グランド・クロス

  グランド・クロス は、西洋占星術におけるグループ・アスペクトのひとつで、四つの感受点(惑星や昇交点、降交点など)が十字形に並ぶことを言う。隣接する感受点同士で4つの矩(90度のアスペクト)が形成され、向き合う感受点で2つの衝(180度のアスペクト)が形成されることから、占星術上非常に悪い星位であるとされる。

 特にほとんどの惑星が不動宮(金牛宮、獅子宮、天蠍宮、宝瓶宮)に集まった1999年8月18日頃のグランド・クロスは、五島勉の『ノストラダムスの大予言II』で副題に用いられ、本編でも「黙示録の十字」として強調されたため、日本人の信奉者には恐怖の大王と結びつける者たちが現れた。

科学的視点

 『MMR』では、グランドクロスによって地球が四方から諸天体の引力の影響を受けることが、地球に壊滅的な影響をもたらすという説を強調していた。また、こうした引力の影響がポールシフトの誘因になるとする論者もいた。

 実際には、他の惑星が地球にもたらす潮汐力がもたらす影響はほとんど無視してよいレベルであるという反論が、1999年以前からなされていた(他の天体から受ける潮汐力の影響は距離の3乗に反比例して小さくなるため)。
 なお、1999年8月には異常な潮汐力などによって引き起こされた現象は、何も起こらなかった。8月17日のトルコ大地震がそれだとする論者に対しては、山本弘が反論している *1
 当然にしてというべきか、国立天文台もグランド・クロスがもたらす影響について「迷信」と一蹴している *2

頻度

 グランド・クロスがどの程度の頻度で起こるのかについてだが、占星術師のフェニックス・ノアは1999年8月のものだけは別格と位置付けていたものの、グランド・クロス自体は数十年単位で起こるものだとしていた *3
 宇宙科学研究所の吉川真によれば、13年に一度くらいおこりうるという *4 。その算定はどの宮に入っているかを考慮しておらず、十字形になっていても四つの宮に集約されていない事例が含まれるので、実際の頻度はもう少し落ちるだろうが、占星術師であるフェニックス・ノアのコメントと大筋で一致しているとは言えるだろう。

 ちなみに厳密に言えば、1999年8月18日頃のグランド・クロスは冥王星が不動宮に入っていない。フェニックス・ノアは冥王星だけが別になることで特殊な影響を及ぼすとしていたのだが *5 、後にグランド・クロスとノストラダムス予言を結びつけた論者たちからは、こういう細かい点は無視された。
 このように特定の感受点が外れていても、四つの宮に集まる型のグランド・クロスが成立したと見てよいのなら、起こる頻度は上がるはずである。

 数十年に一度かそれよりは頻繁に起こりうる星位について、そのたびに何かあるといっていれば、中には大事件と重なることもあるだろう。しかし、人類破滅の危機が数十年単位で訪れ続けているわけでもなく、これを殊更何か重大なシンボルであるかのように強調するのは、自分が生きている時代だけを特別扱いしたがる信奉者にありがちな勘違いの一種にすぎないだろう。

ノストラダムス

 上で見たように信奉者たちにはグランド・クロスとノストラダムス予言を結び付けようとする者もいる。もちろん、グランド・クロスになれば複数の感受点の間で衝や矩が成立するので、衝や矩に何度となく言及していたノストラダムスが、間接的に意識した可能性は否定できない。しかし、直接的に強調した形跡は全く確認できず、あくまでも恣意的な解釈の結果にすぎないことは強く意識されるべきだろう。
 ノストラダムスがむしろ重視していたのは、土星と木星の大会合など、イスラーム世界経由の伝統的な占星術による概念であった。

 ちなみに、1999年8月のグランド・クロスを恐怖の大王と結びつける考え自体は、海外のフランク・スタッカートなども提唱していた。しかし、彼の場合、あくまでも太陽、土星、天王星、火星という四つの感受点がグランド・クロスを形成すると述べたにすぎない *6
 冥王星を除く全ての惑星が8月18日に四つの宮に集まり、それは『ヨハネの黙示録』でも予言されていた「黙示録の十字」なのだと強調したのはフェニックス・ノアであった。
 さらに当時のヨーロッパは太陰暦だったので8月18日は当時の「7月」に含まれるという史実に反する紹介を行って、「黙示録の十字」と「1999年7月」との間に強い関連性があるかのように紹介したのは五島勉であった。伝言ゲームの要領で変質していったことがよく分かる。
 このような見解を無批判に継承することには慎重であるべきだろう。


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