百詩篇第1巻46番


原文

Tout aupres 1 d'Aux 2 , de Lectore 3 & Mirande
Grand feu du ciel 4 en troys nuicts tumbera :
Cause 5 auiendra bien stupende & mirande 6 :
Bien peu apres la terre 7 tremblera.

異文

(1) aupres : apres 1589PV 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1628dR 1627Ma 1649Xa 1650Ri 1981EB 1716PR, au pres 1612Me
(2) d'Aux : d'aux 1612Me 1665Ba, d'Auch 1672Ga
(3) de Lectore : de Lestore 1557U 1557B 1568 1591BR 1597Br 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1981EB 1716PR 1772Ri, de Lactore 1588-89 1612Me, Lestoure 1590Ro, le Lestore 1605sn 1628dR 1649Xa, de Lectoure 1672Ga, de Leitoure 1712Guy
(4) ciel : Ciel 1568C 1588-89 1590SJ 1611B 1649Ca 1650Le 1981EB 1668 1672Ga 1712Guy 1716PR
(5) Cause : Chose 1672Ga, Causera 1716PRc
(6) mirande : Mirande 1605sn 1611A 1611B 1628dR 1649Xa
(7) terre : Terre 1672Ga

日本語訳

オーシュ、レクトゥール、ミランドの至近で、
三夜に渡って天から大火が降るだろう。
まさに呆然・驚倒すべき事件がおきるだろう。
すぐ後に大地が震えるだろう。

訳について

 3行目のstupendemirandeは実質的に同じような意味である。中期フランス語では、似たような語を重ねる表現は慣例的な表現として珍しくなかった *1

 構文上は難しい箇所が全くない平易な詩で、既存の訳もごく細かな点にしか疑問点はない。
 大乗訳はおおむね問題ないが、1行目「オーホ レクトール ミランデの近く」 *2 が微妙。都市名の表記がおかしいことを棚上げするとしても、tout は aupres (近く)を強調しているのだから、それが伝わるような言葉(すぐ近く、ごく近く、至近など)にすべきだろう。

 山根訳は3行目「原因はまさに驚嘆すべきもので」 *3 が可能な訳ではあるが、微妙である。 cause はフランス語では確かに「原因」だが、ノストラダムスは語源に遡って「出来事、事件」の意味でも使っている。この場合もそういう用法だという点は、ピエール・ブランダムールピーター・ラメジャラー高田勇伊藤進らが一致している。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)は挙げられている3都市がボルドー周辺のものであることを指摘し、「残りは平易」とだけ述べた *4
 バルタザール・ギノー(1712年)はほとんど敷衍する形で、オーシュをはじめとするガスコーニュ地方の3都市に3晩続けて空からたくさんの火が降り、それとは別の驚愕事件や地震が続いて起こることと解釈した *5
 19世紀末までに解釈したのは以上の2人だけのようである。

 ロルフ・ボズウェル(1943年)は3都市がガスコーニュ地方のものであることを述べた上で、黙示録的な筆致の詩とだけ指摘した *6

 アンドレ・ラモンは第二次世界大戦中にドイツ軍がフランス軍の不意を突く形で空爆したことと解釈した *7

 セルジュ・ユタン(1978年)は隕石の落下ではないかとしていたが、1981年の改訂で近未来に起こるフランス南部から侵攻を予言した詩の一つと位置付けた *8 。のちに補訂したボードワン・ボンセルジャンは、前者の解釈の後に、示された地方での核爆発の予言とする解釈を付け足した *9

 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ(1980年)は1980年代のうちに起こると想定していた第三次世界大戦で、挙げられている3都市が空爆されることと解釈した *10

 エリカ・チータム(1973年)は隕石の落下とする解釈を示していたが、その日本語版(1988年)では、地球外生命体が乗ったUFOが1997年にスペインを襲撃する予言という原秀人の解釈に差し替えられた。
 宇宙からのUFOとする説は池田邦吉も採用した。彼は1999年にベズビオ山が噴火した後、2000年にオーシュ、レクトゥール、ミランドの上空をすっぽり覆うような直径 60 km にも及ぶ巨大な円盤型宇宙船が飛来すると解釈していた *11 。ただし、1999年に起こるはずだった解釈が外れて2003年や2007年にずらした後、宇宙船関連として挙げたいくつかの詩には、この詩が含まれていない *12

同時代的な視点

 ピーター・ラメジャラーは「空から火が降る」とか「空が燃える」といったモチーフがユリウス・オブセクエンスの『驚異について』にも頻出することを指摘し、それをフランスにも当てはめたのではないかとした *13 。また、『ミラビリス・リベル』に収録された予言の中には「ティブルのシビュラ」のように、頻発する地震と、大地を呑み込む炎のモチーフが並存している作品もあることを指摘している *14

 ロジェ・プレヴォ百詩篇第8巻2番とともに、1560年代の天災に関する詩とした *15 。しかし、(第8巻の初出は1560年代の可能性があるので別だが)この詩の初出は1555年なので、1560年代の出来事をモデルにしたと見ることは出来ないだろう。

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