百詩篇第12巻52番

原文

Deux corps, vn chef. champs diuisez en deux:
Et puis respondre à quatre non ouys.
Petis 1 pour Grands. 2 à Pertuis 3 mal pour eux,
Tour 4 d'Aigues foudre 5 . pire 6 pour Enssouis 7

異文

(1) Petis 1594JF 1628 : Petits T.A.Eds.
(2) Grands.: grands 1611 1627 1644 1650Ri 1653 1665
(3) à Pertuis : apertius 1605 1649Xa, à pertuis/pertuits 1627 1628 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1667 1668, a pertuis 1649Ca, a pertius 1672
(4) Tour : Tout 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1697
(5) foudre : coudre 1653 1665 1697
(6) pire : Pire 1611
(7) Enssouis 1594 1611 : Eussouis T.A.Eds.

(注記)1697 は1697年ジャン・ヴィレ版の異文。

日本語訳

二つの体、一つの頭。野は二分割される
そして四人の聾者たちに返事をする
大人に対して小人。ペルチュイでは彼らに凶事
ラ・トゥール・デーグで落雷、アンスウィには更なる凶事。

訳について

 3行目について。大乗訳では後半が「水門はかれらに悪く」 *1 とある。pertuis には「水門」の意味もあるが妥当性は疑問である。一般名詞としての pertuis は中期フランス語で「穴、抜け道」の意味だった *2
 4行目について。大乗訳では Tour d'Aiguesを「水の塔」としているが、こちらは誤りとはいえない。11世紀から14世紀のフランス語には「水」を意味する aigue という単語があったからである *3 。ただし、ロバーツの英訳では単なる The tower of Aigues となっていた。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは、「二つの体、一つの頭」は、アンリ4世がナヴァル王国とフランス王国を統合したことを示すのではないかとした。さらに、四行目の「エーグ」はエーグモルト(未作成)の略で、その町の塔が落雷に遭うという意味だろうと解釈した *4

 ジョン・ホーグは(apertius を clear、Tour d'Aigues を Tower of Aiguesmortes、Eussouis を Essoyes と訳した上で)第二次世界大戦のフランスとドイツの衝突に結び付けている *5

 五島勉は Tour d'Aigues を「鋭い塔」=「高層ビル群」、Enssouis→Euffovis を「既にそうなってしまったケダモノ」を意味する造語と捉え、核戦争後の惨憺たる情景を予言したと解釈した *6

 川尻徹は大乗訳の「水門」を英語に直すと「ウォーターゲート」になるとして、ウォーターゲート事件(1972年)を予言しているとした *7

同時代的な視点

 1605年版に誤植が多いことはよく知られている *8 。この詩はそれが影響して意味不明になってしまった不幸な例であろう。シャヴィニーは、ペルチュイ(Pertuis)、ラ・トゥール・デーグ(La Tour d’Aigues)、アンスウィ(Enssouis)は、いずれもプロヴァンスの小さな町だと注記している *9 。これらの町はアンスウィの綴りが Ansouis になっているのを除けば、今もそのとおりの名前で残っている。
 それを踏まえるなら、本来この詩は(本物であれ偽物であれ)プロヴァンスに限定された局地的な事件の予言のはずで、第二次世界大戦や核戦争後の惨状などとは結び付きようがないであろう。

 内容的には、プロヴァンスの小さな町に災いが訪れ、奇形の誕生がその前兆になると理解できる。現代ではかなり差別的に見えるモチーフだが、当時としては奇形と災厄を結びつける言説はしばしば見られたのである。

 シャヴィニーはこの詩を1588年のプロヴァンスでの騒乱と解釈したが、発表されたのは1594年なので、事後予言が疑われるべきであろう。



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