Nostradamus trahi

 『裏切られたノストラダムス』(Nostradamus trahi)は、エリザベート・ベルクールの著書。
 1981年にパリのロベール・ラフォン社(Robert Laffont)から出版された。

 前年に出版されたジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌの『歴史家にして予言者ノストラダムス』(Nostradamus, Historien et Prophète)がベストセラーになったことを受け、フォンブリュヌ親子のセンセーショナルな予言解釈は、ノストラダムスの真意を「裏切る」ものだと批判する立場から論を進めている。


【画像】 Nostradamus trahi

正式名

  • Nostradamus trahi, suivi du texte original et complet des dix Centurie, édition de 1605
  • 裏切られたノストラダムス。1605年版の詩百篇全10巻の原典に従った書

構成

 冒頭にアルベール・スロスマンの長い序文が添えられている。

 続いて、ベルクールによる本文において、マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)の著書が改定の際に大幅な改変が行われているに関わらず、あたかもほとんど改定されていないかのように偽っていることなどを批判している。

 ほかに解釈の内容についても、様々な観点から不適切さを指摘している。

 最後に付録として、1605年版の『予言集』から再録されたと称する原文の影印版を掲載している。
 この原文には詩百篇第1巻から第10巻までの四行詩が収録されている。

コメント

 ベルクールの論は、部分的に賛同できる箇所もあるが、その解釈は実証的な研究成果と一致しない箇所も多い。

 一例を挙げるなら、詩百篇第4巻72番Artomiquesを造語として、古代ギリシアの占い師たちと関連付けているが、実証的にはアレコミキ人(Arécomiques)と関連付けるのが一般的である。

 信奉者側でも、ヴライク・イオネスクは短い書評で酷評している。
 ただ、ベルクールが先に、暗にイオネスク解釈を批判していた事実があるだけに、イオネスクによる酷評は少々差し引いて考える必要があるだろう。

 また、「1605年版」と称する原文については、ロベール・ブナズラから「1980年代に成功した著者の、誤った主張というレベルを遥かに超える悪ふざけ」*1と酷評されている。

(一部を都合により一定期間コメントアウト)

 しかしながら、この原文を1605年版に基づくものとして転記する形で、カナダでは Les Prophéties de Michel Nostradamus, JCL, 1989が出版された。また、その校正に携わったミシェル・デュフレーヌは、その原文に登場する単語全てをまとめた用語事典Dictionnaire Nostradamus, JCL, 1989を出版した。

日本語版



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関連書
最終更新:2016年12月23日 20:52

*1 Benazra [1990] p.575