ミシェル・ノストラダムス師の予言集 (偽ブノワ・リゴー版)

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 この項目では、18世紀後半に出版された[[1568年版『予言集』>ミシェル・ノストラダムス師の予言集 (1568年)]]の海賊版(偽年代版)について扱う。 #ref(1772rigaud.JPG) 【画像】偽年代版の扉((画像の出典:[[http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nostradamus_Centuries_1772.jpg?uselang=ja]])) *正式名 -Les Propheties de M. Michel Nostradamus. Dont il y en a trois cens qui n'ont encores jamais été imprimées. Ajoûtées de nouveau par ledit Auteur. --A Lyon. Par Benoist Rigaud. Avec Permission. 1568. -ミシェル・ノストラダムス師の予言集。前述の著者によって新たに加えられた未刊の300篇を含む --リヨンにて、[[ブノワ・リゴー]]による。認可済み。1568年。  このタイトルはブノワ・リゴー版を忠実に写したものだが、16世紀当時の表記に比べると現代の綴りに近くなっている(NOSTRADAMVS→NOSTRADAMUS, Adioustees→Ajoûtéesなど)。こうした変化をもとに、18世紀以降の版であろうということは、1960年代には指摘されていた((Leoni [1982] p.44))。  木版画は全く異なっている。PI- TER とあるのはユピテル(JUPITER)と綴ろうとして JU を落としてしまったものだろうと推測されている。[[アンリ・ボードリエ]]は JUPI-TER と綴られている版の存在を報告していたが((Baudrier, T.III, p.258))、確認されていない。  [[エリザベート・ベルクール]]は、この木版画も含む表紙のデザインをノストラダムス自身が手がけたと主張しているが((ベルクール『裏切られたノストラダムス』1982年、p.96))、裏付けるような資料はない。 *内容  1568年版と全く同じで、第一序文(セザールへの手紙)、百詩篇第1巻から第7巻、第二序文(アンリ2世への手紙)、第8巻から第10巻の順で収録されている。第7巻などに補遺篇はなく、収録詩篇数は942である。  ただし、本来のブノワ・リゴー版に比べて顕著な違いが3つある。  1つ目は既に見た正書法の変化を反映していること、2つ目は第二序文の前に扉がなく、二部構成になっていないこと、3つ目は[[百詩篇第6巻2番]]に明らかな改竄が含まれていることである。 *出版時期・出版年代  [[ダニエル・ルソ]]は、同じような丸囲みの木版画でサトゥルヌスをかたどったものが使われている関連書、『ミシェル・ド・ノストラダムスの8年間の新たなる真の占筮』(Nouveaux et vrais Pronostics de Michel de Nostradamus. Pour huit ans)(1792年)の存在を指摘した。これをもとに、ルソは偽ブノワ・リゴー版も1792年頃に出版されたと推測した((Ruzo [1997] p.407))。  ルソはその文献の写真などを公開していなかったので、どのような文献か断言できないが、おそらく[[ジャン=ポール・ラロッシュ]]が紹介した以下の文献と似たようなデザインだったのではないかと考えられる。 #ref(prono saturne.PNG) 【画像】『ミシェル・ノストラダムスの5年間の新たなる真の占筮』((画像の出典:Jean-Paul Laroche [2003], &italic(){Prophéties pour temps de crise}, Edition Michel Chomarat ))  他方、後述の理由から1772年には出版されていた可能性がある。  実際の出版地や出版社については明らかになっていないが、多少なりとも根拠のある候補を挙げるならば、アヴィニョンの出版業者、それもドメルグ家と結びつきの深かった業者(もしくはドメルグ家そのもの)ということになるだろう。 *影響  異文の一致などからして、18世紀末にアヴィニョンで相次いで出された「1568年版に基づいた」と称する『予言集』の起源は、この偽年代版であったろうと推測される。その種の予言集の最初のものは、[[1772年のトゥーサン・ドメルグ版>ミシェル・ノストラダムス師の予言集 (トゥーサン・ドメルグ、1772年)]]である。  19世紀の時点では本物と考えられていたため、[[アナトール・ル・ペルチエ]]が校訂本を出版したときにも、底本のひとつとして用いられた。  既に述べた[[エリザベート・ベルクール]]のように、現代の信奉者にも本物扱いする者はいる。懐疑派でも、[[山本弘]]の著書では「1568年版」として写真が掲載されていた((山本 [1999] p.31))。 *所蔵先 -オセール市立図書館、ナント市立図書館、ドール市立図書館、マルセイユ市立図書館、エクス=アン=プロヴァンス市立図書館、メジャヌ図書館、ペルージャのアウグスタ公立図書館  かつて、[[エクトール・リゴー]]や[[ダニエル・ルソ]]も所有していた。 ---- #comment
