予兆詩集(les Présages)は、
1605年版以降の予言集にしばしば収録された詩集。
表記
Présagesについて、日本ではカタカナで「プレサージュ」と書かれることがしばしばだが、フランス語読みとしては「プレザージュ」/preza(ː)Ʒ/ が正しい。
英語読みなら「プレシジ」/présiʤ/である(名詞の場合。動詞の場合は「プリセイジ」 /priseiʤ/ もあり)。
つまり、日本のノストラダムス文献に見られる「プレサージュ」は、フランス語読みとも英語読みとも異なる慣用読みであり、不適切と言えるだろう。
なお、スペイン語、イタリア語の場合は presagioで綴り自体が異なる(前者の発音は「プレサヒオ」、後者の発音は「プレザージョ」に近い)。
なぜこのような誤読が定着したのかは不明だが、一つの可能性としては、日産プレサージュの存在を挙げることができる。
つまり、既存の商品名などに含まれていた慣用読みに引きずられたのではないだろうか。
【画像】『新型プレサージュのすべて (ニューモデル速報 第374弾) 』
初出
本来は
暦書に収録されていたその年全般向けや各月向けの四行詩を、1605年版『予言集』の出版業者(名前は不明)が『予兆詩集』としてまとめ直したもので、ノストラダムス自身がそのようにまとめていたわけではない。
なお、1605年版には、より後の時代に刊行されたという偽年代版説もあり、その場合は、1620年代末から1630年頃に刊行された
ピエール・デュ・リュオー版が初出になるが、ここではその点に深入りしない。
構成
1605年版で登場したときのタイトルは「ノストラダムス師の作品群から引用された1555年から1567年までの予兆詩集」(Presages tirez de ceux faictz par M. Nostradamus, és années 1555. & suyuantes iusques en 1567.)で、以降、主な版にはこのタイトルも引き継がれた。
従来、141篇からなる詩集と認識されていたが、これは1605年版の出版業者が、
ジャン=エメ・ド・シャヴィニーの『フランスのヤヌスの第一の顔』から孫引きしたため、シャヴィニーが収録していなかった詩篇については省略されていたためである。
形式と評価
予兆詩は基本的に1行10音綴の四行詩という形式のため、ノストラダムスの主作品である「
詩百篇集」と形式的には似通っている。
しかし、詩百篇に比べて断片的なイメージを羅列する傾向が強く現れており、形式的に共通点はあれども、詩百篇に比べたときには文学的に劣ると評価されている。
対象時期
予兆詩集に収録された各詩は年月を指定されており、該当する月の概要となる予言として執筆されたと考えられる。
ノストラダムス本人は、これを対象時期以外にも適用してよいとは全く語らなかったが、シャヴィニーは「100年ほど」という有効期間を勝手に設定した。
この有効期間は、
1649年ルーアン版の『予言集』で改竄され、取り払われた。
その結果、現在の信奉者たちは過去、現在、未来の様々な事件に自由に当てはめている。
実証的な視点からは、ノストラダムスが対象時期についてのイメージなどを列挙したものとしか捉えようがなく、詩百篇のように具体的なモデルを特定することは、多くの場合困難であろうと思われる。
全訳
予兆詩の補遺
正式な予兆詩全154篇のほかに、当時の非正規の暦書に載っていた予兆詩が存在する。
このうち、英訳版『
1564年向けの暦』に掲載されていた予兆詩は、英訳しか現存していないとはいえ、1556年向けの予兆詩が転用された可能性もある重要な詩である。
その一方、『
1565年向けの暦』(偽版)に収録された予兆詩は、単なる捏造と理解すべきものだろう。
上に挙げた2つの暦書の記事には、該当する予兆詩の原文と対訳を掲載している。
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最終更新:2010年08月11日 22:26