原文
Les malheureuses
1 nopces
2 celebreront,
En grande ioye, mais la fin malheureuse
3 :
Mary & mere
4 nore5 desdaigneront,
Le
Phybe6 mort, & nore
7 plus piteuse
8.
異文
(1) malheureuses : Malheureuses 1568X, mal-heureuses 1610Po, mal'heureuse 1605sn, nalheureuses 1611A, mal'heureuses 1627Di 1628dR 1649Xa 1649Ca 1650Le 1668A
(2) nopces : Nopces 1672Ga
(3) malheureuse : mal-heureuse 1610Po 1668P, mal heureuse 1605sn 1649Xa, mal'heureuse 1627Di 1628dR 1649Ca 1650Le 1668A
(4) mere : Mere 1672Ga
(5) nore : note 1610Po, Nore 1672Ga, noce 1800AD
(6) Phybe : l'ybe 1627Di, phibe 1800AD
(7) & nore : & note 1610Po, & uore 1627Di 1653AB, & Nore 1672Ga, et noce 1800AD
(8) piteuse : pitieuse 1668
(注記)1800AD は匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年)での異文。
日本語訳
不吉な婚礼が祝福されるだろう、
大喜びで。しかし結末は不幸。
夫と母は嫁を侮蔑するだろう。
フィブは死に、嫁はいっそう不憫に。
訳について
大乗訳3行目「夫も妻もノーレをけいべつし」は、
ヘンリー・C・ロバーツの原文で大文字になっていた Nore をそのままローマ字読みしたのは仕方ないとしても、mere (母)を「妻」と訳すのは不適切。これはロバーツの英訳をそのまま転訳したものだが、
テオフィル・ド・ガランシエールはきちんと Mother と英訳していたので、ロバーツがなぜ wife などと英訳したのか、理解に苦しむ。
同4行目「ピーブは死に ノーレはもっとも信心深く」は誤訳。英訳の piteous を pious とでも見間違えたのだろう。
山根訳は3行目「母親は義理の娘メアリーを軽蔑する」が不適切。夫を意味するフランス語の mari を英語名の Mary と読むのだとしても、動詞の活用形からして、「母」だけを主語にすることはできない。
信奉者側の見解
テオフィル・ド・ガランシエールは、Phybeをコリニー提督、Noreをマルグリット・ド・ヴァロワと解釈できるならばと前置きした上で、1572年のサン=バルテルミーの虐殺と解釈した。マルグリットは
アンリ4世と結婚したが、その婚礼が虐殺事件の契機となった。
ヘンリー・C・ロバーツもサン=バルテルミーの虐殺とする解釈を踏襲したが、Phybeの解釈などには触れなかった。
匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年)では、ルイ16世とマリー・アントワネットの結婚と不幸な結末に関する予言と解釈された。
セルジュ・ユタンはナポレオンとマリー=ルイーズの結婚、およびその子ナポレオン2世の早世と解釈した。PhybeをAiglon (小鷲、ナポレオン2世)と解釈した根拠は示されていない。
同時代的な視点
1724年の匿名の論文「
ミシェル・ノストラダムスの人物と著作に関する批判的書簡」では、フランソワ2世とメアリー・スチュアートの結婚と解釈されている。フランソワ2世の結婚は1558年のことだったが、彼はその2年後に歿した。
匿名の書き手は、
Phybeを Phi (ギリシア文字φ)とbe (beta, β)に分解し、φ はフランソワをギリシア文字で綴ったときの頭文字であり、β は2番目のギリシャ文字であることからフランソワ2世(François II)を導き出せるとした。
エドガー・レオニは婚礼がモチーフとなっている
詩百篇第10巻52番との関連を示唆する一方で、上記1724年の解釈を紹介した。
ルイ・シュロッセ(未作成)もフランソワ2世とメアリー・スチュアートと解釈した。なお、シュロッセは Phybe を Phoebus (ポイボス、太陽神の異称)と解釈し、太陽のように美しかった(beau)フランソワ2世のことという結び付け方をした。
最終更新:2019年10月28日 00:10