百詩篇第7巻26番

原文

Fustes1 & galees2 autour3 de sept nauires4,
Sera liuree vne mortelle guerre5:
Chef de Madric6 receura7 coup8 de vires,
Deux eschapees9 & cinq menees10 à terre11.

異文

(1) Fustes : Futes 1627
(2) & galees 1557U 1568 1628 1649Ca : & Galees 1557B, & galées 1590Ro 1605, & Gales 1627, Galées 1672, & galeres T.A.Eds.
(3) autour : au tour 1627, auront 1653 1665
(4) nauires : Navires 1672 1772Ri
(5) guerre : querre 1627
(6) Madric : Madrid 1672
(7) receura : receuras 1653 1665
(8) coup : coups 1653 1665 1672
(9) eschapees / eschapées : eschapez 1650Le 1668 1772Ri
(10) menees / menées : menez 1650Le 1668 1672
(11) terre : Terre 1672

校訂

 3行目の Madric は明らかに Madrid の誤植。

日本語訳

七隻の船の周りに軽量船やガレー船。
致命的な戦争が幕を開けるだろう。
マドリードの指導者は矢の一撃を受けるだろう。
二隻は逃れ、五隻は陸に曳かれてゆく。

訳について

 4行目の「2」と「5」が船の数とは限らないが、1行目の「7隻」に対応していると考えるのが素直な見方だろう。

 大乗訳1行目「小舟は浮かび ガレー船は七つの小舟のまわりに」*1は冒頭が誤訳。ヘンリー・C・ロバーツの英訳にある flying boats は「飛ぶように速い小舟」くらいの意味だろうし、fusteの原義からしてもそうとる他ない。
同2行目「致命的な戦いの制服で」は意味不明だが、これはロバーツの英訳 Shall be in the livery of deadly war *2の直訳である。ロバーツの英訳自体、根拠が全く分からない。
 同3行目「マドリッドの首長は 舟のかいのあおりを受け」は不適切。vireを「かい」と訳すのはロバーツも、その元になったテオフィル・ド・ガランシエールも同じだが、vireを aviron (櫂)の変形とでも捉えた結果と思われる。

 山根訳は特に問題はない。

信奉者側の見解

 1656年の解釈書では、1555年11月にディエップ沖で起きたフランスの私掠船とスペインのガレオン船団の戦いとされていた。その戦いではスペイン側の旗艦が被害を受け、他の6隻の救援もむなしく、提督と4人の貴族がディエップに連行されたという*3
 テオフィル・ド・ガランシエールはそれを踏襲したが、20世紀に入るまでほかに解釈した論者はいなかったようである。20世紀にはエリカ・チータムもこの解釈を採った。

 マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)(1939年)は、近未来の戦争において、七ヶ国の国境付近で戦いがあり、スペインとフランスを除く五つの国が倒れることと解釈し、それは『ヨハネの黙示録』第17章の七人の王のうち五人が倒れたという預言にも対応するとした*4
 息子のジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌはトラファルガーの海戦(1805年)と解釈した*5

 セルジュ・ユタンはスペイン内戦の時期の海戦の様子と解釈した*6

同時代的な視点

 ピーター・ラメジャラーは1656年の解釈書などを踏襲し、1555年11月のディエップ沖の出来事と解釈した*7。この詩の出版は1557年9月6日のことであり、モデルとすることは十分に可能であった。


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最終更新:2011年01月30日 11:38

*1 大乗 [1975] p.208

*2 Roberts [1949] p.222

*3 cf. Leoni [1961]

*4 Fontbrune (1938)[1939] p.146

*5 Fontbrune (1980)[1982]

*6 Hutin [1978/2002]

*7 Lemesurier [2003b/2010]