百詩篇第5巻66番

原文

Soubz les antiques edifices 1 vestaulx 2 ,
Non esloignez 3 d'aqueduct 4 ruyne 5 :
De Sol 6 & Luna 7 sont 8 les luysans 9 metaulx,
Ardante 10 lampe 11 Traian d'or 12 burine 13 .

異文

(1) edifices : edefices 1660
(2) vestaulx : estaux 1589PV 1649Ca HCR, Vestaux 1672
(3) esloignez : esloigné 1627 1644 1653 1665 1840, eslongnez 1588-89 1589PV 1650Le, esloigez 1772Ri
(4) d'aqueduct : daqueduct 1568B 1568C, d'aque duct 1611, d'aque duc 1660, d'aqueduc 1665, de l'aqueduct 1668, d'Aqueduct 1672, de queduct 1588Rf 1589Rg, de quelque grand 1589Me, de l'aqueduc 1712Guy
(5) ruyne : ruyné 1557B 1589PV 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1672 1712Guy
(6) Sol : sol 1627
(7) Luna 1557U 1557B 1568A 1588-89 1589PV : Lune T.A.Eds. (sauf : lune 1600 1610 1665 1840)
(8) sont : mont HCR
(9) luysans : luissans 1672
(10) Ardente : ardente 1627
(11) lampe : Lampe 1672
(12) Traian d'or : Trian dor 1611A, Trian d'or 1611B, traian d'or 1627, Trian 1660, Trajen d'or HCR
(13) burine : buriné 1557B 1589PV 1627 1644 1649Ca 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1672 1712Guy, butine 1611

(注記)HCR はヘンリー・C・ロバーツの異文。

校訂

 2行目、4行目の末尾はそれぞれruyné, buriné となっているべき。エドガー・レオニブリューノ・プテ=ジラールピーター・ラメジャラージャン=ポール・クレベールらが一致して採用している *1

 余談だが、ヘンリー・C・ロバーツは何故か1行目を1649年ルーアン版の系統に差し替えているにもかかわらず、その差し替えが訳に影響を及ぼしていない。このことは、彼のフランス語力に疑問を投げかける。

日本語訳

ウェスタリスの古い建物の下、
崩れた水道橋から遠くないところ。
輝く金属は太陽と月に属している。
黄金で彫られたトラヤヌスの燃えるランプ。

訳について

 大乗訳も山根訳もおおむね問題はない。

 五島勉も訳しているが、その前半はともかく後半に問題があるので触れておく。
 3行目「日の国と月はきらめく金属を見る」 *2 は不適切。sont は英語で言えば are に当たる語で「見る」とは訳せない。
 4行目「激烈な三角ランプでそれを奪い合う」も不適切。d'or (黄金の)が訳に反映されていないし、Trajan (トラヤヌス)を「三角」(triangle)と訳すのも無理がある。buriné (彫られる、削られる)を「奪い合う」と訳すのも根拠が全く分からない。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは、様々な古代の伝説などを引き合いに出しつつ、ニームのサン=ソヴール=ド=ラ=フォンテーヌ修道院の敷地に元々建っていたとされるディアナ神殿跡から、金貨、銀貨をはじめとする古代の遺物が発見される予言とした *3エドガー・レオニによると、この解釈の元祖は1656年の解釈書らしい。

 バルタザール・ギノーは、ローマの水道橋近くにあった古代のウェスタ神殿から、金や銀の地金、さらにはトラヤヌス帝時代に作られた金のランプが見付かる予言などとした *4

 その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、D.D.テオドール・ブーイフランシス・ジローウジェーヌ・バレストアナトール・ル・ペルチエチャールズ・ウォードの著書には載っていない。

 ヘンリー・C・ロバーツは、ガランシエールやギノーよりもさらに曖昧に場所を限定せず、水道橋の近くで古代の遺物が発見される予言とした *5

 エリカ・チータムはレオニの注釈から1656年の解釈を孫引きしただけだった *6

 セルジュ・ユタンは錬金術的な詩とだけ注記した。

 五島勉は『ノストラダムスの大予言スペシャル・日本編』の巻末付録で、日本の未来にとって、中東かアフリカ北部で他国と奪い合いになる新種の稀少金属(レアメタル)が重要になることの予言とした *7

同時代的な視点

 3行目の太陽と月は、百詩篇第5巻32番などと同じく、金と銀の隠喩だろうという点には特段の異論が見られない。

 エドガール・ルロワは、1行目の古代の建物(antiques edifices)をサン=レミ=ド=プロヴァンスの古代遺跡(les Antiques)のこととし、地下に眠る財宝を黄金のヤギが守っているという伝説に触発された詩と解釈した *8 。同様の解釈はルイ・シュロッセ(未作成)も展開していた *9

 ピーター・ラメジャラーは、1403年の大洪水の際に、ニームの聖なる湖の跡地から古代の金製・銀製の祭器類が発見されたことがモデルになっていると推測した *10

 なお、百詩篇第9巻9番との類似性がしばしば指摘されている。

その他

 佐藤亮拿はノストラダムスが「東洋の日の国に激烈な三角ランプの新しい火が生まれ、その火によって物が生まれ変わり、世界が救われる」 *11 と予言したと述べ、それは自身の発明した「マルチアーク」のことであると主張した。これは恐らく五島勉がこの詩につけていた訳に影響されたものと思われるが、五島訳以上に自由な改変が行われている。


【画像】『奇跡の炎マルチアーク』カバー表紙


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