百詩篇第6巻34番

原文

De1 feu vloant2 la machination3,
Viendra troubler au grand chef4 assiegés5:
Dedans sera telle sedition,
Qu'en desespoir seront les profligés6.

異文

(1) De : Du 1660
(2) vloant 1557U : voulant 1597 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1716, volant T.A.Eds.
(3) machination : machinatiou 1627
(4) au grand chef : au grand chefs 1650Le, le Chef des 1672
(5) assiegés ou assiegez : assigés 1557B, assiegee 1588-89, assieger 1597 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840, Assiegez 1672
(6) profligés ou profligez : proffigés 1557B

校訂

 1行目 vloant は明らかに volant の印刷ミス。ただし、当時o と ou は交換可能な綴りとされていたので、voulant の可能性もないわけではない。

日本語訳

飛ぶ火による陰謀が
偉大な首領に攻囲された人々を混乱させに来るだろう。
(攻囲された場所の)中では暴動が起こるだろう、
堕落した人々が絶望するような類の。

信奉者側の見解

 エリカ・チータムは1行目のmachination を machine と捉え、「飛ぶ火の機械」と解釈し、ロケットやミサイルの予言だとしている*1。ジョン・ホーグは湾岸戦争のこととする*2

懐疑的な見解

 日本語訳だと分かりづらいが、1行目の「飛ぶ」は、活用語尾からすると machination ではなく feu にかかっている。
 マリニー・ローズのように、実証的な論者でもmachination を機械と訳しうるとする者はいるが、その場合でも「飛ぶ機械」とはならないのである。
 そして、リチャード・スモーレー(未作成)が指摘するように、「火を飛ばす機械」なら16世紀の大砲でも十分当てはまる*3
 実際、ロケットや爆撃機を知らなかった17世紀のテオフィル・ド・ガランシエールは、普通に爆弾や砲撃と理解していた。

同時代的な視点

 ピーター・ラメジャラーは、コンラドゥス・リュコステネス(未作成)が紹介していた1550年6月12日のヴィッテンベルク(未作成)上空の幻が、この詩と関連している可能性を指摘している*4


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百詩篇
最終更新:2009年12月15日 22:36

*1 Cheetham [1990]

*2 Hogue [1997]

*3 Smoley [2006]

*4 Lemesurier [2003]