百詩篇第5巻64番


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原文

Les assemblés 1 par repoz du grand nombre,
Par terre & mer 2 conseil contremandé 3 :
Pres de l'Automne 4 Gennes, Nice 5 de l'ombre 6
Par champs 7 & villes 8 le chef 9 contrebandé.

異文

(1) assemblés ou assemblez : assemblées 1568I, assembles 1672
(2) terre & mer : Terre & Mer 1672
(3) contremandé : contre mandé 1611 1981EB
(4) l'Automne : l'Autonne 1568B 1568C 1568I 1597 1605 1611 1628 1649Xa 1981EB 1672 1772Ri, l'Antonne 1600 1610 1650Ri 1653 1716, l'Autone 1589Me, l' antonne 1627
(5) Nice : Nue 1672
(6) l'ombre : lombre 1672
(7) champs : Champs 1672
(8) villes : viles 1605 1628 1649Xa, ville 1668P, Villes 1672
(9) chef : Chef 1672

校訂

 3行目が l'Autonne ないし l'Antonne になっている版が主に使われてきたため、従来謎とされることが多かった。しかし、初出に従う限りでは l'Automne (秋) と明記されており、疑問の余地はない。
 かつて提唱され、現代でもピーター・ラメジャラーなどが支持している校訂としては、l'Ausonne と読み替えることでアウソニア地方を導くものがある。

日本語訳

集められた人々の大多数が落ち着くことで、
陸と海を通じての勧告は取り消される。
秋が近づくとジェノヴァとニースでは陰で
田舎と諸都市とを通じ、指導者が反逆される。

訳について

 3行目は特に校訂する必要を感じなかったため、そのまま「秋」で訳した。リチャード・シーバースも普通に秋と訳している。
 4行目はcontrebanderの訳し方によって「~指導者が立てられる」「~指導者がこっそり運ばれる」などの訳を導きうる。いずれも3行目の「陰で」に対応するだけに、詩のモデルが特定されない限りは、どれが正しいとは確定しづらいものと思われる。

 既存の訳についてコメントしておく。
 大乗訳は、1行目「会合は多くの残りの人によって」 *1 がまず誤訳。仏語原文を見れば、ヘンリー・C・ロバーツの英訳に使われている rest が「残り」ではなく「休息」の意味なのは明らかで、転訳による誤訳。
 2行目「陸や海から、かれらの忠告を思いだし」も誤訳。contremander は「命令を取り消す、上書きする」の意味なので、ロバーツの英訳のrecall を「思い出す」と訳すのも転訳による誤訳。
 3行目「アウトンヌ ジェンヌ 陰の雲の近く」は Nice が Nue になっている原文によるものなので、そう訳せなくもないが、その原文に妥当性はない。
 4行目「野に町に首長はたがいに他に対抗するだろう」もcontrebanderに訳の幅があるといっても、受動態になっていることからすれば、大乗訳のようにはならないだろう。

 山根訳について。
 まず1行目「多数の平穏にささえられて寄り集いし者」 *2 は、言葉の係り方によってはありうる訳。
 4行目「都市から田園から王に歯向かう革命の波」はほとんど意味不明になっているが、これはエリカ・チータムの英訳をほぼ忠実に転訳したものである。唐突に revolution が登場しているのは、レオニの英訳に出てきた in revolt を見間違えたか、飛躍させたかのどちらかだろう。

信奉者側の見解

 全訳本以外ではまず取り上げられてこなかった詩篇であり、20世紀以前ではテオフィル・ド・ガランシエール以外にコメントした者が見当たらないが、その彼にしても「私の理解を超えている」としか述べていなかったので、誰も解釈しなかったといって差し支えない。

 エリカ・チータムは Autonne が未解決のアナグラムの1つだという少々的外れなコメントを寄せ、のちには19世紀の事件(イタリア独立?)を予言しようとして失敗した詩篇ではないかとコメントした *3

 セルジュ・ユタンは1944年にフランス南部が解放されたことの予言とした *4

 ジョン・ホーグは Autonne の u を r にかえて en Arton とアナグラムし、NATO(北大西洋条約機構)に言及した20世紀末から21世紀の情勢に関わる詩篇ではないかと解釈した *5 (Arton から NATO を導くのは百詩篇第2巻22番に触発されたものだろう)。

同時代的な視点

 解釈が乏しいという意味では、信奉者側と変わらない。

 エドガー・レオニは Autonne についていろいろな解釈を展開し、これが前出のチータムの認識に影響したのは間違いないが、チータムと違い、初期の版では automne となっている版があることにもきちんと触れている。

 モデルの特定に成功した者はいないが、クレベールの読みを参考にすると詩の情景は、平穏が取り戻されることで、ある国が他国を陸・海から攻めようとしていた作戦が取り消されるが、秋になるとニースやジェノヴァで何からの不穏な動きが見られる、といったもののようである。


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