百詩篇第2巻36番

原文

Du grand Prophete 1 les letres 2 seront prinses
Entre 3 les mains 4 du tyrant 5 deuiendront:
Frauder son roy 6 seront ses 7 entreprinses,
Mais ses rapines bien tost 8 le troubleront 9 .

異文

(1) Prophete : prophete 1589PV 1627 1649Ca 1650Le 1668
(2) les letres : lettres 1588-89, les Lettres 1672
(3) Entre : Enter 1716
(4) mains : Mains 1672
(5) tyrant : tyran 1568C 1568I 1588-89 1589PV 1597 1600 1605 1610 1611 1627 1628 1649Xa 1649Ca 1650Le 1650Ri 1660 1668 1716 1772Ri, Tyran 1594JF 1644 1653 1665 1672
(6) roy 1555 1557U 1568A 1568B 1590Ro 1840 : Roy T.A.Eds.
(7) ses (vers3) : les 1557B 1588-89 1589PV 1649Ca 1650Le 1665 1668
(8) bien tost : bien-tost 1644 1649Xa 1668P
(9) troubleront : troubletont 1627, trooubleront 1772Ri

(注記)1557U の3行目の ses は棒が途切れているので les かも知れない。

日本語訳

偉大な預言者の書簡が奪われ、
暴君の手中に届くだろう。
彼らの企てはその王を欺くことだが、
その掠奪がすぐに彼を損ねるだろう。

訳について

 Prophete は「預言者」「予言者」の2通りに訳せるが、原文そのものからどちらかに絞るのは困難である。
 deviendront (devenir)は現代フランス語では「なる」の意味だが、中期フランス語では「届く、達する」の意味もあった *1

 山根訳は問題ない。大乗訳も細かなニュアンスに疑問はあるものの、大きく文意を損ねている箇所はない。

信奉者側の見解

 ジャン=エメ・ド・シャヴィニーは、「大予言者」を旧約聖書のミカ書からの連想で宰相ミシェル・ド・ロピタル (Micheas と Michel の言葉遊び) と解釈し、百詩篇第2巻28番と同じく、1567年のフランスの政治情勢と解釈した *2

 テオフィル・ド・ガランシエールは、国王を裏切ろうとするある高名な英国国教徒に関する予言と解釈したが、具体的な人名などは挙げなかった *3
 その後、20世紀初頭までこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、ジャック・ド・ジャンバルタザール・ギノーD.D.テオドール・ブーイフランシス・ジローウジェーヌ・バレストアナトール・ル・ペルチエチャールズ・ウォードの著書には載っていない。

 マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)は、「偉大な預言者」をローマ教皇とし、ナポレオンと教皇の確執に関連する詩と解釈した *4

 ジェイムズ・レイヴァーは、アンリ・トルネ=シャヴィニーの解釈を踏襲し、トルネ=シャヴィニーのノストラダムス関連書が官憲に一度押収されたことを指すと解釈した *5

 ヴライク・イオネスクは、カール・エルンスト・クラフト(未作成)の原稿をゲッベルスが差し押さえた出来事と解釈した *6

 加治木義博は(自分の解釈以外の)インチキノストラダムス解釈本が氾濫したことと解釈した *7

同時代的な視点

 ピエール・ブランダムールジャン=ポール・クレベールは特定のモデルを提示しておらず、ピーター・ラメジャラーも2003年の時点ではノストラダムス本人の可能性があることを疑問符つきで示すにとどまった。

 しかし、ラメジャラーは2010年になると、預言者を自称したサヴォナローラがフランス王シャルル8世にあてた手紙を横取りしたミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァについてと、解釈を変更した *8


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