されたノストラダムス予言の解釈書。著者名も出版地名も記載されていない。 #image(http://www42.atwiki.jp/nostradamus/?cmd=upload&act=open&page=%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%80%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%82%96%E5%83%8F%E7%94%BB%20%28%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%A0%E3%80%811668%E5%B9%B4%29&file=1656portrait.PNG) 【画像】この解釈書の扉と思われるページ((画像の出典:金森誠也「大予言者ノストラダムスの秘密」(『ムー』第29号、1983年)p.37)) *正式名 -ECLAIRCISSEMENT des veritables Quatrains de Maistre MICHEL NOSTRADAMVS, Docteur & Professeur en Medecine, Conseiller & Medecin ordinaire des Roys Henry II. Francois II. & Charles IX. grand Astrologue de son temps, & specialement pour la connoissance des choses futures. M.DC.LVI. --医学博士・医学教授にして、国王アンリ2世、フランソワ2世、シャルル9世の常任侍医・顧問、さらにとりわけ未来の物事を知ることのかけての彼の時代の偉大な占星術師ミシェル・ノストラダムス師の真の四行詩集の解明。1656年。 *著者  アントワーヌ=アレクサンドル・バルビエ編著『匿名・偽名の作品事典』(1822年)では、この作品の著者は医師の[[エチエンヌ・ジョベール]]とされている((Antoine-Alexandre Barbier, &italic(){Dictionnaire des ouvrages anonymes et pseudonymes}, Paris, 1822, p.354))。  ノストラダムスの信奉者の間ではそれが通説化しており、[[エドガー・レオニ]]や[[ミシェル・ショマラ]]などの実証的な論者にもこの説を支持する者がいる。  他方で、『ビブリオテカ・マギカ』(フィレンツェ、1985年)では、著者は[[ジャン・ジフル・ド・レシャク]]とされており、[[ジャック・アルブロン]]のように、それを積極的に支持する者もいる。 *内容  前書きに続いて「ミシェル・ノストラダムスのための弁明」と題する伝記などが載せられている(pp.1-68)。そこでは、ノストラダムスを見聞きした人々の子孫などから直接聞いたとするエピソードなども語られており、有名な[[フロランヴィルの領主]]の「白豚と黒豚の話」も初めて登場した。  続いて「ノストラダムスの百詩篇集について。序文」(pp.69-112)という節が続き、残りのページが予言詩の解釈になっている(pp.113-458)。ただし、そこで主に扱われているのは1555年から1560年までというきわめて限定的な時代の解釈である。  残る時代についても意欲を持っていたらしく、他に17巻ものシリーズにする予定があると予告はしていたが、出版された形跡はなく、それらしい手稿も見つかっていない((Benazra [1990] pp.231-233))。 *異本  この文献には、冒頭に口絵のあるバージョンとないバージョンがある。どちらがオリジナルなのかについてだが、本文中に次のような言及がある。 「本書の口絵でノストラダムスの肖像の下に私が掲げたラテン語の二行詩については、その証拠とともに、本書全体で認識することとなるだろう。 『私は真理を語り、虚言を語らない。それは天からの賜りものゆえ、 語り手は神であって、私ことノストラダムスではないのだ。』 (Vera loquor, nac falsa loquor, sed munere coeli, Qui loquitur Deus est, non ego Nostradamus ) フランス語では 『私は偽りなしに真実を語るが、それは神のおかげである。 我が詩において語っているのは神であり、私は(語り手の)座を譲っている。』 ( Ie dis vray sans fausseté, mais à Dieu soit la grace, Il parle dans mes vers, ie luy cede la place.) 」((Eclaircissement..., p.96))  ここで示されているラテン語詩は口絵で使われているものと同じであるが、このくだりは口絵のない伝本(リヨン市立図書館蔵とローマ国立中央図書館蔵)にも見られる。  つまり、口絵のある方こそ作者が最初に作成したバージョンで、口絵のない方はそれを無許可でコピーした(銅版画は手間がかかるので模写せずにカットした)ということなのではないだろうか。 *出版地  一般には、パリもしくはアムステルダムと推測されている。前記『ビブリオテカ・マギカ』は、パリのセバスチャン・クラモワジ(Sebast. Cramoisy)とエドマンディ・クトロー(Edmundi Couterot)による出版とまで特定してはいるが、根拠が示されていない。[[ロベール・ブナズラ]]は疑問符付きでアムステルダムとしている((Benazra [1990] p.231))。  