検証 予言はどこまで当たるのか

 『検証 予言はどこまで当たるのか』はASIOS菊池聡、山津寿丸の著書で、2012年10月に文芸社から刊行された。
 ASIOSからの参加者は五十音順に秋月朗芳、蒲田典弘、羽仁礼、原田実、藤野七穂、本城達也、皆神龍太郎山本弘の8名で、外部参加の菊池、山津をあわせて全10人による共著である(山津は7年後にASIOSに加入)。
 当「大事典」管理者sumaru (山津寿丸) にとっては、初の著書である。

 神田神保町の書泉グランデでは、発売された週 (9月30日 - 10月7日) の週間ベストセラーで文芸書ランキング第1位になった*1


【画像】『検証 予言はどこまで当たるのか』カバー

内容

 全5章の構成で、巻末には座談会が収録されている。
 第1章「海外の予言」では、2012年に関連するマヤ暦の話題や太陽のスーパーフレア、ピラミッドの予言、水瓶座の時代、ジョー・マクモニーグル、ジョン・タイターなどが取り上げられている。

 第2章「世界の三大予言者」では、ノストラダムス、エドガー・ケイシー、ジーン・ディクソンの3人が扱われている。

 第3章「日本の予言」は、出口王仁三郎、聖徳太子、をのこ草子、伯家神道などを扱う章である。

 第4章「キリスト教・聖書・カルト関連の予言」では、ヨハネの黙示録、聖書の暗号、ファティマの聖母預言聖マラキの予言などがテーマになっている。

 第5章「こんなにあった!当たらなかった世界滅亡・大異変予言オンパレード」は、歴史上の終末論を年表形式で概観したものである。

 コラムでは羽仁礼が中東の終末論や予言者についてを、菊池聡が予言を信じる心理についてを、秋月朗芳がUFOと予言についてを、それぞれ論じている。巻末には共著者たちによる座談会が収録されており、地震予知関連、心理学的側面の補足、WEBBOTの予言、ノストラダムスブームと2012年ブームの対比などが議論されている。

ノストラダムス関連

 ノストラダムスに言及されている主要な項目は第2章にあり、ノストラダムスに関する以下の4篇が収録されている。
  • ノストラダムスは王家の未来から自分の死まで予言した?(pp.56-69)
  • ノストラダムスはフランス革命を予言した?(pp.70-80)
  • ノストラダムスは2012年人類滅亡を予言した?(pp.81-90)
  • ノストラダムスは21世紀のために極秘予言を残していた?(pp.91-98)

 執筆担当者はすべて山津寿丸である。順に、伝記に見られる予言的エピソードの検証、当ったとされる予言詩の検証、恐怖の大王の詩の検証、21世紀のコンビニ本のたぐいでよく扱われているノストラダムスの予言絵画などの検証となっている。
 伝記の検証では、当「大事典」で記載されている事柄よりも、いっそう踏み込んだ検証がいくつもある。また、恐怖の大王の正体にしても、『ミラビリス・リベル』のモチーフとの直接的な関連性について検討するなど、他の日本語文献では見られない分析をいろいろとまじえてある。

誤記

 67ページに2回登場する礼拝堂の名前「サン=ヴィエルジュ」は「サント=ヴィエルジュ」の書き誤りである。草稿の自己チェックやゲラチェックなど何度も訂正しうる機会がありながら、この程度の初歩的な書き誤りに発売直前まで気付けなかったあたりに、執筆担当者である山津の粗忽さがよく表れている。

 その他、山津寿丸の担当箇所での誤りと思しき箇所にお気づきの方は、以下のコメント欄やメールなどでお知らせいただければ幸いである。

コメント

 当「大事典」の管理者は共著者の一人であり、中立的にコメントすることが困難である点は、あらかじめご認識いただきたい。

 ノストラダムス以外にも非常に多くの予言が取り上げられており、懐疑論的アプローチによる予言関連書としては屈指のものとなっているはずである。
 単に対象とした予言の数だけで見れば、同じくらいの予言を俎上に載せたコンビニ本などもある。しかし、そういったものはしばしばネット情報の単なるコピー&ペーストの域を出ないものも散見されるだけに、掘り下げの深さという点で十分に特筆に値すると信じている。

