百詩篇断片・9番


原文

Non loin du port pillerie et naufrage
De la Cieutat1 frapte2 Isles Stécades
De Saint-Tropé3 grand marchandise nage
Classe4 barbare au rivage5 et bourgades.

異文

(1) la Cieutat : ta cieudad (Ruzo 1975), la cieudad (Ruzo 1982)
(2) frapte : frappe (Ruzo)
(3) Saint-Tropé : St troppe (Ruzo)
(4) Classe : Ctasse (Ruzo 1975)
(5) rivage : irivage (Ruzo 1975)

日本語訳

港から遠くない場所で掠奪と難破。
ラ・シオタからストエカデス諸島を打つ。
サン=トロペからの大きな貨物が(海面を)漂う。
バルバロイの艦隊が沿岸と村落へと。

訳について

 la Cieutat が南仏のラ・シオタ (La Ciotat, ラ・シヨタ) だという点は、ピエール・ロレ(未作成)ピーター・ラメジャラーらが一致している。その2行目は前置詞が不足しているが、「(4行目のバルバロイの艦隊が) ラ・シオタからストエカデス諸島までを打つ(攻撃する)」という意味ではないかとも思える。

解説

 ピーター・ラメジャラーは、北アフリカのバーバリー海岸から来た海賊による同時代の略奪行為と、『ミラビリス・リベル』に描かれた未来のイスラーム勢力の侵略とが重ねあわされていると推測した*1

 『ミラビリス・リベル』をここで持ち出すことには議論の余地があるかもしれないが、挙げられている地名はいずれもプロヴァンスからコート=ダジュールにかけての沿岸部に見られるものであり、ローカルな掠奪事件が土台にあることは確かだろう。なお、サン=トロペとラ・シオタは、百詩篇正篇では一度も登場していない。


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最終更新:2013年02月01日 19:38