Almanach pour l'An 1565.

 『1565年向けの暦』(Almanach pour l'An 1565.)は、1565年にパリのチボー・ベソーによって出版されたノストラダムスの暦書だが、百詩篇などからの流用を含む粗悪な偽版である。

【画像】『1565年向けの暦』の扉 *1

正式名

  • Almanach pour l'An 1565. Composé par M. Michel Nostradamus docteur en Medecine, de Salon de Craux en Prouence.
    • L'annee de grace sera à plusieurs peuples,/ En amitié seront les paysans,/ La terre aura en soy beaucoup de meubles/ Dont en maintz lieux en seront suffisans.
    • A Paris. Pour Thibault Bessault, demourant en la rue S. Iaques, à l'ensaigne de l'Elephant.
    • Avec Permission.
  • プロヴァンス州サロン・ド・クローの医学博士ミシェル・ノストラダムス師により構成された1565年向けの暦。
    • 「多くの人々に恩恵がある年、/農民たちは仲良くしているだろう。/大地は自らの内に抱えるだろう、/多くの場所で彼らが満足するたくさんの動産を。」
    • パリにて。ゾウの旗印を持つサン=ジャック通りの住民チボー・ベソーによる。
    • 特認付き。

構成

 32葉(64ページ相当)からなる。
 四行詩を冠した暦(カレンダー)と散文からなるが、本物を模倣した偽版に過ぎない。後で見るように、予兆詩には百詩篇からの剽窃も混じっている。

収録された予兆詩

 以下の予兆詩のうち、6月向けまでは出典を特定できないが、単なる捏造であろう。7月以降は既存の百詩篇からの転用を部分的もしくは全面的に含んでいる。原文は扉に印刷されている「全般向け」を除き、全てエルマー・グルバー(未作成)による転記を引用させていただいた *2

全般向け

L'annee de grace sera à plusieurs peuples,
En amitié seront les paysans,
La terre aura en soy beaucoup de meubles
Dont en maintz lieux en seront suffisans.

多くの人々に恩恵がある年、
農民たちは仲良くしているだろう。
大地は自らの内に抱えるだろう、
多くの場所で彼らが満足するたくさんの動産を。

  • 上の正式名の節から明らかなように、この詩は「全般向け」と銘打たれているわけではない。ただし、本物の暦書を模倣している以上、そのつもりで書かれたのだろう。楽観的な見通しが語られており、本物の1565年全般向けと好対照である。

1月向け

Le grand tempeste par son commencement
Fera dommage pour le bien de la terre,
Elle n'aura son cours abondamment
Car le soleil fera son ours grand erre.

大嵐が最初から
大地の恵みを損なわせるだろう。
それ(大地)は水の流れを潤沢には持たないだろう。
太陽がその熊に大いなる旅をさせるだろうから。

2月向け

L'esmotion du peuple cessera
Vers l'Orient des haynes animees
En Languedoc la guerre ne sera
Et confonduz seront les grands armees.

人々の暴動が止むだろう。
東方への憎悪が活気付く。
ラングドックで戦争はなく、
大軍隊が困惑するだろう。

3月向け

Par le beau temps qui nous sourmontera
Les bleds seront en fort belle apparence,
Les grands frimats qui par ce mois sera,
Nous causeront fiebures & pestilences.

我々を乗り越えるであろう美しき時代を通じ、
小麦は非常に美しい外観を呈するだろう。
この月を通じて生じるであろうひどい霜は、
我々に熱と悪疫を惹き起こすだろう。

  • fiebures は意味不明。ここでは fiebvres と読んで fièvres と同じように理解した。

4月向け

Vers les rivages de la mer Ligustique
Seront rasez plusieurs beaux bastimens
Et mis a mort seront tout le Iniques
Par leurs messaictz don't auront sentimens.

