ノストラダムスの肖像画 (ドーデ)

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基本データ

作品名
なし
作者
ドーデ(Daudet)
公刊時期
1691年頃
様式
銅版画
サイズ
8.6 x 14.4 cm(収録文献のサイズ。多少の誤差あり)
収録文献名
『予言集』1691年頃のリヨン版

*2

コメント

 肖像画の下の四行詩はこう書いてある。

Dieu se sert icy de ma bouche
Pour t'anoncer la verité
Si ma prediction te touche
Rends grace à sa Divinité

ここで神は我が口をお使いになる、
汝に真実を告げるために。
もしも我が予言が汝の心を動かすなら、
神へと感謝なさるがよい。

 この詩句は、1668年アムステルダム版『予言集』に収録された先行する肖像画のラテン語の標語に触発されたものらしい *3
 作者は不明だが1行8音節で、ノストラダムスの四行詩が常に1行10音節か12音節であったこととは一致していない。

二つの顔を持つ護符

 五島勉は『ノストラダムスの大予言V』で、この肖像画に書かれている四行詩はノストラダムスの手書きらしいとし、伝説的な「二つの顔を持つ護符」だとした。
 伝説の内容を簡潔に要約すると、晩年に友人たちからお守りをつくってくれと頼まれたノストラダムスがカバラの秘儀を駆使してお守りを作った。それは表面上何の変哲もない四行詩だったが、心の清い人の願いを叶えるかわりに、心の汚れた人には破滅を招くという恐ろしい効果をもっていた。そして実際に両極端な効果が現れるのを目にした友人たちは、「二つの顔を持つ護符」と呼んで恐れおののき、封印してしまったのだという *4

 しかし、そのような伝説自体、海外の文献では全く見られない。
 また、五島はセルジュ・ユタンの『ノストラダムス予言集』からこの肖像画を転載し、ユタンがその護符をどこかから見つけ出したと述べていたが、ユタン自身は「ノストラダムスの肖像画、1668年」(Portrait de Nostradamus, 1668.)としか注記していない *5 。それは明らかにアムステルダム版の肖像画と取り違えたもので、出典自体を正しく認識していなかったとしか思えないが、伝説的な護符を発見したはずの人物がそのようなミスをするとはまず考えられない。
 ゆえに、誰が作成したのかもはっきりしない17世紀後半の四行詩を護符などと持て囃すのは、実証的に見た場合には全く支持できない。

派生

 バルタザール・ギノーも解釈書『アンリ2世からルイ大王までの歴史とノストラダムス予言集との一致』の中で、書斎に腰掛けるノストラダムスの肖像画と四行詩を収録したが、こちらは署名がソーヴ(Sauve)となっている。また、『予言集』1697年版でも使われたが、こちらは署名が全くない。
 3つの版画は似ているものの、うしろの本棚などを見ると違いは明らかで、そのまま転用したわけでないことが分かる。

【画像】ギノー版(左)と1697年版(右) *6


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