六行詩49番

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[[六行詩集]]>49番* *原文 Venus & [[Sol]]&sup(){1}, Iupiter&sup(){2} & Mercure Augmenteront le genre de nature Grande alliance&sup(){3} en France se fera, Et du Midy&sup(){4} la sangsuë&sup(){5} de mesme&sup(){6}, Le feu esteint par ce&sup(){7} remede extreme, En terre&sup(){8} ferme Oliuer&sup(){9} plantera. **異文 (1) Venus & Sol : Venus sol 1600Mo (2) Iupiter : iupiter 1611B (3) alliance : Alliance 1672Ga (4) Midy : midy 1600Mo (5) sangsuë : Censue 1600Au, sensue 1600Mo, sangsue 1611A 1627Ma 1627Di, Sangsue 1672Ga (6) de mesme : demesme 1627Di (7) ce : le 1600Mo (8) terre : Terre 1672Ga (9) Oliuer 1605sn 1649Xa : l'olliue 1600Au, Oliuier 1600Mo 1611 1627Ma 1627Di 1628dR 1644Hu 1649Ca 1672Ga *日本語訳 金星と太陽、木星と水星が、 性質の部門を増大させるだろう。 フランスで偉大な結びつきが生まれるだろう。 そして南仏からは同じような蛭が。 火は極限の方法で消され、 固い土地にオリーヴが植樹されるだろう。 **訳について  terre ferme が terre à ferme のつもりで書かれているのだとしたら、「固い土地」ではなく「小作地」の意味になる。  この詩については[[五島勉]]が訳している。その2行目「自然の分野が増大する」((『ノストラダムスの大予言・中東編』p.162))は明らかに誤訳。augmentront は三人称複数に対応しているので、la genre de nature を主語とすることはできない。  同4行目「同じころ南方は血まみれに」も誤訳。当時の de mesme は「似たような」(semblable)、「比較しうる」(comparable)を意味する成句((DMF))。蛭(sangsue)の訳を「血まみれ」とするのも、意訳しすぎではないか。  同5行目「その火は究極の救いで消され」は現代フランス語での訳としては誤りではないが、中期フランス語の remede は救いではなく「方法」(moyen, recours)の意味である((DMF))。  同6行目「閉じられた地にオリーブが植えられる」も誤訳。「閉じられた地」なら、la terre fermée となっているべきである。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、1、2行目を占星術に関する表現と捉えた。そして、フランスに生まれる偉大な結びつきとは、ルイ14世とスペイン王女マリー・テレーズの結婚(1660年)を指し、それがフランスの平和をもたらすことの予言と解釈した((Garencieres [1672]))。  [[アンドレ・ラモン]]は、1行目を順に「愛、栄光、力、叡智」の比喩と理解し、そういったものを備えた素晴らしい君主がフランスに現れ、世界に平和をもたらす予言と解釈した((Lamont [1943] p.305))。  [[五島勉]]は六行詩集のピークの詩と位置づけ、中東(「南方」)での大戦は不可避だが、イスラエル(「オリーヴ」)、ヨーロッパ帝国(「フランスの巨大な同盟」)、アメリカ(「金星」)は大いに持ち直すことになる見通しなどが語られているとした((五島『ノストラダムスの大予言・中東編』pp.162-166))。 *同時代的な視点  1、2行目はおそらく占星術的な話で、それぞれの星の占星術的な性質が強まるような星位を述べているのだろう。  オリーヴが平和の象徴というのはほぼ疑いのないところで、フランスが結ぶことになる何らかの同盟関係(あるいは王室の縁組)が、フランスに平和をもたらすことを描いているように読める。  そういう意味ではガランシエールの解釈なら、ある程度当たったといえなくもない。ただし、王侯貴族が婚姻によって安定や勢力伸張を狙うのは、古今東西何ら珍しい話ではない点を忘れてはならないだろう。 *その他 1600Au では47番になっている。 ---- #comment