口絵と二行詩が[[1668年アムステルダム版の口絵>ノストラダムスの肖像画 (アムステルダム、1668年)]]に転用されたことを考えるなら、オリジナルの出版地はアムステルダムなのではないかとも思える。 *所蔵先 -フランス国立図書館、サント=ジュヌヴィエーヴ図書館、アルスナル図書館、アミアン市立図書館、カルパントラ市立図書館、リヨン市立図書館、モンペリエ市立図書館、モンペリエBIU、ニオール市立図書館、エヴルー市立図書館、オルレアン市立図書館、ヴェルサイユ市立図書館、[[ポール・アルボー博物館]] -国立カザナテンセ図書館、大英図書館、バイエルン州立市立図書館、ハーバード大学図書館、ニューヨーク公立図書館、ローマ国立中央図書館 -ほかに[[田窪勇人]]が私蔵している。  すでに述べたように口絵の有無の違いがあるが、ショマラやブナズラの書誌ではそれらの区別がなされていないため、上記の蔵書のうちどれがどちらに属するのかは分からない。例外はリヨン市立図書館とローマ国立中央図書館の蔵書で、Googleブックスで公開されているお蔭で口絵のないバージョンであることが明らかになっている。 *コメント  この解釈書は、信頼性の点では非常に疑問な箇所が多い。[[アンリ2世]]の死を的中させたとされる[[百詩篇第1巻35番]]にしても、原文を改竄することで的中したことにしてしまうなど、手法に問題がある(下の画像参照)。的中を優先して原文を改竄することもいとわないという姿勢は[[ジャン=エメ・ド・シャヴィニー]]の悪い点を引き継いだといえるだろう。  その一方で、[[百詩篇第11巻]]や[[第12巻>百詩篇第12巻]]の百詩篇補遺に疑問を投げかけたり、反マザランの詩篇([[百詩篇第7巻42番bis]]、[[百詩篇第7巻43番]])を偽物と看破するなど、評価できる点もある。 #image(Nostradamus1656.jpg) 詩の4行目に注目。classes が playes に改竄されている。 (画像の出典はウィキメディアコモンズだが(([[http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nostradamus1656.jpg>>http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nostradamus1656.jpg]]))、大元の出典は「ノストラダムス研究室」である。) ---- #comment
 『&bold(){ミシェル・ノストラダムス師の真の四行詩集の解明}』(Eclaircissement des veritables Quatrains de Maistre Michel Nostradamus)は、1656年に出版されたノストラダムス予言の解釈書。著者名も出版地名も記載されていない。 #image(http://www42.atwiki.jp/nostradamus/?cmd=upload&act=open&page=%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%80%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%82%96%E5%83%8F%E7%94%BB%20%28%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%A0%E3%80%811668%E5%B9%B4%29&file=1656portrait.PNG) 【画像】この解釈書の扉と思われるページ((画像の出典:金森誠也「大予言者ノストラダムスの秘密」(『ムー』第29号、1983年)p.37)) *正式名 -ECLAIRCISSEMENT des veritables Quatrains de Maistre MICHEL NOSTRADAMVS, Docteur & Professeur en Medecine, Conseiller & Medecin ordinaire des Roys Henry II. Francois II. & Charles IX. grand Astrologue de son temps, & specialement pour la connoissance des choses futures. M.DC.LVI. --医学博士・医学教授にして、国王アンリ2世、フランソワ2世、シャルル9世の常任侍医・顧問、さらにとりわけ未来の物事を知ることのかけての彼の時代の偉大な占星術師ミシェル・ノストラダムス師の真の四行詩集の解明。1656年。 *著者  アントワーヌ=アレクサンドル・バルビエ編著『匿名・偽名の作品事典』(1822年)では、この作品の著者は医師の[[エチエンヌ・ジョベール]]とされている((Antoine-Alexandre Barbier, &italic(){Dictionnaire des ouvrages anonymes et pseudonymes}, Paris, 1822, p.354))。  ノストラダムスの信奉者の間ではそれが通説化しており、[[エドガー・レオニ]]や[[ミシェル・ショマラ]]などの実証的な論者にもこの説を支持する者がいる。  他方で、『ビブリオテカ・マギカ』(フィレンツェ、1985年)では、著者は[[ジャン・ジフル・ド・レシャク]]とされており、[[ジャック・アルブロン]]のように、それを積極的に支持する者もいる。 *内容  前書きに続いて「ミシェル・ノストラダムスのための弁明」と題する伝記などが載せられている(pp.1-68)。そこでは、ノストラダムスを見聞きした人々の子孫などから直接聞いたとするエピソードなども語られており、有名な[[フロランヴィルの領主]]の「白豚と黒豚の話」も初めて登場した。  続いて「ノストラダムスの詩百篇集について。序文」(pp.69-112)という節が続き、残りのページが予言詩の解釈になっている(pp.113-458)。ただし、そこで主に扱われているのは1555年から1560年までというきわめて限定的な時代の解釈である。  残る時代についても意欲を持っていたらしく、他に17巻ものシリーズにする予定があると予告はしていたが、出版された形跡はなく、それらしい手稿も見つかっていない((Benazra [1990] pp.231-233))。 *異本  この文献には、冒頭に口絵のあるバージョンとないバージョンがある。どちらがオリジナルなのかについてだが、本文中に次のような言及がある。 「本書の口絵でノストラダムスの肖像の下に私が掲げたラテン語の二行詩については、その証拠とともに、本書全体で認識することとなるだろう。 『私は真理を語り、虚言を語らない。それは天からの賜りものゆえ、 語り手は神であって、私ことノストラダムスではないのだ。』 (Vera loquor, nac falsa loquor, sed munere coeli, Qui loquitur Deus est, non ego Nostradamus ) フランス語では 『私は偽りなしに真実を語るが、それは神のおかげである。 我が詩において語っているのは神であり、私は(語り手の)座を譲っている。』 ( Ie dis vray sans fausseté, mais à Dieu soit la grace, Il parle dans mes vers, ie luy cede la place.) 」((Eclaircissement..., p.96))  ここで示されているラテン語詩は口絵で使われているものと同じであるが、このくだりは口絵のない伝本(リヨン市立図書館蔵とローマ国立中央図書館蔵)にも見られる。  つまり、口絵のある方こそ作者が最初に作成したバージョンで、口絵のない方はそれを無許可でコピーした(銅版画は手間がかかるので模写せずにカットした)ということなのではないだろうか。 *出版地  一般には、パリもしくはアムステルダムと推測されている。前記『ビブリオテカ・マギカ』は、パリのセバスチャン・クラモワジ(Sebast. Cramoisy)とエドマンディ・クトロー(Edmundi Couterot)による出版とまで特定してはいるが、根拠が示されていない。[[ロベール・ブナズラ]]は疑問符付きでアムステルダムとしている((Benazra [1990] p.231))。  口絵と二行詩が[[1668年アムステルダム版の口絵>ノストラダムスの肖像画 (アムステルダム、1668年)]]に転用されたことを考えるなら、オリジナルの出版地はアムステルダムなのではないかとも思える。 *所蔵先 -フランス国立図書館、サント=ジュヌヴィエーヴ図書館、アルスナル図書館、アミアン市立図書館、カルパントラ市立図書館、リヨン市立図書館、モンペリエ市立図書館、モンペリエBIU、ニオール市立図書館、エヴルー市立図書館、オルレアン市立図書館、ヴェルサイユ市立図書館、[[ポール・アルボー博物館]] -国立カザナテンセ図書館、大英図書館、バイエルン州立市立図書館、ハーバード大学図書館、ニューヨーク公立図書館、ローマ国立中央図書館 -ほかに[[田窪勇人]]が私蔵している。  すでに述べたように口絵の有無の違いがあるが、ショマラやブナズラの書誌ではそれらの区別がなされていないため、上記の蔵書のうちどれがどちらに属するのかは分からない。例外はリヨン市立図書館とローマ国立中央図書館の蔵書で、Googleブックスで公開されているお蔭で口絵のないバージョンであることが明らかになっている。 *コメント  この解釈書は、信頼性の点では非常に疑問な箇所が多い。[[アンリ2世]]の死を的中させたとされる[[百詩篇第1巻35番]]にしても、原文を改竄することで的中したことにしてしまうなど、手法に問題がある(下の画像参照)。的中を優先して原文を改竄することもいとわないという姿勢は[[ジャン=エメ・ド・シャヴィニー]]の悪い点を引き継いだといえるだろう。  その一方で、[[詩百篇第11巻]]や[[第12巻>百詩篇第12巻]]の百詩篇補遺に疑問を投げかけたり、反マザランの詩篇([[第7巻42番bis>百詩篇第7巻42番bis]]、[[第7巻43番>百詩篇第7巻43番]])を偽物と看破するなど、評価できる点もある。 #image(Nostradamus1656.jpg) 詩の4行目に注目。classes が playes に改竄されている。 (画像の出典はウィキメディアコモンズだが(([[http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nostradamus1656.jpg>>http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nostradamus1656.jpg]]))、大元の出典は「ノストラダムス研究室」である。) ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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