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*原文
Mars & Mercure&sup(){1} & l'argent&sup(){2} ioint&sup(){3} ensemble
Vers le midi&sup(){4} extreme siccité :
Au fond d'Asie on&sup(){5} dira terre&sup(){6} tremble&sup(){7},
Corinthe, Ephese&sup(){8} lors en perplexité.
**異文
(1) Mercure : mercure 1627
(2) l'argent : Largent 1672
(3) ioint : ioins 1665
(4) midi : Midy 1605 1611 1628 1644 1649Xa 1653 1660 1665 1672 1772Ri
(5) on : lon 1627
(6) terre : Terre 1672
(7) tremble : temble 1627
(8) Ephese : Epheses 1568I
*日本語訳
[[マルス]]と[[メルクリウス]]と銀がひとつに結びつく。
南の方には極度の旱魃。
アジアの奥地で大地が震えると噂されるだろう。
そのとき[[コリントス]]と[[エフェソス]]は困惑する。
**訳について
山根訳は概ね問題はないが、3行目「アジアの奥地から地震の報せが届き」((山根 [1988] p.119))は、少々無理のある訳。「奥地から」なら Au fond ではなく Du fond となっていただろう。
大乗訳3行目「アジアの底で大地震があり」((大乗 [1975] p.98))も問題がある。確かに fond には「底」の意味もあるが、文脈からして「奥地」「果て」などのほうが適切だろう。また、on dira(言われるだろう、噂されるだろう)に対応する言葉が抜け落ちている。
同4行目「それゆえコリントとエフエゾは困惑のうちに成就する」も不適切。「成就する」は言葉を補いすぎだろう。[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳(Corinthe and Ephesus shall then be in perplexty.((Roberts [1949] p.78)))にも、そんな言葉はない。
*信奉者側の見解
ロバーツは、キリスト教を苦境にさらす運動がインドから広まることと解釈し、コリントスとエフェソスもアジアでの殉教に触れた新約聖書の「コリント人への手紙」「エペソ人への手紙」に関連付けたが、[[ロバート・ローレンス]]らの改訂版では、20世紀にアジアで大きな地震が相次いだことの予言に差し替えられている。
[[エリカ・チータム]]はコリントスとエフェソスを[[百詩篇第2巻52番]]と関連付けつつ、イギリスとオランダの喩えと解釈し、アジアでの地震がその2ヶ国を困惑させることの予言と解釈した((Cheetham [1990]))。
[[流智明]]は、かつて1989年10月か1991年7月にアジアで大地震が起こる予言と解釈していた((チータム [1988]))。
[[藤島啓章]]は、「アジアの奥地」とした場合、中国、モンゴル、インドあたりでの大地震を、「アジアの果て」と訳した場合、日本で大地震が起きることを予言したものである可能性があるとし、コリントスとエフェソスは、ロバーツ同様「コリント人への手紙」と「エペソ人への手紙」に関連付け、被災者の苦難を描写したものだとした ((pp.142-146))。
*同時代的な視点
1行目の星位は頻繁に起こりうるので、星座が特定されなければ、時期を絞ることは難しい。
[[ピーター・ラメジャラー]]は、火星、水星、月(「銀」)の合は、ノストラダムスがこの詩を書いていたと思われる1554年に繰り返し起こった(1月初旬と2月初旬に宝瓶宮、3月初旬に白羊宮、5月初旬に金牛宮)ことを指摘している((Lemesurier [2003b]))。
コリントスとエフェソスと地震は[[百詩篇第2巻52番]]にも登場する。[[ジャン=ポール・クレベール]]は、当時の人々の地理的認識として、「アジアの奥地」と「コリントスとエフェソス」が密接に結びつきうることを指摘している。つまり、コリントスとエフェソスの受難は間接的なものではなく、地震による被害ということである((Clébert [2003]))。
さて、ノストラダムスが直接参照したかは不明だが、『[[シビュラの託宣]]』第5巻には次のような予言がある。
「お前も泣くがよい、コリントよ、お前のうちにある嘆かわしい破滅を!」(214行目)
