『ミシェル・ノストラダムス師の新予言』(Nouuelle Prophetie de M. Michel Nostradamus)は、ノストラダムスの『予言集』の版の一つである。1650年にパリのシルヴェストル・モローが出版したことになっているが、疑わしい。題名は1603年のモロー版を除けば全く使われたことのない珍しいもので、以降に引き継がれることがなかった。
正式名
NOVVELLE PROPHETIE DE M. MICHEL NOSTRADAMVS, qui n'ont jamais esté veuës, ny imprimées, qu'en ceste presente Année.
DEDIE' AV ROY.
A PARIS
Pour Syluestre Moreau, Libraire,
M.DC.L.
AVEC PERMISSION.
今年まで出版されることも一切目にされることもなかったミシェル・ノストラダムス師の新予言
王に捧げられた版
パリにて
書肆シルヴェストル・モローのために。
1650年。
特認付き。
Nouvelle Prophetie とあるのは Nouvelles Propheties とある方が本来は正しい。
なお、業者名は普通 Par, Chez などが使われる場合が多いが、少なくとも当時の特認の表記では、Par (~により) が印刷業者を示すのに対し、Pour (~のために) は書籍商を示すのに使われたという(*1)。
一見して明らかなように、1603年版は最後のページの冒頭にこの詩が来ているが、1650年版は直前の詩の後半が最後のページに含まれている。また、1行目の Angleterre の A のサイズが明らかに異なる。さらに、1603年版の場合、一番短いのは4行目だが、字間や活字の違いから、1650年版では3行目の方が短くなっている。これでティポグラフィが一致しているといえるのだろうか。もっとも、表題の「~のために」からすれば、実際に植字を担当した業者が異なっていたと考えることが出来るため、このこと自体はこの版の真偽を判断する直接的な論拠とはしがたい。