百詩篇第7巻19番

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*原文 Le fort&sup(){1} [[Nicene]]&sup(){2} ne sera combatu, Vaincu sera par rutilant metal&sup(){3}: Son faict sera vn long temps&sup(){4} debatu, Aux citadins&sup(){5} estrange [[espouuental>espouvantal]]. **異文 (1) fort : fort de 1611B 1660, Fort 1672 (2) Nicene : Nicee 1627 1650Ri, Nicée 1644 1653 1665 1840 (3) metal : metail 1716, metal' 1611A, metal', 1605 1611B 1628 (4) long temps : long-temps 1644 1653 1665 1716 1840 (5) citadins : Citadins 1672 *日本語訳 ニースの砦は交戦しないだろうが、 輝く金属によって陥落させられるだろう。 その行為は長く討議されるだろう。 市民たちへの奇妙で慄くべきこと。 **訳について  山根訳はおおむね問題はない。  大乗訳1行目「ナイシーンのとりでは闘争なく」((大乗 [1975] p.207))は、Nicene を英語読みする必然性がない。  同3行目「長いあいだこわされる」は誤訳。debattre は中期フランス語で「戦う」「討議する」などの意味で、「こわす」の意味はない。 *信奉者側の見解  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、1937年から1999年までの情景のひとつとして、フランスの政治権力は選挙に敗れることはないが、財政・金融上の問題で打撃を受けることの予言と解釈していた((M. de Fontbrune [1939] p.136))。  息子の[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は19世紀にニース出身のガリバルディが権力を伸ばすものの末路が悲惨なものだったことの予言と解釈した((Fontbrune [1980/1982]))。  [[アンドレ・ラモン]]は第二次世界大戦中にニースが戦うことなしに陥落することになると解釈した((Lamont [1943] p.285))。  [[ロルフ・ボズウェル]]は Nicene をギリシャ語由来の「勝利」を意味する語として、戦わずして陥落した「勝利の砦」とは、フランスのマジノ線だと解釈した((Boswell [1953] pp.206-207))。  [[ヴライク・イオネスク]]は従来「ニースの砦」と訳される Le fort Nicene について「強きニケネ」と読み、ニケネとは「ニケの息子」を意味するノストラダムスの造語で、ニクソン(Nixon)元アメリカ大統領の名を Nic-son と分解したものに通じるとした。それをふまえてイオネスクはこれをウォーターゲート事件と解釈した。  [[竹本忠雄]]によると、イオネスクはこの詩などからニクソンに何らかのスキャンダルが起こると判断し、事件前に本人に警告文を送ったものの考慮されることはなく、ホワイトハウスの担当官から侮辱的な返書が送られてきただけだったという((イオネスク [1990] pp.23-24, 164-167))。  [[川尻徹]]はニースのような風光明媚な場所が抗戦する間もないまま打ち破られたこととし、旧日本軍の真珠湾攻撃(1941年)とした((川尻『滅亡のシナリオ』祥伝社、pp.252-253))。 *同時代的な視点  当時のニースは伯爵領であり、フランスは何度かニース攻略を行っていた。  詩の情景は、ニースが武力によってではなく黄金(「輝く金属」)、つまり賄賂などによる籠絡によって陥落することを描写している。そして[[エドガー・レオニ]]は、1543年にフランスとオスマン帝国が共同でニース攻略を行い都市を占領したときの状況に一致するとした。この解釈は[[ピーター・ラメジャラー]]、[[ジャン=ポール・クレベール]]も支持している((Leoni [1961/1982], Lemesurier [2003b], Clébert [2003]))。 ---- #comment
*原文 Le fort&sup(){1} [[Nicene]]&sup(){2} ne sera combatu, Vaincu sera par rutilant metal&sup(){3}: Son faict sera vn long temps&sup(){4} debatu, Aux citadins&sup(){5} estrange [[espouuental>espouvantal]]. **異文 (1) fort : fort de 1611B 1660, Fort 1672 (2) Nicene : Nicee 1627 1650Ri, Nicée 1644 1653 1665 1840 (3) metal : metail 1716, metal' 1611A, metal', 1605 1611B 1628 (4) long temps : long-temps 1644 1653 1665 1716 1840 (5) citadins : Citadins 1672 *日本語訳 ニースの砦は交戦しないだろうが、 輝く金属によって陥落させられるだろう。 その行為は長く討議されるだろう。 市民たちへの奇妙で慄くべきこと。 **訳について  山根訳はおおむね問題はない。  大乗訳1行目「ナイシーンのとりでは闘争なく」((大乗 [1975] p.207))は、Nicene を英語読みする必然性がない。  同3行目「長いあいだこわされる」は誤訳。debattre は中期フランス語で「戦う」「討議する」などの意味で、「こわす」の意味はない。 *信奉者側の見解  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、1937年から1999年までの情景のひとつとして、フランスの政治権力は選挙に敗れることはないが、財政・金融上の問題で打撃を受けることの予言と解釈していた((M. de Fontbrune [1939] p.136))。  息子の[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は19世紀にニース出身のガリバルディが権力を伸ばすものの末路が悲惨なものだったことの予言と解釈した((Fontbrune [1980/1982]))。  [[アンドレ・ラモン]]は第二次世界大戦中にニースが戦うことなしに陥落することになると解釈した((Lamont [1943] p.285))。  [[ロルフ・ボズウェル]]は Nicene をギリシャ語由来の「勝利」を意味する語として、戦わずして陥落した「勝利の砦」とは、フランスのマジノ線だと解釈した((Boswell [1953] pp.206-207))。  [[ヴライク・イオネスク]]は従来「ニースの砦」と訳される Le fort Nicene について「強きニケネ」と読み、ニケネとは「ニケの息子」を意味するノストラダムスの造語で、ニクソン(Nixon)元アメリカ大統領の名を Nic-son と分解したものに通じるとした。それをふまえてイオネスクはこれをウォーターゲート事件と解釈した。  [[竹本忠雄]]によると、イオネスクはこの詩などからニクソンに何らかのスキャンダルが起こると判断し、事件前に本人に警告文を送ったものの考慮されることはなく、ホワイトハウスの担当官から侮辱的な返書が送られてきただけだったという((イオネスク [1990] pp.23-24, 164-167))。  [[川尻徹]]はニースのような風光明媚な場所が抗戦する間もないまま打ち破られたこととし、旧日本軍の真珠湾攻撃(1941年)とした((川尻『滅亡のシナリオ』祥伝社、pp.252-253))。 *同時代的な視点  当時のニースは伯爵領であり、フランスは何度かニース攻略を行っていた。  詩の情景は、ニースが武力によってではなく黄金(「輝く金属」)、つまり賄賂などによる籠絡によって陥落することを描写している。そして[[エドガー・レオニ]]は、1543年にフランスとオスマン帝国が共同でニース攻略を行い都市を占領したときの状況に一致するとした。この解釈は[[ピーター・ラメジャラー]]、[[ジャン=ポール・クレベール]]も支持している((Leoni [1961/1982], Lemesurier [2003b], Clébert [2003]))。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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