「エペソのアルテミスの御社は地にすえられていたのに、いつの日か地割れと地震とによって聖い海にまっさかさまに落ちるだろう。ちょうど舟が疾風によって転覆するように。」(293 - 295行目)((以上は柴田善家訳「シビュラの託宣」『聖書外典偽典3』教文館、1975年による。))
コリントスの方は地震と直接結び付けられているわけではないが、エフェソス(エペソ)は見ての通りである。
仮にノストラダムスがこれを参照していたのなら、この詩は確かにクレベールが指摘するように、コリントスとエフェソスの地震を描写している可能性は高くなるだろう。
少なくとも、ここで地理的結びつき等を無視して唐突に日本を持ち出す類の解釈が説得力を持ちうるとは到底考えられない。
なお、ノストラダムスは百詩篇だけでなく、暦書のほうでも、こうした地震の被害を受ける東洋の都市のモチーフを採り上げている((Brind’Amour [1996]))。
#ref(http://www42.atwiki.jp/nostradamus/?cmd=upload&act=open&page=%E7%99%BE%E8%A9%A9%E7%AF%87%E7%AC%AC2%E5%B7%BB52%E7%95%AA&file=Corinthe.PNG)
【画像】コリントスとエフェソスの位置
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- 1900年前後の事件と日露戦争などを予言した詩篇 -- とある信奉者 (2010-03-07 22:48:48)
- 2行は LE VERSEAU 水瓶座に水(EAU)がないので旱魃というノストラダムスの言葉遊び。 つまり、1行の天体位置は水瓶座での火星、水星、月(銀)の155年以来の最初の合である1900年1月31日を表現している。 旱魃とは渇望を意味する。1900年に起こった義和団の乱で列強各国が清のそれを鎮圧した後もロシアは撤退せずにいた。 そのことに危機感を抱いた日本と英国は共通の利害関係から同盟関係を結んだ。 パウロの宛てた書簡の二つの都市 コリント、エフェソスは、東方教会(ギリシャ正教、ロシア正教)の代喩であり、 日本のそれ(正ハリストス正教会)はロシア人宣教師によって伝えられたが、日本最初のその信者の洗礼名がパウロだった! 日露戦争中、その信者たちは迫害されて困惑の中にあった。 on 人々 → Londres(ロンドン)の省略形暗号。英語なら、London で2個もonが含まれる。 -- とある信奉者 (2011-08-22 16:46:30)
- 155年以来 → 1555年以来 -- とある信奉者 (2011-08-22 16:47:02)
*原文
Mars & Mercure&sup(){1} & l'argent&sup(){2} ioint&sup(){3} ensemble
Vers le midi&sup(){4} extreme siccité :
Au fond d'Asie on&sup(){5} dira terre&sup(){6} tremble&sup(){7},
Corinthe, Ephese&sup(){8} lors en perplexité.
**異文
(1) Mercure : mercure 1627
(2) l'argent : Largent 1672
(3) ioint : ioins 1665
(4) midi : Midy 1605 1611 1628 1644 1649Xa 1653 1660 1665 1672 1772Ri
(5) on : lon 1627
(6) terre : Terre 1672
(7) tremble : temble 1627
(8) Ephese : Epheses 1568I
*日本語訳
[[マルス]]と[[メルクリウス]]と銀がひとつに結びつく。
南の方には極度の旱魃。
アジアの奥地で大地が震えると噂されるだろう。
そのとき[[コリントス]]と[[エフェソス]]は困惑する。
**訳について
山根訳は概ね問題はないが、3行目「アジアの奥地から地震の報せが届き」((山根 [1988] p.119))は、少々無理のある訳。「奥地から」なら Au fond ではなく Du fond となっていただろう。
大乗訳3行目「アジアの底で大地震があり」((大乗 [1975] p.98))も問題がある。
確かに fond には「底」の意味もあるが、文脈からして「奥地」「果て」などのほうが適切だろう。また、on dira(言われるだろう、噂されるだろう)に対応する言葉が抜け落ちている。
同4行目「それゆえコリントとエフエゾは困惑のうちに成就する」も不適切。
「成就する」は言葉を補いすぎだろう。[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳(Corinthe and Ephesus shall then be in perplexty.((Roberts [1949] p.78)))にも、そんな言葉はない。
