La Prophetie merveilleuse, contenant au vray les choses plus memorables

 『真に最も記憶されるべき事柄を含む驚異の予言』(La Prophetie merveilleuse, contenant au vray les choses plus memorables)は、1590年にパリピエール・メニエによって出版されたアントワーヌ・クレスパンの著書。

【画像】扉*1

正式名

  • LA PROPHETIE MERVEILLEVSE, CONTENANT AV VRAY LES CHO-ses plus memorables qui sont à aduenir, depuis ceste annee Mil cinq cens quatre vingts-dix, iusques en l'annee Mil cinq cens quatre vingts-dixhuict, lesquelles n'ont esté encor mis en lumiere.
    • Là ou il est declaré les miseres & calamitez dont les Astres nous menacent, tant en ce Royaume de France, qu' Espagne, Italie, Allemagne, Angleterre, qu'autres lieux, iusques à la Fin du Triangle accomply.
    • Ce qui s'est jà passé soubs le regne du grand Empereur Charlemaigne, & maintenant se prepare à nous donner vn Siecle & Triangle nouueau.
    • Le tout composé par M. Crespin Archiamus, Astrologue du Roy.
    • A PARIS,
    • Par Pierre Ménier, demourant pres la porte Sainct Victor
    • AVEC PRIVILEGE.

  • いまだ公刊されることがなかった現1590年から1598年までに起こる、真に最も記憶されるべき事柄を含む驚異の予言
    • その中には、成就した三重合の終焉までにフランス王国、スペイン、イタリア、ドイツ、イングランドや他の場所で起こると、星々が我々を脅かしている悲惨と破局が示されている。
    • それは大帝シャルルマーニュの治世に起こったことで、今は我々に一つの時代と新たな三重合を与えようとしている。
    • 全ては国王お抱えの占星術師クレスパン・アルキアムス師によって構成された。
    • パリにて、
    • サン・ヴィクトル門近くに住むピエール・メニエによる。
    • 特認とともに。

 triangle (三角形)は triplicité (三重合)と同一視するジャック・アルブロンの読み方に従った。なお、シャルルマーニュは「カール大帝」とも訳されるので、「大帝シャルルマーニュ」は冗長だが、le grand Empereur の訳としてあえて「大帝」を使った。

 アルキアムスは当然誤植で、本文ではきちんとアントワーヌ・クレスパン・アルキダムスと書かれている。

内容

 八つ折版20ページの文献である。
 「敬虔なキリスト教徒たるブルボン家のフランス王シャルル10世へ」(Au Tres-Chrestien Roy de France Charles de Bourbon X. de ce nom.)と題された献辞に続き、題名にあるように1590年から1598年までについて、散文で予言を述べている。
 各年の冒頭には四行詩が添えられているが、ノストラダムス作品との一致はないので、クレスパンのオリジナルか、ノストラダムス以外の書き手からの剽窃なのだろう。
 末尾にジル・ド・サン=ジルにあてられた特認の抜粋と、サン=ジルがピエール・メニエに許可を与えた旨の補足説明が付いている。

偽作説

 献辞の対象となっているシャルル10世(シャルル・ド・ブルボン)は、正規のフランス王ではない。彼は、アンリ3世(未作成)が殺された後、プロテスタントのアンリ4世が王位に就くことを認めなかったカトリック同盟によって、対立国王として担ぎ出された人物である。
 ジャック・アルブロンは、この文献はカトリック同盟に加担する人物が、政治的動機によって作成した偽作と見なしている。また、驚異の予言(Prophetie Merveilleuse)という題名は1567年にノストラダムス2世の名義で出された『今年に始まり1568年閏年まで続く驚異の予言』とも一致することから、この時期には複数の名前を使い分けて偽予言を世に出していた人物がいたとしている。
 さらにアルブロンは、この文献が題名で星位に触れるかのように書いているが、実際にはクレスパンが1580年代に扱っていた話の焼き直しであり、1590年代特有の星位への言及がないとも指摘している*2

 この文献は、明らかにカトリック同盟寄りの政治的文献である。ただ、アルブロンの仮説はかなり独特なもので、全面的に支持できるかは微妙だろう。仮に事実なら、偽ノストラダムスの一人であるクレスパンにも偽クレスパンが便乗していたことになり、当時の予言「業界」がかなり混沌としていたことを示している。

 逆にこれもクレスパン本人の作品なら、彼は『太陽の周期の全般的な占筮』1604年版では国王(つまりアンリ4世)お抱えの占星術師を名乗ることになるので、政治的立場や宗教的信条には拘らない非常に節操のない人物といえるだろう。

所蔵先



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最終更新:2011年03月31日 20:02

*1 画像の出典:http://www.propheties.it/

*2 Halbronn [2002] pp.118-120