 この項目では、18世紀後半に出版された[[1568年版『予言集』>ミシェル・ノストラダムス師の予言集 (1568年)]]の海賊版(偽年代版)について扱う。 #ref(1772rigaud.JPG) 【画像】偽年代版の扉((画像の出典:[[http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nostradamus_Centuries_1772.jpg?uselang=ja]])) *正式名 -Les Propheties de M. Michel Nostradamus. Dont il y en a trois cens qui n'ont encores jamais été imprimées. Ajoûtées de nouveau par ledit Auteur. --A Lyon. Par Benoist Rigaud. Avec Permission. 1568. -ミシェル・ノストラダムス師の予言集。前述の著者によって新たに加えられた未刊の300篇を含む --リヨンにて、[[ブノワ・リゴー]]による。認可済み。1568年。  このタイトルはブノワ・リゴー版を忠実に写したものだが、16世紀当時の表記に比べると現代の綴りに近くなっている(NOSTRADAMVS→NOSTRADAMUS, Adioustees→Ajoûtéesなど)。こうした変化をもとに、18世紀以降の版であろうということは、1960年代には指摘されていた((Leoni [1982] p.44))。  木版画は全く異なっている。PI- TER とあるのはユピテル(JUPITER)と綴ろうとして JU を落としてしまったものだろうと推測されている。[[アンリ・ボードリエ]]は JUPI-TER と綴られている版の存在を報告していたが((Baudrier, T.III, p.258))、確認されていない。  [[エリザベート・ベルクール]]は、この木版画も含む表紙のデザインをノストラダムス自身が手がけたと主張しているが((ベルクール『裏切られたノストラダムス』1982年、p.96))、裏付けるような資料はない。 *内容  1568年版と全く同じで、第一序文(セザールへの手紙)、百詩篇第1巻から第7巻、第二序文(アンリ2世への手紙)、第8巻から第10巻の順で収録されている。第7巻などに補遺篇はなく、収録詩篇数は942である。  ただし、本来のブノワ・リゴー版に比べて顕著な違いが3つある。  1つ目は既に見た正書法の変化を反映していること、2つ目は第二序文の前に扉がなく、二部構成になっていないこと、3つ目は[[百詩篇第6巻2番]]に明らかな改竄が含まれていることである。 *出版時期・出版年代  [[ダニエル・ルソ]]は、同じような丸囲みの木版画でサトゥルヌスをかたどったものが使われている関連書、『ミシェル・ド・ノストラダムスの8年間の新たなる真の占筮』(Nouveaux et vrais Pronostics de Michel de Nostradamus. Pour huit ans)(1792年)の存在を指摘した。これをもとに、ルソは偽ブノワ・リゴー版も1792年頃に出版されたと推測した((Ruzo [1997] p.407))。  ルソはその文献の写真などを公開していなかったので、どのような文献か断言できないが、おそらく[[ジャン=ポール・ラロッシュ]]が紹介した以下の文献と似たようなデザインだったのではないかと考えられる。 #ref(1817salon.PNG) 【画像】『ミシェル・ノストラダムスの5年間の新たなる真の占筮』((画像の出典:Jean-Paul Laroche [2003], &italic(){Prophéties pour temps de crise}, Edition Michel Chomarat ))  他方、後述の理由から1772年には出版されていた可能性がある。  実際の出版地や出版社については明らかになっていないが、多少なりとも根拠のある候補を挙げるならば、アヴィニョンの出版業者、それもドメルグ家と結びつきの深かった業者(もしくはドメルグ家そのもの)ということになるだろう。 *影響  異文の一致などからして、18世紀末にアヴィニョンで相次いで出された「1568年版に基づいた」と称する『予言集』の起源は、この偽年代版であったろうと推測される。その種の予言集の最初のものは、[[1772年のトゥーサン・ドメルグ版>ミシェル・ノストラダムス師の予言集 (トゥーサン・ドメルグ、1772年)]]である。  19世紀の時点では本物と考えられていたため、[[アナトール・ル・ペルチエ]]が校訂本を出版したときにも、底本のひとつとして用いられた。  既に述べた[[エリザベート・ベルクール]]のように、現代の信奉者にも本物扱いする者はいる。懐疑派でも、[[山本弘]]の著書では「1568年版」として写真が掲載されていた((山本 [1999] p.31))。 *所蔵先 -オセール市立図書館、ナント市立図書館、ドール市立図書館、マルセイユ市立図書館、エクス=アン=プロヴァンス市立図書館、メジャヌ図書館、ペルージャのアウグスタ公立図書館  かつて、[[エクトール・リゴー]]や[[ダニエル・ルソ]]も所有していた。 ---- #comment

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