百詩篇第6巻49番

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*原文 De la partie de [[Mammer]]&sup(){1} grand Pontife&sup(){2}, Subiuguera les confins&sup(){3} du Dannube&sup(){4}: Chasser&sup(){5} les&sup(){6} croix&sup(){7} par fer raffe&sup(){8} ne&sup(){9} riffe, Captifz&sup(){10}, or&sup(){11}, bagues&sup(){12} plus de cent mille [[rubes]]&sup(){13}. **異文 (1) Mammer : Mammet 1644 1650Le 1650Ri 1653 (2) Pontife : pontife 1611B 1649Ca 1650Le 1660 1668 (3) confins : cofins 1611B 1660 (4) Dannube ou Danube : Danuube 1589PV (5) Chasser : Chasier 1628 (6) les : la 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840 (7) croix : crois 1611B 1660, Croix 1627 1644 (8) raffe : rasse 1589PV, raffé 1600 1627 1644 1650Ri 1653 1665 (9) ne : ni 1772Ri (10) Captifz : Captif 1649Ca 1650Le 1668 (11) or : Or 1672 (12) bagues : bague 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840 (13) rubes : Rubles 1672 (注意)1588-89では、3-4-1-2行目の順でV-8に差し替えられているため、この詩が収録されていない。 *日本語訳 マメルに属する大祭司が ドナウ川の両岸を支配するだろう、 鉄(武器)によって何が何でも十字架を駆逐するために。 捕虜たち、黄金、指輪、十万点以上のルビー **訳について  大乗訳はおおむね許容範囲内だが、3行目「鉄の十字架をひきずって混乱を起こし」((大乗 [1975] p.186))は誤訳。[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳は They shall pursue crosses of iron, topsy-turvy((Roberts [1949] p.195))となっており、「十字架を引きずる」とはなっていない([[raffe ne riffe]]をどう訳すかは後述)。  大乗訳は[[五島勉]]の「彼らはカギ形に曲がった鉄の十字架をひきずり」((五島 [1973] p.87))という訳に影響されたものだろう。  chasserは確かに海事用語としてなら「錨を引きずる」という意味がある。しかし、その場合は自動詞なので、その意味ならばles croixは何らかの前置詞をとるはずと考えられる。  [[raffe ne riffe]]を「カギ形に曲がった」と訳す事例は信奉者側にしばしば見られるが、適切なものとは考えられない。  山根訳もおおむね許容範囲内だが、3行目「鉤が曲がり杖に追いかけられる十字架」((山根 [1988] p.224))は誤訳だろう。これも[[raffe ne riffe]]を参照のこと。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]はほとんど読んだそのままに、ローマ教皇側の一派がドナウ川両岸を征服することの予言とした((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[バルタザール・ギノー]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]、[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]、[[アンドレ・ラモン]]、[[ロルフ・ボズウェル]]の著書には載っていない。  [[ヘンリー・C・ロバーツ]]はナチスのカギ十字の予言と捉えた((Roberts [1949]))。この解釈は黒沼健によって日本でも紹介され、[[五島勉]]もそれを踏襲した((黒沼『世界の予言』1971年、p.143、五島勉 [1973]))。五島は1行目の「党」や3行目の「カギ形に曲がった十字架」はナチスに非常に適合しているとした。  [[セルジュ・ユタン]]はナチスによるオーストリアやチェコスロヴァキアの併合と解釈した((Hutin [1978]))。  [[ヴライク・イオネスク]]はスターリンに当てはめている((イオネスク [1990] p.78))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]は『[[ミラビリス・リベル]]』に描かれたイスラーム勢力のヨーロッパ侵攻の予言が投影されていると解釈した((Lemesurier [2003b]))。  マメルが何を指しているのか明瞭でないため特定しきれないが、ドナウ川を征服し十字架(キリスト教)を追い払うというのなら、確かにオスマン帝国の侵攻を警戒したものと捉えることが可能であろう。  なお、そのように読む場合、raffe ne riffe は[[テオフィル・ド・ガランシエール]]のように「あべこべに」と訳すと、文脈にはよく当てはまるように思う。キリスト教徒のノストラダムスにとっては、駆逐されるべきは異教徒であって十字架ではないからだ。ただし、ガランシエールがどのような根拠でそう訳したのかは明瞭でない。 ---- - 魔女に関する論文『魔女に与える鉄槌』をベースにして槌が国旗に描かれたソ連によるドナウ川周辺の国家侵略とナチスによるユダヤ人狩りを予言 -- とある信奉者 (2010-03-28 23:13:59) - ノストラダムスの念頭にある事件は1202年の第四回十字軍遠征であり、 大司教はイノケンティウス3世だろう。彼の呼びかけにより集まった 十字軍はキリスト教国の東ローマ帝国の首都は陥落し、 彼らは略奪・殺戮の限りを尽くした。ドナウ川は十字軍を運ぶのに使われた。 -- とある信奉者 (2011-08-08 11:41:21) - 4行はスターリンによって10万ルーブルの賞金が掛けられた ナチスの戦車撃破王 ハンス・ウルリッヒ・ルーデルについても述べられている。。 -- とある信奉者 (2011-09-17 10:02:46) #comment