リグーリア海の岸辺の方で
多くの美しい建物が壊されるだろう。
そして不正な者たちが全て死ぬだろう、
彼らが自覚するであろう悪行によって。

  • 4行目の messaictz は意味不明。mesfaicts と見なした。

5月向け

La machination de quelque grand Seigneur
Ne tombera à sa subiection
Et desconfit sera par la rigueur
De son prochain par sa protection

さる偉大な領主の陰謀が
その臣下に降りかかることはないだろう。
そして大敗を喫するだろう、
彼が贔屓にしていた隣人の残酷さにより。

6月向け

La langue estrange sera interrompue
Querelles bruitz sera de main levee
La pard fureuer ne sera corrompue
Des gens malings en leur force levee.

異国の言語が中断されるだろう。
高く挙げられた手による喧騒や騒乱があるだろう。
激昂した雌豹は堕落させらることはないだろう、
悪意ある人々の掲げられた力で。

  • pard は「雄豹」だが、冠詞から parde と同一視した。

7月向け

Loing vaguera par frenetique teste
Et delivrant un grand peuple d’impos,
Le penultiesme du surnom du Prophete
Prendra Diane pour seiour & repos.

譫妄〔せんもう〕の頭で遠くへと彷徨し、
多くの人々を租税から解放するだろう。
予言者の異名をとる最後から二番目の者が、
ディアナを滞在と安息のために捕らえるだろう。


8月向け

Les exilez transportez dans les Isles
Qui de parler ne seront supportez
Seront conflictz, & mis deux à franchises
Pour le renom qui leur sera portez.

亡命者達は島に運ばれる。
彼らは話すことを支持されないだろう。
彼らは衝突し、二人は解放されるだろう、
彼らが持たされる名声のために。

  • この詩の前半は百詩篇第1巻59番(未作成)を改変している。3行目も影響を受けてはいるが、2人が火刑に処せられるという第1巻59番とは正反対の結果になっている。

9月向け

Le leopard au ciel estend son oeil,
Un aigle autour du soleil voit s'esbatre
Et par le monstre que sera le Soleil
Seront nombrez plusieurs gens pour combatre

豹が空に目を向け、
一羽の鷲が太陽の周りを飛び廻るのを見る。
そして太陽であろうところの怪物によって、
多くの人々が戦うために計上されるだろう。


10月向け

Lors que Saturne sera hors de servage,
Leane sera par fleuves inundees
De sang troyen sera son mariage,
et [sic.] paix sera aux princes demandees.

サトゥルヌスが束縛から外れるであろう時に、
ロバは氾濫した河川によって存在するだろう。
結婚はトロイアの血に属するだろう。
そして平和が求められた君主たちにあるだろう。

  • この詩の1、3行目は百詩篇第5巻87番(未作成)の流用で、2行目も少し一致する。なお、その改変で加えられた Leane は意味不明。Le asne と見なして「ロバ」と訳したが、それなら L'asne となるのが正しい。あるいは、中期フランス語の Leans (その場所で、内部で)なのかもしれない。

11月向け

Tard le Monarque se viendra repentir
De n'Avoir mis à mort son adversaire
Mais viendra bien à plus haute consentir,
Que tout son sang à mort fera deffaire.

遅れて君主は悔やむことになるだろう、
彼の敵を死なせなかったことを。
しかし、彼はより高き女性に同意することになるだろう、
彼の血筋全てを死なせるであろう時に。


12月向け

Mars & le sceptre se trouvera conioinct,
Dessouz cancer calamiteuse guerre
Et peu apres le Roy aux princes ioinct,
Sera long temps pacifiant la terre.

マルスと王杖が交会するだろう、
巨蟹宮の下で。凄惨な戦争。
少し後で王は諸侯と結びつき、
長らく地上に平和をもたらすだろう。


所蔵先

 エルマー・グルバー(未作成)が私蔵している。

 かつてはブリュネの書誌でも言及されていたが、そこでは出版業者の名前がチボー・ベルジェ(Thibault Berger)と記載されるなど、不正確な伝聞に基づいていた。フィリップ・ルヌアールのパリ出版業者に関する研究では、正しく記載されてはいたが、従来その情報は広く知られるには至っていなかった。
 グルバーが入手し紹介したことは、従来の伝聞の誤りを正す上で貴重であった。


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