百詩篇第5巻62番

原文

Sur les rochers 1 sang on verra 2 plouuoir 3 ,
Sol Orient. 4 Saturne Occidental 5 :
Pres d'Orgon 6 guerre 7 , à Rome grand mal voir,
Nefz parfondrees 8 & prins 9 le Tridental 10 .

日本語訳

(1) rochers : rouchers 1568B 1568C 1568I, Rochers 1672
(2) on verra : on les verra 1605 1628 1772Ri 1840
(3) plouuoir 1557U 1557B 1568 1588-89 1589PV 1627 1649Ca 1650Le 1668 1772Ri 1840 : pleuuoir T.A.Eds.
(4) Orient. 1557U : Orient, T.A.Eds.(sauf : Orient 1589PV 1610 1627 1644 1650Ri 1716, Oilent 1600)
(5) Occidental : occidental 1660
(6) d'Orgon : Orgon 1557B 1589PV 1649Ca
(7) guerre : Guerre 1672
(8) parfondrees : parfondree 1588Rf 1589Rg, parfondre 1589Me, parfondées 1627 1644 1650Ri 1650Le 1668, profondées 1653 1665, parfondreées 1772Ri
(9) prins : print 1589PV
(10) le Tridental: Tridental 1867LP

(注記)1627 は次の詩と連続した上で詩番号の打ち方が変則的になっている。

校訂

 2行目 Orient. は、Occidental に合わせるために略していた可能性もあるのではないだろうか。ただし、ピエール・ブランダムールブリューノ・プテ=ジラールは、ヴィルギュル(カンマ)をポワン(ピリオド)に直していない。

日本語訳

岩々の上に血が雨下するのが見られるだろう。
東方の太陽、西方の土星。
オルゴンの近くで戦争、ローマでは大いなる災厄を見る。
船舶は水底に沈められ、三叉の衝角を持つ船は奪われる。

訳について

 Tridentalを「三叉の衝角を持つ船」と訳すのは、ピエール・ブランダムールの読み方に従ったもの。当然、ほかの訳もありうる。

 大乗訳も山根訳も4行目が問題となる。
 山根訳4行目「船は沈没 制海権は奪われる」 *1 は、Tridentalを「制海権」と訳すことに、議論の余地がある。

 大乗訳は4行目「船は漂流し三つ又槍がおかれる」 *2 が不適切。parfondrer を「漂流する」と訳した理由が不明。ヘンリー・C・ロバーツは be cast away (難破する)と訳しており、許容範囲内だろう。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは、オルゴンを意味不明として解釈していない代わりに、Tridental は、「ネプトゥヌス」号という船(a ship called Neptune)のことだろうとした *3

 その後、20世紀に入るまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、ジャック・ド・ジャンバルタザール・ギノーD.D.テオドール・ブーイフランシス・ジローウジェーヌ・バレストアナトール・ル・ペルチエチャールズ・ウォードの著書には載っていない。

 マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)は未来の戦争の情景とし、Tridental は海軍国であるイギリスとした *4

 ロルフ・ボズウェルは英訳をつけただけで解釈はしていなかった。その英訳の中では、Tridental がトレンティーノ(Trentino)となっている *5

 アンドレ・ラモンは当時進行中だった第二次世界大戦に関する予言とし、ローマで見られる大悪をムッソリーニのこととした。Tridental はイギリス海軍の艦船のこととした *6

 五島勉は、Tridental とは、アメリカ海軍のトライデント(Trident)原子力潜水艦と、それが搭載しているトライデントミサイルのこととした。オルゴンは中性子爆弾の基地建造が予定されているガスコーニュ地方のことで、古くはオルゴン地方と呼ばれていたと主張した *7

懐疑的な見解

 フランスの地名でオルゴン(Orgon)というのは、DNLFによれば、ブーシュ=デュ=ローヌ県の1箇所しかなく、ガスコーニュ地方の古称とする見解は裏づけが取れない。

同時代的な視点

 ピエール・ブランダムールは、1行目は凶兆を、2行目は太陽と土星が衝となる星位を示しており、それが後半に描かれた戦争や災害の暗示になっているとした *8

 ピーター・ラメジャラーは、2003年の時点では、『ミラビリス・リベル』が描くイスラーム勢力の侵攻に関する予言を下敷きとしており、オルゴンはアルピーユ山脈から北上する場合の重要な通過点に位置しているとしていた。また、血の雨については、当時いくつもの言及があり、例としてリュコステネスが報告した1553年にエルフルトで降った血の雨を挙げた *9 。しかし、2010年になると、「出典不明」とし、解釈を事実上撤回した *10



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