 もちろん、至らない点があることも認めなければならないだろう。ノストラダムス論について具体的に述べておくと、多くのトピックを出来るだけ盛り込もうとした結果、掘り下げが足りなくなった要素がいくつかあることも否めない。予言の原文の掲載についても紙幅の都合などから自主的に見合わせたが、訳文の検証という観点からは批判もありうるだろう。
 さらに、伝説や予言解釈の検証は、いきおい個別事例の否定に力点が置かれがちで、全体像として「ではノストラダムスはどういう人物なのか」「では『予言集』はどのような作品として捉えればよいのか」といった点まで踏み込み切れなかったという思いはある。
 それでも、当「大事典」やウィキペディア日本語版の記事をよく理解しないままコピペしている安易なコンビニ本の情報などよりは、はるかに有益な情報を提供できているという自負はあるが、分かりやすさの点で若干の難はあるかもしれない。担当編集者はビジュアル面の補足を含め、そのあたりの至らなさを誠実にカバーしてくれたのだが、それでもなお分かりやすさが不足しているとすれば、それは執筆担当者である山津寿丸の力不足に他ならない。

書評・著書紹介

 『ムー』 2012年12月号の書評・新刊紹介欄(BOOK INFORMATION FORUM, pp.40-43) で、7冊紹介されているうちの1冊として、本書が取り上げられた。本書のコンセプト、構成などを淡々と紹介するもので、肯定的な評価も否定的な評価も見られない。


【画像】 『ムー』 2012年 12月号

 長野県の地方紙 『市民タイムス』の2013年2月23日付の紙面では、「古今東西の予言を検証」「信州大学准教授 菊池聡さん執筆に参加」という見出しで本書が取り上げられた。著書の内容を手際よく紹介するものだが、見出しや文面からすると、共著者の一人である菊池聡が信州大学准教授であることから、地域にかかわりのあるニュースと見なされたようである。

書誌

書名
検証 予言はどこまで当たるのか
著者
ASIOS、菊池聡、山津寿丸
版元
文芸社
出版日
2012年10月15日
注記

外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire)

Titre
Kenshou : Yogen wa dokomade atarunoka (traduction / Examen : Combien de prédictions réalisées est-ce qu’il y a?)
Auteur
ASIOS (i.e. Association for Skeptical Investigation of Supernatural), KIKUCHI Satoru et YAMATSU Sumaru
Publication
Bungeisha
Lieu
Tokyo, Japon
Date
le 15 octobre 2012
Note
Nostradamus pp.56-98

関連外部リンク

文芸社公式サイト


関係者による紹介や読者による書評など

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コメントらん
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  • 書店で読んでみました。1606年から1792年までのキリスト教会の迫害は、レオニ版41節で述べられた天体位置は確かに1606年1月であるが、「蝕も無い穏やかな年」とあるように、42節で「この年の初めにキリスト教会の迫害が始まる」とあるが矛盾する。 39節にあるように、わざと予言を混乱させていると取るのが自然。 穏やかな年と革命の二つを対比させてるんだと思う。 -- とある信奉者 (2012-12-01 17:06:11)
    • うーん、文脈からすれば日蝕がないことを天文現象的に穏やかと表現しているだけでしょうから、別にその年から迫害が始まっても矛盾しているとは私は思いません。1792年まで、とキリスト教迫害の時期を区切ったことが史実と整合しないのも事実ですし。 -- sumaru (2012-12-03 22:32:00)
  • レオニ版5節には1606年と1585年という年号が記される。“この年”とは実は1585年を指していて、教会への迫害は“三アンリの戦い”であり、彼らの一人のアンリ4世(在位1589~1610)はルイ16世の1792年まで連続して続いたブルボン朝の創始者であるが、1585年から1606年は21年だが、彼の在位年数もおよそ21年。(20年と9ヶ月)“アフリカ”の後にコンマがあるので、アンリ4世の暗殺とルイ16世までのブルボン王朝の二つことが織り込まれていると見る。 -- とある信奉者 (2013-02-01 01:07:59)
最終更新:2013年03月04日 19:58