ミシェル・ノストラダムス師の予言集 (ピエール・メニエ、刊行年不記載)

 パリの出版業者ピエール・メニエは、刊行年の記載のない『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』を出版したことがあった。従来、1588年頃の出版と考えられていたが、実際には1598年以降に出版されたようである。

【画像】メニエ版の扉 *1

正式名

  • Les Propheties de M. Michel Nostradamus ; Dont il y en a trois cens, qui n'ont encores esté imprimées, lesquelles sont en ceste presente edition.
    • Reueues & additionnées par l'Autheur pour l'An mil cinq cens soixante & vn, de trente neuf articles à la derniere Centurie.
    • Par Pierre Ménier, portier de la porte Sainct Victor.
  • 未刊であった300篇を含むミシェル・ノストラダムス師の予言集。
    • 著者によって最後の百詩篇の39篇に1561年向けの改訂・追補が行われた版。
    • サン・ヴィクトル門の門番ピエール・メニエによる。

 上記タイトルは上掲の画像とパトリス・ギナール(未作成)の書誌を参照したものである。ジャック・アルブロンが示している扉の写真も不鮮明ながら、同じように見える *2 。ギナールやアルブロンが示す標題紙には木版画と Par の間に何も見えない。
 だが、カール・フォン・クリンコヴシュトレム(未作成)エドガー・レオニミシェル・ショマラは、メニエの名前の上に A と書いている *3 。これは A Paris (パリにて)の Paris が脱落したものらしい。
 ロベール・ブナズラの書誌では普通に A PARIS と書かれている *4

 上の画像はマザラン図書館のマイクロフィルムからのコピーだが、Aは見えない。ただし、Aの断片にも見える一方、不鮮明な汚れのようにも見えるインクの痕跡が見えなくもない。
 コピーが不鮮明なせいもあり、実物がどうなっているのかを実見していないので断定はしかねるが、出版地を記載した部分が削れるなどして見えにくくなっているだけの可能性もある。

【画像】 A Paris [?] に関する仮定的な復元

内容

 1557年3月1日付となっている第一序文(セザールへの手紙)、百詩篇第1巻1番から第5巻100番、第6巻1番から74番、第7巻72番から83番、補遺篇の方の第8巻1番から6番。ただし、補遺篇5番は前半2行が脱落している。

 1588年から1589年にパリで出されたものとほとんど同じだが、それらの第6巻が71番までしかなかったのに対し、こちらは74番までとなっている。

刊行年

 カール・フォン・クリンコヴシュトレムは1588年頃と推測し、エドガー・レオニミシェル・ショマラロベール・ブナズラピエール・ブランダムールらにそのまま踏襲されてきた。この推測は、同じような特色を持ち、なおかつ刊行年が明記されているニコラ・ロフェ未亡人版(1588年)、ピエール・メニエ版(1589年)、シャルル・ロジェ版(1589年)などと比較しても妥当なものと思われた。
 レオニの場合、この刊行年のないメニエ版を一連の版の基準におき、他はメニエ版のコピーと推測していた。彼の場合、1588年版であるロフェ未亡人版も実際には1589年の刊行だろうとしていた *5

 こうした定説に異議を申し立てたのはジャック・アルブロンである。彼は住所表示に着目し、パリ出版業史研究において、ピエール・メニエが「サン・ヴィクトル門の門番」と名乗るのは1598年以降と特定されていることを指摘し、第6巻に74篇を含むこの版は、1598年以降に増補されたものだろうとした *6
 この版を所蔵しているマザラン図書館の目録でも、フィリップ・ルヌアールの出版史研究に基づく形で1598年以降と位置付けられている *7

 パトリス・ギナールは1610年ピエール・メニエ版の痕跡を見つけ出し、それと同一と推測したアンジェ市立図書館の伝本と、この刊行年の記載のないメニエ版の原文比較を行い、後者の方がより後の時代であろうと推測し、1612年頃と位置付けた。
 ピエール・メニエ1世の活動期間は1605年頃までなので、ギナールは刊行年の記載のない版を手がけたのはピエール・メニエ2世の方であろうと推測した *8

 ギナールの推測は一定以上の説得力を持っているように思われる。1612年という推定の当否はともかく、住所表示からするならば、少なくとも1598年以降と位置付けざるをえないだろう。

所蔵先

  • マザラン図書館


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