ミシェル・ノストラダムス師の予言集 (1698年リヨン)

 『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』は1698年にもリヨンで出版された。リヨンでは初版以来連綿と『予言集』が再版され続けてきたが、これを最後にリヨンでの再版は1984年まで途絶えることになる。

【画像】第一部の扉(左)と第二部の扉(右)*1

正式名

第一部
  • LES PROPHETIES DE M. MICHEL NOSTRADAMUS,
    • Dont il y en a trois cens qui n'ont jamais esté imprimées. Ajoustées de nouveau par ledit Autheur.
    • A LYON.
    • M. DC. LXXXXVIII.
  • ミシェル・ノストラダムス師の予言集。
    • 前述の著者によって新たに加えられた未刊の300篇を含む。
    • リヨン。
    • 1698年

第二部
  • LES PROPHETIES DE M. MICHEL NOSTRADAMUS.
    • Centuries VIII. IX. X. Qui n'ont encore jamais esté imprimées.
    • A LYON.
    • M. DC. LXXXXVIII.
  • ミシェル・ノストラダムス師の予言集。
    • 未刊であった百詩篇第八・九・十巻。
    • リヨン。
    • 1698年

 前年のリヨン版とほぼ同じである。ただし、cents → cens, été → esté, Ajoûtées → Ajoustées, Auteur → Autheur など、1697年版で現代に近づいた綴りが、幾分古い綴りに逆戻りしている。また、ローマ数字での90の書き方が XC と LXXXX とで違っている。

内容

 第一部は、第一序文(セザールへの手紙)、百詩篇第1巻から第6巻(ラテン語詩は含むが、補遺篇の百詩篇第6巻100番は含まない)、第7巻(43番44番を含む44篇)の順に収められている。
 また、第二部は、第二序文(アンリ2世への手紙)、百詩篇第8巻から第10巻(101番を含む)、第11巻(四行詩2篇と六行詩58篇)、第12巻(56番を除く10篇)が収められている。

 第12巻の末尾に「1665年版や1696年版よりも正確な最古級の諸版に全て従っている」(Le tout suivant les plus anciennes impressions plus correctes que celles de 1665 & 1696.)とある。

 最後のページにはノストラダムスの墓碑銘が掲載されている。

コメント

 そもそも、1696年版は現存しないので、巻末の「最古級の諸版」云々を額面通りに捉えることはできない。数字の順序を間違えたのだとしたら1669年リヨン版などの誤りかもしれない。他方、隣接する数字との取り違えなのだとしたら1697年リヨン版などの誤りなのかもしれない。

 確かに、原文をいくらか比較する範囲では、1665年リヨン版1697年リヨン版とは若干系統が異なるのは事実で、リヨン系でも、それらよりもさかのぼる版を参照した可能性は否定できない。

 刊行者名が書かれていないが、かつてアンリ・トルネ=シャヴィニーは1697年版と同じくジャン・ヴィレの出版としていた。たしかに字体なども似ているように見えなくもないが、前年に名前と住所を明記して出版した人物が、わざわざ匿名で出版する理由は不明である。
 実際、上述の通り、ローマ数字の綴り方なども異なるし、原文の系統にも違いがあるとなれば、ヴィレとは別の業者を想定する方が妥当なようにも見えなくない。

 前年の特認がヴィレ宛でなく、フランソワ・ルー未亡人宛になっていたことから、何か許認可上のトラブルがあって、仕方なくヴィレが匿名で再版したといったストーリーを仮定することは不可能でないが、根拠は全くない。
 ミシェル・ショマラロベール・ブナズラは、特に刊行者について推測はしていない。

所蔵先

  • ブザンソン市立図書館、カーン市立図書館、ドゥーエ市立図書館、ナント市立図書館、リヨン市立図書館ミシェル・ショマラ文庫、マザラン図書館、ポール・アルボー博物館、RAMKAT
  • ヴェネツィア市立図書館、ジュネーヴBPU、ローザンヌ州立・大学図書館、ルガノ州立・大学(スイス)、ヌーシャテル州立・大学図書館、国立マルチアーナ図書館、大英図書館、ウェルカム医学史図書館、ウプサラ大学、スロヴァキア国立Matica Slovenska、ハーヴァード大学、テキサス大学


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最終更新:2018年11月08日 12:57

*1 画像の出典:Chomarat [1976] p.14