Nostradamus : The Complete Prophecies (John Hogue)

 『ノストラダムス:全予言集』(Nostradamus : The Complete Prophecies) は、1997年にイギリスのエレメント・ブックス (Element Books Ltd.) から刊行されたジョン・ホーグの著書。


【画像】ペーパーバック版の表紙

内容

 百詩篇集予兆詩集、そして2つの序文(セザールへの手紙アンリ2世への手紙)のフランス語原文、英訳、解釈が収録されている。セザールへの手紙アンリ2世への手紙はほとんど一文ごとといってよいくらいに細分化されており、前者は全109節、後者は全228節となっている。ウジェーヌ・バレストが前者を全55節、後者を全127節に区切ったことを考えると、その細かさがよく分かる。
 補遺篇には第6巻の1篇、第7巻の6篇、第8巻の6篇、第10巻の1篇、第11巻の2篇、第12巻の11篇が含まれる。

 予言は発表されたと思しき年代順に並べられており、百詩篇と予兆詩が入り混じる変則的な構成になっている。
 なお、六行詩集については、贋作として収録されていない。

 原文の底本にはポール・アルボー博物館所蔵の1568年ブノワ・リゴー版を使用していると明記されている。そこに含まれていない補遺篇や予兆詩については、 1605年版でまとめられたことなどが記載されているが、底本については明言されていない。

 巻末の書誌では、29冊の関連書について5段階で評価されている。ちなみに、5点を与えられているのは、エドガー・レオニの『ノストラダムス:生涯と文学』、スチュワート・ロッブの『ノストラダムスによる世界の諸事件に関する予言集』、ジェイムズ・レイヴァーの『ノストラダムス、あるいはあらかじめ語られた未来』ほか2冊の計5冊、逆に1点はドロレス・キャノンの霊言本(全3巻)、V.J.ヒューイットのアナグラム解釈本2冊、そしてヘンリー・C・ロバーツの『ノストラダムス全予言』である。

コメント

 底本に1568年版を用い、その所蔵先まで明記した点と、予兆詩すべてにコメントを付けた点は一応評価されてよいのかもしれない。また、いくつかの詩篇でジェイムズ・ランディ(未作成)の懐疑論を意識し、それへの反論を展開していることも、信奉者側からの反応という点では興味深い。

 ただし、問題点がいくつもある。
 ひとつめは百詩篇補遺などについて、底本を明記していない点である。彼の示す原文には16世紀フランス語として不自然な綴りがいくつもあるため、断言はしかねるが、レオニの本をもとに古い綴りを偽造した疑いがある。レオニの本は1605年版を基にしているが、現代式に綴り直しているため、オリジナルとは綴りが異なる。ホーグはそれを古く見せるように綴り直したが、その知識の不十分さから実際の綴りとは違いが出てしまったのではないかと考えられる。
 また、百詩篇第1巻25番では自身の解釈にあわせ底本で pasteur となっているものを Pasteur とするなど、転記の正確性にも若干の疑問がある(彼の底本 ― 当「大事典」でいう1568I ― はネットで公開されており、容易に確認が可能)。

他言語版

 ロシア語版として1999年にNostradamus. Polnoe Sobranie Prorochestvが出版された。ちなみに、その本の著作権表示だと英語版が1996年にエレメント社から出版されたことになっているが、その版の存在は確認できない。


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最終更新:2012年03月13日 22:30