百詩篇第9巻9番

原文

Quand lampe 1 ardente de feu inextinguible 2
Sera trouué 3 au temple 4 des Vestales,
Enfant trouué 5 feu, eau passant par trible 6 :
Perir eau Nymes 7 , Tholose 8 cheoir les halles 9 .

異文

(1) lampe : Lampe 1672
(2) inextinguible : inextinquible 1653 1665
(3) Sera trouué : Sera trouuée 1594JF 1605 1628 1649Xa 1649Ca 1650Le 1668 1712Guy, Sera treuué 1627
(4) temple : Temple 1611B 1672 1712Guy
(5) Enfant trouué : Enfant trouue 1568A, Enfant treuué 1627, Enfant trouvée 1672 1840
(6) trible 1568A 1568B 1568I 1590Ro 1653 1665 : crible T.A.Eds.
(7) Perir eau Nymes : Nisme eau perir 1594JF, Nismes eau perir 1605 1628 1649Xa 1649Ca 1672, Perir eaù, Nismes 1650Le
(8) Tholose : Tolose 1590Ro 1611B 1627 1660 1665, Tholouse 1594JF, Tholouse 1672, Toulouse 1712Guy
(9) halles : alles 1644 1650Ri, Halles 1672

校訂

 3行目の最後の trible は古語辞典の類にも見当たらない。ジャン=ポール・クレベールピーター・ラメジャラーによって行われている crible (篩)の誤植という指摘は、文脈から考えても妥当なものだろう。実際、上の異文欄から明らかなように、初出である1568年版の中でも、1568Cでは crible と綴られている。

日本語訳

消えない火の灯るランプが
ウェスタリスの神殿で発見されるであろう時、
水が網目状に流れ、幼子が死体で発見される。
ニームは水で破壊され、トゥールーズでは市場が崩れる。

訳について

 3行目は、普通「火」と訳す feu をラテン語 fatutus から「死んだ」と訳し、crible を格子状(grille)の意味にとらえたジャン=ポール・クレベールの読み方に従った。 feu を「死んだ」と訳すのはやや強引だが、故人を表すときにつける feu に近い意味ということなのだろう。
 passer au crible は「ふるいにかける」ということなので、3行目は「発見された幼子が火と水をふるいにかけ」といった訳も可能だろう。

 大乗訳は3行目「子供は細かい目のふるいを通って 走っている水をみつける」 *1 が若干不適切。feu が訳に反映されていない。また、trouvé は過去分詞なので「~される」とするのが一般的。実際に、元になったヘンリー・C・ロバーツの英訳でも A child shall be found, water running through a sieve *2 と受動態で訳されている(ただし、この点はピーター・ラメジャラーのように、aura trouvé の意味にとって能動的に訳す者もいる)。feu が訳されていないのはロバーツの英訳でも、その元になったガランシエールの英訳でも同じ。

 山根訳の3行目「幼児が火の中に発見され 水がふるいにかけられる」 *3 は、若干言葉を補っているが、許容される意訳の一つといえるのではないだろうか。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは、古代ローマのウェスタリスたちが名誉を汚す行為に及んだときに、わずかなパンと水、燃えている松明を持たされて穴倉に追いやられたというエピソードを引き合いに出し、そのランプが発見されることと後半の災害を関連付けた *4

 バルタザール・ギノーは最初の3行を百詩篇第5巻66番と関連付けつつ、神秘思想に関するものとした。その上で、描かれているランプが発見されるのとほぼ同じ時期にニームやトゥールーズが蒙る被害が4行目に描かれているとし、百詩篇第9巻37番と関連付けた *5


 エリカ・チータムは1557年に起きたガルドン川大洪水の描写とした *6

 セルジュ・ユタンは「消えない火が燃える」というのは原爆の描写ではないかとした *7

同時代的な視点

 エドガー・レオニは、一つの可能性としてニームのディアナ神殿が元になっている可能性を挙げ、1557年9月のガルドン川大洪水とも関連付けた。
 ロジェ・プレヴォピーター・ラメジャラージャン=ポール・クレベールもこれを踏襲した。このときの大洪水は、トゥールーズやニームに大きな被害をもたらしただけでなく、ニームでは地中に埋もれていた古代遺跡をいくつも露出させる効果もあったという *8 。プレヴォやクレベールは百詩篇第10巻6番などとの関連性も指摘している。

 なお、「消えないランプ」のモチーフは異常なようだが、古代からよく知られたモチーフだった *9


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