百詩篇第7巻15番

原文

Deuant cité1 de l'insubre2 contree3,
Sept ans sera le siege4 deuant mis:
Le tresgrand5 Roy y fera6 son entree7,
Cité, puis libre hors de ses ennemis.

異文

(1) cité : Cité 1672
(2) l'insubre 1557U 1557B 1568A 1590Ro 1653 : l'Insubre T.A.Eds. (sauf : l Insubre 1568C)
(3) contree : Countrée 1672
(4) siege : Siege 1672
(5) tresgrand : tres-grand 1590Ro 1600 1610 1611B 1644 1650Ri 1660 1672 1716 1772Ri, tres grand 1627 1653 1665 1668P 1840
(6) y fera : fera 1672
(7) entree : eutree 1557B

日本語訳

インスブリア地方の都市の前で、
七年間、前での攻囲が行われるだろう。
非常に偉大な王がそこに入るだろう。
そして都市は、敵たちから自由に。

訳について

 大乗訳1行目「低い国の都市の前」*1は恐らく誤訳。上で「インスブリア地方」と訳した語は古代の部族名に由来している。その部族名の由来までは確認できていないので、「低い国」を意味している可能性も否定はできない。しかし、テオフィル・ド・ガランシエールがピエモンテと英訳していたものをヘンリー・C・ロバーツが the lower country と修正していること、そしてこの種の根拠不明なロバーツの改変は信頼性が低いことを考えるなら、安易に追従しないでおくのが無難だろう。
 大乗訳4行目「町は敵の手で満たされる」は誤訳。hors de... は「~から外れて、~を除いて」の意味である。

 山根訳は問題ない。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは、「解釈の必要なし」とだけ注記した*2

 その後、20世紀までこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、ジャック・ド・ジャンバルタザール・ギノーD.D.テオドール・ブーイフランシス・ジローウジェーヌ・バレストアナトール・ル・ペルチエチャールズ・ウォードの著書には載っていない。

 マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)ロルフ・ボズウェルは、未来に再びアヴィニョンに教皇庁が移る予言とした*3

 セルジュ・ユタンはナポレオンに関する詩か、もしくは未来の大君主に関わる詩とした*4

同時代的な視点

 ロジェ・プレヴォは、フランソワ1世が1515年から1522年の7年間、ミラノ周辺を支配したものの、ビコッカの敗戦によってその支配権を失ったことと解釈した*5ピーター・ラメジャラーもその読み方を支持した*6


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  • オーストリア継承戦争と7年戦争? -- とある信奉者 (2011-03-20 00:34:16)
最終更新:2011年03月20日 00:34

*1 大乗 [1975] p.206

*2 Garencieres [1672]

*3 Fontbrune [1939] p.291, Boswell [1943] p.298

*4 Hutin [1978]

*5 Prévost [1999] p.103

*6 Lemesurier [2003b/2010]