[[六行詩集]]>49番* *原文 Venus & [[Sol]]&sup(){1}, Iupiter&sup(){2} & Mercure Augmenteront le genre de nature Grande alliance&sup(){3} en France se fera, Et du Midy&sup(){4} la sangsuë&sup(){5} de mesme&sup(){6}, Le feu esteint par ce&sup(){7} remede extreme, En terre&sup(){8} ferme Oliuer&sup(){9} plantera. **異文 (1) Venus & Sol : Venus sol 1600Mo (2) Iupiter : iupiter 1611B (3) alliance : Alliance 1672Ga (4) Midy : midy 1600Mo (5) sangsuë : Censue 1600Au, sensue 1600Mo, sangsue 1611A 1627Ma 1627Di, Sangsue 1672Ga (6) de mesme : demesme 1627Di (7) ce : le 1600Mo (8) terre : Terre 1672Ga (9) Oliuer 1605sn 1649Xa : l'olliue 1600Au, Oliuier 1600Mo 1611 1627Ma 1627Di 1628dR 1644Hu 1649Ca 1672Ga *日本語訳 金星と太陽、木星と水星が、 性質の部門を増大させるだろう。 フランスで偉大な結びつきが生まれるだろう。 そして南仏からは同じような蛭が。 火は極限の方法で消され、 固い土地にオリーヴが植樹されるだろう。 **訳について  terre ferme が terre à ferme のつもりで書かれているのだとしたら、「固い土地」ではなく「小作地」の意味になる。  この詩については[[五島勉]]が訳している。その2行目「自然の分野が増大する」((『ノストラダムスの大予言・中東編』p.162))は明らかに誤訳。augmentront は三人称複数に対応しているので、la genre de nature を主語とすることはできない。  同4行目「同じころ南方は血まみれに」も誤訳。当時の de mesme は「似たような」(semblable)、「比較しうる」(comparable)を意味する成句((DMF))。蛭(sangsue)の訳を「血まみれ」とするのも、意訳しすぎではないか。  同5行目「その火は究極の救いで消され」は現代フランス語での訳としては誤りではないが、中期フランス語の remede は救いではなく「方法」(moyen, recours)の意味である((DMF))。  同6行目「閉じられた地にオリーブが植えられる」も誤訳。「閉じられた地」なら、la terre fermée となっているべきである。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、1、2行目を占星術に関する表現と捉えた。そして、フランスに生まれる偉大な結びつきとは、ルイ14世とスペイン王女マリー・テレーズの結婚(1660年)を指し、それがフランスの平和をもたらすことの予言と解釈した((Garencieres [1672]))。  [[アンドレ・ラモン]]は、1行目を順に「愛、栄光、力、叡智」の比喩と理解し、そういったものを備えた素晴らしい君主がフランスに現れ、世界に平和をもたらす予言と解釈した((Lamont [1943] p.305))。  [[五島勉]]は六行詩集のピークの詩と位置づけ、中東(「南方」)での大戦は不可避だが、イスラエル(「オリーヴ」)、ヨーロッパ帝国(「フランスの巨大な同盟」)、アメリカ(「金星」)は大いに持ち直すことになる見通しなどが語られているとした((五島『ノストラダムスの大予言・中東編』pp.162-166))。 *同時代的な視点  1、2行目はおそらく占星術的な話で、それぞれの星の占星術的な性質が強まるような星位を述べているのだろう。  オリーヴが平和の象徴というのはほぼ疑いのないところで、フランスが結ぶことになる何らかの同盟関係(あるいは王室の縁組)が、フランスに平和をもたらすことを描いているように読める。  そういう意味ではガランシエールの解釈なら、ある程度当たったといえなくもない。ただし、王侯貴族が婚姻によって安定や勢力伸張を狙うのは、古今東西何ら珍しい話ではない点を忘れてはならないだろう。 *その他 1600Au では47番になっている。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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