六行詩31番

六行詩集>31番*

原文

Celuy qui a, les hazards1 surmonté2,
Qui fer, feu, eauë3, n'a4 iamais redouté5,
Et du pays6 bien proche du Basacle7,
D'vn coup de fer tout le monde8 estouné9,
Par Crocodil10 estrangement donné,
Peuple raui de veoir vn tel11 spectacle.

異文

(1) hazards : hazard a 1600Au
(2) surmonté : surmonte 1649Xa, surmouté 1672Ga
(3) eauë : & eaue 1600Mo, eau 1644Hu 1672Ga
(4) n'a : na 1672Ga
(5) redouté : redoublé 1600Mo
(6) du pays : d'vn pays 1600Mo, du païs 1627Ma, du Pais 1672Ga
(7) du Basacle : du Bazacle 1600Au, de basacle 1600Mo 1627Ma 1627Di
(8) monde : Monde 1672Ga
(9) estouné 1605sn 1649Xa : estonné 1600Au 1600Mo 1611 1628dR 1644Hu 1649Ca 1672Ga, étonné 1627Ma 1627Di
(10) Crocodil : Crocodril 1600Au, Cocodril 1600Mo, crocodil 1627Di
(11) vn tel : tel 1600Mo

校訂

 4行目の estouné は、多くの異文にあるように estonné の誤植だろう。

日本語訳

その者はそれらの危険に打ち勝った者で、
鉄にも火にも水にも決して怯えることがなかった。
そしてバザークルにとても近い地方からの
鉄器の一撃に皆が驚かされる。
奇妙にもワニによって与えられる、
そんな光景を見て人々は激昂する。

信奉者側の見解

 ノエル=レオン・モルガールの用語解説では、「ワニ」は「フランス人の裏切り者」のこととされている*1

 テオフィル・ド・ガランシエールは、二通りの解釈を提示している。
 1つ目はアンリ4世とする解釈で、彼の出身であったベアルン地方はトゥールーズバザークルはトゥールーズ市内の河岸地区)からも近く、彼が1610年に謀反人ラヴァイヤックの凶刃に倒れたことが予言されていたとする。
 もうひとつはアンリ・ド・モンモランシーとする解釈で、彼は謀反を企てたことからトゥールーズで斬首された(1632年)*2

 1691年ルーアン版『予言集』に掲載された「当代の一知識人」の解釈では、アンリ4世暗殺と解釈されている*3
 匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年)でも、アンリ4世暗殺と解釈されている*4
 バルタザール・ギノーはアンリ・ド・モンモランシーの処刑と解釈した*5

 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌは第四次中東戦争と解釈した*6

同時代的な視点

 アンリ4世とする解釈は妥当なのではないだろうか。

 ただ、1605年頃までに偽作されていたはずのこの詩にアンリ4世の暗殺が仄めかされていたかどうかについては、raviをどう読むかや「ワニ」を何の比喩と見るか、あるいは表現の似た六行詩45番との関連性をどう判断するかなどによって評価が変わるだろう。

その他

 1600Au では28番になっている。


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六行詩
最終更新:2019年12月31日 20:13

*1 1600Mo

*2 Garencieres [1672]

*3 1691Besongne, pp.211-212

*4 L’Avenir..., p.102

*5 Guynaud [1712] pp.156-158

*6 Fontbrune (1980)[1982]