百詩篇第7巻2番

原文

Par Mars ouuert1 Arles ne2 donra guerre,
De nuict3 seront les souldartz4 estonnés:
Noir, blanc5 à l'inde6 dissimulés7 en terre,
Soubz la faincte8 vmbre9 traistres10 verez11 & sonnés12.

異文

(1) ouuert : ouuers 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840
(2) ne : le 1600 1610 1611 1627 1644 1650Ri 1653 1660 1665 1716
(3) nuict : nuicts 1772Ri
(4) souldartz 1557U : soldats T.A.Eds.(sauf : souldarts 1557B, soldartz 1568, Soldats 1672)
(5) blanc : banc 1627
(6) l'inde : l'Inde 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1672 1840
(7) dissimulés : dissimulé 1649Ca
(8) faincte : saincte 1649Ca
(9) vmbre 1557U 1557B 1568 1590Ro 1611A : ombre T.A.Eds.
(10) traistres : trai 1557B, traistre 1649Ca 1672
(11) verez : verrez 1600 1610 1649Ca 1672 1716, veuz 1650Le 1668, veuez 1611B 1660, veus 1644 1650Ri 1653 1665 1840
(12) & sonnés : sonnez 1672

日本語訳

開かれたマルスに際し、アルルは戦争を与えないだろう。
夜に兵士たちは驚かされるだろう。
黒き者と白き者は藍色になって地面に隠される。
偽りの口実のもと、裏切り者たちは暴かれ、鐘が鳴る。

訳について

 4行目 verez(verrez)は普通は「(あなた方が)見るだろう」の意味だが、ラテン語の verare に由来する「暴かれる」の意味としたジャン=ポール・クレベールの読み方に従った。エドガー・レオニのように古フランス語に基づいて「一掃される」と理解しても文脈には合う可能性がある。

 山根訳3行目「黒と白 地上で藍色を覆いかくし」*1と大乗訳3行目「黒 白 青が地をかくし」*2は、dissimulés が受動態である以上、「隠される」となっているべき。
 山根訳4行目「偽りの陰に裏切り者どもが 音を立てるのが知れよう」と大乗訳4行目「みせかげのかげのもとで 反逆者を表明する」は、どちらも & の位置からすると sonnés の処理の仕方が強引に思える。
 なお、4行目の sous la fainte ombre は、ジャン=ポール・クレベールが指摘するように、百詩篇第5巻5番の類似表現からいっても、「かげ」と直訳するよりも「口実」と理解する方が文脈に適合する。

信奉者側の解釈

 テオフィル・ド・ガランシエールは、アルルが都市名であることを説明しただけで「残りは平易」と片付けた*3
 その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、ジャック・ド・ジャンバルタザール・ギノーD.D.テオドール・ブーイフランシス・ジローウジェーヌ・バレストアナトール・ル・ペルチエチャールズ・ウォードマックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)アンドレ・ラモンロルフ・ボズウェルジェイムズ・レイヴァーの著書には載っていない。

 全訳本の類になら載っているが、ヘンリー・C・ロバーツはアルルで起きる反乱という漠然とした解釈しかつけていなかったし、エリカ・チータムは何を意味しているのか分からないとしていた*4。チータムは1973年の段階では一言も解釈を付けていなかったが、日本語版『ノストラダムス全予言』では、ベトナム戦争の予言とする解釈がついている。その場合の l'inde はインドシナ半島のことだという。

 l'inde を地名とする解釈はセルジュ・ユタンもつけていて、インド独立の際のヒンドゥー教徒とイスラーム信徒の対立とされている*5

同時代的な視点

 ピーター・ラメジャラージャン=ポール・クレベールも、モデルの特定には至っていない*6


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最終更新:2011年01月05日 23:02

*1 山根 [1988] p.242

*2 大乗 [1975] p.202

*3 Garencieres [1672]

*4 Roberts [1949], Cheetham [1990]

*5 Hutin [1978/2002]

*6 Lemesurier [2003b/2010], Clébert [2003]