*信奉者側の見解
[[ヘンリー・C・ロバーツ]]は、キリスト教を苦境にさらす運動がインドから広まることと解釈し、[[コリントス]]と[[エフェソス]]もアジアでの殉教に触れた新約聖書の「コリント人への手紙」「エペソ人への手紙」に関連付けた。
しかし、[[ロバート・ローレンス]]らの改訂版では、20世紀にアジアで大きな地震が相次いだことの予言に差し替えられている。
[[エリカ・チータム]]はコリントスとエフェソスを[[詩百篇第2巻52番>百詩篇第2巻52番]]と関連付けつつ、イギリスとオランダの喩えと解釈し、アジアでの地震がその2ヶ国を困惑させることの予言と解釈した((Cheetham [1990]))。
[[流智明]]は、かつて1989年10月か1991年7月にアジアで大地震が起こる予言と解釈していた((チータム [1988]))。
[[藤島啓章]]は、「アジアの奥地」とした場合、中国、モンゴル、インドあたりでの大地震を、「アジアの果て」と訳した場合、日本で大地震が起きることを予言したものである可能性があるとした。
また、コリントスとエフェソスは、ロバーツ同様「コリント人への手紙」と「エペソ人への手紙」に関連付け、被災者の苦難を描写したものだとした ((藤島[1989]pp.142-146))。
*同時代的な視点
1行目の星位は頻繁に起こりうるので、星座が特定されなければ、時期を絞ることは難しい。
[[ピーター・ラメジャラー]]は、火星、水星、月(「銀」)の合は、ノストラダムスがこの詩を書いていたと思われる1554年に繰り返し起こった(1月初旬と2月初旬に宝瓶宮、3月初旬に白羊宮、5月初旬に金牛宮)ことを指摘している((Lemesurier [2003b]))。
コリントスとエフェソスと地震は[[詩百篇第2巻52番>百詩篇第2巻52番]]にも登場する。
[[ジャン=ポール・クレベール]]は、当時の人々の地理的認識として、「アジアの奥地」と「コリントスとエフェソス」が密接に結びつきうることを指摘している。つまり、コリントスとエフェソスの受難は間接的なものではなく、地震による被害ということである((Clébert [2003]))。
さて、ノストラダムスが直接参照したかは不明だが、『[[シビュラの託宣]]』第5巻には次のような予言がある。
「お前も泣くがよい、コリントよ、お前のうちにある嘆かわしい破滅を!」(214行目)
「エペソのアルテミスの御社は地にすえられていたのに、いつの日か地割れと地震とによって聖い海にまっさかさまに落ちるだろう。ちょうど舟が疾風によって転覆するように。」(293 - 295行目)((以上は柴田善家訳「シビュラの託宣」『聖書外典偽典3』教文館、1975年による。))
コリントスの方は地震と直接結び付けられているわけではないが、エフェソス(エペソ)は見ての通りである。
仮にノストラダムスがこれを参照していたのなら、この詩は確かにクレベールが指摘するように、コリントスとエフェソスの地震を描写している可能性は高くなるだろう。
少なくとも、ここで地理的結びつき等を無視し、唐突に日本を持ち出す類の解釈が説得力を持ちうるとは、到底考えられない。
なお、ノストラダムスは詩百篇だけでなく、暦書のほうでも、こうした地震の被害を受ける東洋の都市のモチーフを採り上げている((Brind’Amour [1996]))。
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【画像】コリントスとエフェソスの位置
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- 1900年前後の事件と日露戦争などを予言した詩篇 -- とある信奉者 (2010-03-07 22:48:48)
- 2行は LE VERSEAU 水瓶座に水(EAU)がないので旱魃というノストラダムスの言葉遊び。 つまり、1行の天体位置は水瓶座での火星、水星、月(銀)の155年以来の最初の合である1900年1月31日を表現している。 旱魃とは渇望を意味する。1900年に起こった義和団の乱で列強各国が清のそれを鎮圧した後もロシアは撤退せずにいた。 そのことに危機感を抱いた日本と英国は共通の利害関係から同盟関係を結んだ。 パウロの宛てた書簡の二つの都市 コリント、エフェソスは、東方教会(ギリシャ正教、ロシア正教)の代喩であり、 日本のそれ(正ハリストス正教会)はロシア人宣教師によって伝えられたが、日本最初のその信者の洗礼名がパウロだった! 日露戦争中、その信者たちは迫害されて困惑の中にあった。 on 人々 → Londres(ロンドン)の省略形暗号。英語なら、London で2個もonが含まれる。 -- とある信奉者 (2011-08-22 16:46:30)
- 155年以来 → 1555年以来 -- とある信奉者 (2011-08-22 16:47:02)