百詩篇断片・前書き


原文

Fou mon pere avoir entre ses mains quelques centuries de Michel de Nostradamus escrites de sa main & que le feu roy Louis le husse volues avoir. Il les luy remis volontiers entre ses mains et sont à présent en la Bibliothèque Royalle en voicy quelques centuries dont on aurai gardé la copie le restans esttant egaré.

校訂

 ダニエル・ルソのスペイン語版は Feu mon pere...le fou roy となっており、フランス語版は Fou mon pere... le fou roy となっている。 Fou (愚かな) はもちろん Feu (亡き) が正しいが、手稿ではいずれも若干潰れて判読しづらくなっている。
 le husse はおそらく le juste の誤記。詳しくは下の節を参照。

日本語訳

 わが亡父はその掌中に、ミシェル・ド・ノストラダムスが手ずから記し、今は亡き正義王ルイが所望した数篇の予言詩を持っていた。父は喜んでそれらを王に献上したので、今は王立図書館にある。ここに示す数篇の予言詩は写しをとってあったもので、残りは行方不明である。

訳について

 文脈から判断すると、この場合の centurie は四行詩100篇の「百詩篇」ではなく、1篇の予言詩を指すはずである。語源からすればそれは誤用だが、その種の誤用は16世紀後半以降、見られるようになっていた。

 le husse は不明。おそらくルイ10世の異名 「強情王ルイ」(Louis le hutin) のように、王の異名を示すと思われるが、ルイ13世の異名は 「正義王」(le juste) なので、その誤記ではないかと思われる (そういう認識で手稿の1文字目をよく見ると、h ではなく j と書かれているようにも見える)。
 なお、husse という形容詞は古語辞典でもプロヴァンス語辞典でも見当たらない。DALFには女性名詞で「長靴」(botte) を意味する husse はあるが、冠詞の性と一致しない。男性名詞で「囲い」(clôture) を意味する housse もあるが、異名としては意味不明である。

 garder la copie は 「写しをとる」 を意味する成句。

解説

 従来の定説では、この 「父」 はノストラダムスの友人でもあった同時代人フランソワ・ド・ガロー・ド・シャストゥイユとされていた。しかし、当「大事典」では、その孫に当たるジャン・ド・ガロー・ド・シャストゥイユこそが、ここで言われている 「父」 であろうと考えている。詳しくはシャストゥイユが伝えた百詩篇の解説部分を参照していただきたい。


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