ノストラダムスの大予言V

 『ノストラダムスの大予言V』は、1986年に祥伝社から出版された五島勉の著書。
 『ノストラダムスの大予言』シリーズの5作目であり、刊行当時は「完結編」と位置付けられていた。



内容

 全6章の構成である。

 「1章 ハレー彗星後の人類はこうなる」は、五島がフランスの秘密結社だという「ルシフェロン」の副首領との電話でのやりとりを再構成したもので、1986年のハレー彗星接近のあと、宇宙兵器が絡む大規模な戦争が起こる可能性があるという解釈が示されている。

 「2章 未来の鍵、“失われた詩”はどこに?」は、時間を遡り、ルシフェロンにどういう経緯で接触することになったのかを振り返った上で、「失われた詩篇」が含まれた「ユタン秘蔵本」なる本の入手にも成功したことが語られている。

 「3章 衝撃の逆転・彼は21世紀をも予言!」「4章 一九九九年後の日本の運命は!?」では、その「失われた詩篇」が六行詩集であることが示され、その解読作業を通じて、未来の予想が行なわれる。

 「5章 ノストラダムスの『黙示録』」では一転してアンリ2世への手紙を解釈している。

 「6章 “天使人類”と“別のもの”の正体」は、そこまでの解釈を踏まえた総括で、「別のもの」の出現によって大破滅が避けられる可能性も2、3割はあると示されている。

 カバーには金森誠也(静岡大学人文学部教授)、桜井邦朋(神奈川大学工学部教授)、小池一夫(未作成)の3人が推薦文を寄せている。

初出

 単行本には明記されていないが、初出は『マガジン・ノン』の連載で、1985年8月号から12月号まで掲載された。
 連載のタイトルは「ノストラダムスの大予言V 完結編」となっていた。内容的には単行本のものとほとんど変わりがないが、特に序盤で、話題性を考慮したと思しき改稿が目立つ。
 たとえば、「一九八四年の晩秋、ある暗い夕方」*1とされていたルシフェロンとの対談時期が、「ある晩秋の午後」*2に書き換えられている。
 これは、単行本の刊行時期と離れすぎるのを嫌ったものだろう。
 また、単行本の書き出しで挙げられているハレー彗星接近と解釈した詩は、連載には登場していなかった。これなども、刊行時期の話題性を考慮した変更だろう。
 なお、連載版の書き出しに挙げられていたのはいくつかのテクノロジーに関する予言で、第3巻44番が超大型テレビやホログラムの予言として挙げられていたが、単行本版では言及自体が消えている。
 その解釈は当時の五島の持ちネタで、『事務と経営』1983年1月号の記事でも登場していた*3

コメント

 ルシフェロンは架空の存在と見るのが自然だろう。いくつか根拠はあるが、まず、先に述べたように、秘密結社幹部への取材内容が連載版と単行本版で大きく違っており、信頼性を落としている。

 また、ユタン秘蔵本などというものは実在せず、セルジュ・ユタン普通の市販本にも六行詩は掲載されている(ただし、1981年版など、六行詩を含まない版も存在している)。
 そんなものを秘蔵限定などといって勿体つけるような手合いが実在するとしても、全く信用する価値はない。

 五島は「アンリ2世への手紙」について、海外では「ノストラダムスの黙示録」と呼ばれることもあるとしていたが、そういう論者は当「大事典」の調査の範囲内では見当たらない。
 黙示録と類似する要素もなくはないので、そう呼ぶ論者はいてもおかしくはないが、多数派とは到底いえないはずである。

 なお、五島がこの本の最終章で 「強い確信を持つ」 とまで断言していた天使人類の詩の解釈については、『ノストラダムスの大予言・中東編』で事実上取り下げられることになる(該当する詩の記事を参照のこと)。

「完結編」

 この第5巻は当初「完結編」と位置付けられていた。
 連載時のタイトルには前述のように「完結編」と大書されていたし、連載第1回の著者コメントでも「完結編」とされていた。
 単行本の方でも前書きに『大予言V・完結編』と書かれているし、本文中でも 「最後の追及」「こんどはもう訂正がきかない」*4と強調されていた。
 さらに、初期の刷本には 「400万部突破の超ベストセラー 遂に完結!」 というオビまでついていた。

 ところが、その翌年にはあっさり『ノストラダムスの大予言スペシャル・日本編』が刊行され、その後もなし崩しにシリーズは続いた。
 これについては、作家の酒見賢一のように、「完結編と銘打ったくせに、すぐ次のが出るっていうのは非常に漫画的でいい(笑)」*5とエンターテインメントと割り切った評価が存在している。

売れ行き

 『読売新聞』1986年2月17日朝刊の広告では、「発売2週で18万部突破」とある。
 『SPA!』調査による1991年時点での公称発行部数は45万部*6、『日経エンタテインメント』調査による1997年時点での公称発行部数は43万部である*7。数が減るというのもおかしな話だが、それぞれ原資料のままである。

書誌

書名
ノストラダムスの大予言V
副題
ついに解けた1999年・人類滅亡の謎
著者
五島勉
版元
祥伝社
出版日
1986年2月5日
注記

外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire)

Titre
Nostradamus no Daiyogen V (trad./ Les Grandes Prophéties de Nostradamus, Tome V)
Sous-titre
Tsui ni toketa 1999 nen, Jinrui metsubou no nazo. (trad. / On a enfin décodé le mystère de la disparition de la humanité en 1999.)
Auteur
GOTÔ Ben
Publication
Shôdensha
Lieu
Tôkyo, Japon
Date
le 5 février 1986
Note
Examen des quatrains I-4, I-48, II-43, X-42, X-72 & des Sixain 1, 3, 27, 34, 39


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最終更新:2012年06月12日 22:28

*1 連載第1回、p.8

*2 『大予言V』p.24

*3 五島勉「新年特別読物 ノストラダムスの予言にあらわれた情報社会とコンピュータ」、同誌、pp.2-5

*4 同書、p.41

*5 『IN POCKET』1994年1月号、p.16

*6 『SPA!』1991年3月20日号、p.23

*7 『日経エンタテインメント!』調査 「本誌独自調査 予言書ベストセラーランキング これが最も売れている予言書トップ30(ホームページ版オリジナル)」(ミラー・サイト)