*原文 De la partie de [[Mammer]]&sup(){1} grand Pontife&sup(){2}, Subiuguera les confins&sup(){3} du Dannube&sup(){4}: Chasser&sup(){5} les&sup(){6} croix&sup(){7} par fer raffe&sup(){8} ne&sup(){9} riffe, Captifz&sup(){10}, or&sup(){11}, bagues&sup(){12} plus de cent mille [[rubes]]&sup(){13}. **異文 (1) Mammer : Mammet 1644 1650Le 1650Ri 1653 (2) Pontife : pontife 1611B 1649Ca 1650Le 1660 1668 (3) confins : cofins 1611B 1660 (4) Dannube ou Danube : Danuube 1589PV (5) Chasser : Chasier 1628 (6) les : la 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840 (7) croix : crois 1611B 1660, Croix 1627 1644 (8) raffe : rasse 1589PV, raffé 1600 1627 1644 1650Ri 1653 1665 (9) ne : ni 1772Ri (10) Captifz : Captif 1649Ca 1650Le 1668 (11) or : Or 1672 (12) bagues : bague 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840 (13) rubes : Rubles 1672 (注意)1588-89では、3-4-1-2行目の順でV-8に差し替えられているため、この詩が収録されていない。 *日本語訳 マメルに属する大祭司が ドナウ川の両岸を支配するだろう、 鉄(武器)によって何が何でも十字架を駆逐するために。 捕虜たち、黄金、指輪、十万点以上のルビー **訳について  大乗訳はおおむね許容範囲内だが、3行目「鉄の十字架をひきずって混乱を起こし」((大乗 [1975] p.186))は誤訳。[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳は They shall pursue crosses of iron, topsy-turvy((Roberts [1949] p.195))となっており、「十字架を引きずる」とはなっていない([[raffe ne riffe]]をどう訳すかは後述)。  大乗訳は[[五島勉]]の「彼らはカギ形に曲がった鉄の十字架をひきずり」((五島 [1973] p.87))という訳に影響されたものだろう。  chasserは確かに海事用語としてなら「錨を引きずる」という意味がある。しかし、その場合は自動詞なので、その意味ならばles croixは何らかの前置詞をとるはずと考えられる。  [[raffe ne riffe]]を「カギ形に曲がった」と訳す事例は信奉者側にしばしば見られるが、適切なものとは考えられない。  山根訳もおおむね許容範囲内だが、3行目「鉤が曲がり杖に追いかけられる十字架」((山根 [1988] p.224))は誤訳だろう。これも[[raffe ne riffe]]を参照のこと。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]はほとんど読んだそのままに、ローマ教皇側の一派がドナウ川両岸を征服することの予言とした((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[バルタザール・ギノー]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]、[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]、[[アンドレ・ラモン]]、[[ロルフ・ボズウェル]]の著書には載っていない。  [[ヘンリー・C・ロバーツ]]はナチスのカギ十字の予言と捉えた((Roberts [1949]))。この解釈は黒沼健によって日本でも紹介され、[[五島勉]]もそれを踏襲した((黒沼『世界の予言』1971年、p.143、五島勉 [1973]))。五島は1行目の「党」や3行目の「カギ形に曲がった十字架」はナチスに非常に適合しているとした。  [[セルジュ・ユタン]]はナチスによるオーストリアやチェコスロヴァキアの併合と解釈した((Hutin [1978]))。  [[ヴライク・イオネスク]]はスターリンに当てはめている((イオネスク [1990] p.78))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]は『[[ミラビリス・リベル]]』に描かれたイスラーム勢力のヨーロッパ侵攻の予言が投影されていると解釈した((Lemesurier [2003b]))。  マメルが何を指しているのか明瞭でないため特定しきれないが、ドナウ川を征服し十字架(キリスト教)を追い払うというのなら、確かにオスマン帝国の侵攻を警戒したものと捉えることが可能であろう。  なお、そのように読む場合、raffe ne riffe は[[テオフィル・ド・ガランシエール]]のように「あべこべに」と訳すと、文脈にはよく当てはまるように思う。キリスト教徒のノストラダムスにとっては、駆逐されるべきは異教徒であって十字架ではないからだ。ただし、ガランシエールがどのような根拠でそう訳したのかは明瞭でない。 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。 - 魔女に関する論文『魔女に与える鉄槌』をベースにして槌が国旗に描かれたソ連によるドナウ川周辺の国家侵略とナチスによるユダヤ人狩りを予言 -- とある信奉者 (2010-03-28 23:13:59) - ノストラダムスの念頭にある事件は1202年の第四回十字軍遠征であり、 大司教はイノケンティウス3世だろう。彼の呼びかけにより集まった 十字軍はキリスト教国の東ローマ帝国の首都は陥落し、 彼らは略奪・殺戮の限りを尽くした。ドナウ川は十字軍を運ぶのに使われた。 -- とある信奉者 (2011-08-08 11:41:21) - 4行はスターリンによって10万ルーブルの賞金が掛けられた ナチスの戦車撃破王 ハンス・ウルリッヒ・ルーデルについても述べられている。。 -- とある信奉者 (2011-09-17 10:02:46) #comment

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