百詩篇第5巻100番

原文

Le boutefeu 1 par son feu attrapé,
De 2 feu du ciel 3 à 4 Carcas 5 & Cominge 6 :
Foix 7 , Aux 8 , Mazeres 9 , haut 10 vieillart 11 eschapé 12 ,
Par ceulx de Hasse 13 , des 14 Saxons 15 & Turinge 16 .

異文

(1) boutefeu : boute-feu 1644 1649Ca 1650Le 1668, boute feu 1588Rf 1600 1605 1610 1627 1649Xa 1716, Boute feu 1653 1665 1840
(2) De : Du 1588-89 1650Ri 1653 1665 1672
(3) ciel : Ciel 1611B 1672
(4) à : a 1628 1672, par 1649Ca
(5) Carcas : carcas 1588-89, Cartas 1605, Tartas 1672
(6) Cominge : cominge 1588-89 1590Ro, Gominge 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716
(7) Foix : Fraux 1588-89
(8) Aux : Ausch 1590Ro, aux 1649Ca
(9) Mazeres 1557U 1557B 1568A 1568B 1589PV 1590Ro 1649Ca 1650Le 1668 : Mazere T.A.Eds. (sauf : Mazetes 1588-89, Mazete 1627)
(10) haut : haux 1611B
(11) vieillart : viellart 1557B, vieillard 1588Rf 1589Rg 1644 1649Ca 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1672 1840, viellard 1589Me
(12) eschapé : eschape 1611A, escapé 1672
(13) Hasse : Hess 1672, Hesse 1772Ri
(14) des : de 1650Le 1668 1672
(15) Saxons : Sexe 1672
(16) Turinge : de Turinge 1672

校訂

 3行目の Carcas について、ブリューノ・プテ=ジラールジャン=ポール・クレベールはCarcas. と読んでいる。Carcassonne の略であろうことはほぼ疑いないところなので、十分に妥当だろう。
 ガランシエールの校訂に見られるタルタス(Tartas)も確かに実在するフランスの町だが、ここでそれを採用すべき必然性に乏しい。

日本語訳

火付け役が自分の火にまかれる、
天からの火により、カルカソンヌとコマンジュ方面の
フォワ、オーシュ、マゼールにて。高位の老人は逃がされる、
ヘッセン、ザクセン、テューリンゲンの人々によって。

訳について

 山根訳はおおむね問題はない。

 大乗訳も底本の異文に基づく直訳としては一応許容範囲とは言えるが、3行目「フォアクス オーチ マザレで老いた人は逃れ」 *1 は、固有名詞の読み方を棚上げするにしても、haut (高い、高位の)が訳されていない。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは「タルタス、コマンジュ、フォワ、オーシュ、マゼールはフランスの町で、ヘッセン、ザクセン、チューリンゲンはドイツ(Germany)の地方である」としか注記していなかった *2
 それ以降、20世紀後半に入るまで解釈する者はいなかったようである。少なくとも、バルタザール・ギノーテオドール・ブーイフランシス・ジローウジェーヌ・バレストアナトール・ル・ペルチエチャールズ・ウォードマックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)アンドレ・ラモンロルフ・ボズウェルらの解釈書では触れられていない。

 エリカ・チータムは未来における戦争の情景の可能性を示した *3

 セルジュ・ユタンは1942年にフランス南西部がドイツ軍に占領されたこととした *4

同時代的な視点

 ピーター・ラメジャラーは、フランス南西部で見られた驚異が神聖ローマ帝国内の何らかの事件の予兆となることを描写したものとしたが、その事件は特定できないとした *5

【画像】関連地図。フランスの地名がコマンジュ以外都市名なのに対し、ドイツの地名はいずれも地方名。


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