contrade

 contrade はプロヴァンス語 contrada (地方)のフランス語化。
 エドガー・レオニピエール・ブランダムールジャン=ポール・クレベールが指摘している*1
 プロヴァンス語はもとより、現代イタリア語にも同系列の contrada という語がある。

 アナトール・ル・ペルチエは古フランス語で「地方」の意味としていたが、LAF には載っていない。マリニー・ローズは contrée の原初の形としていた。
 語源などには触れていないが、ベルナール・シュヴィニャールブリューノ・プテ=ジラールも同じ立場である。テオフィル・ド・ガランシエールの英訳でも Countries があてられている*2

 いずれにしても、語学的な素養のある論者たちは一致して「地方」(région, contrée)の意味としている。

 それに対し、日本人論者たちは似たような綴りの単語に引きつけて「中心」(高橋良典)、「伝染病」(加治木義博)、「物語」(ミカエル・ヒロサキ)などとめいめい勝手な訳語を当ててきたことは山本弘が指摘したとおりだが*3、国際的に見たときにはきわめて特異な現象であることを確認しておきたい。
 なお、山本はロバーツの邦訳書で「都市」と訳されていることをもとに、ヘンリー・C・ロバーツが cité に引きつけて曲解したと推測していたが、原書ではきちんと countries と英訳されている。

登場箇所



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用語
最終更新:2010年08月31日 21:42

*1 Leoni [1961], Brind’Amour [1996], Clébert [2003]

*2 Le Pelletier [1867b], Rose [2002c], Chevignard [1999], Petey-Girard [2003], Garencieres [1672]

*3 山本『トンデモノストラダムス本の世界』文庫版、p.378