なお、この文献では著者は「ダニエル・ルゾー」と表記されている。
監修者である流智明の名前はあるが、訳者の名前はない (監修者の流智明は、あとがきでフランス語が読めないと述べているので、彼自身が訳したとは考えられない)。
【画像】カバー表紙
内容
序章を入れれば全7章の構成である。
- 序章 人類はすでに滅亡の準備を始めている
- 第1章 遺言書によって初めて暴かれる予言の謎
- 第2章 息子セザールへの手紙に隠された秘密
- 第3章 ノストラダムスは偽名だった
- 第4章 予言詩を解く一八の鍵
- 第5章 一九八五年七月救世主セザール誕生
- 第6章 これが地球脱出計画だ
大まかな対応を示すと、第1章は原書の第1部、第2章と第3章が原書の第2部、第4章が原書の第3部に対応している。あくまでも大まかな対応関係であり、原書と比べて省略されている箇所や改変されている箇所もかなりある。
残りの章は (「セザール」という救世主の誕生などにふれた長々としたシミュレーション小説の部分なども含め) 日本語版独自の章で、そこで扱われている詩篇のいくらかは、原書ではまったく違う文脈で取り上げられている詩の流用も見られる。
原書にはないいくつかの写真が掲載されているのは良い点かもしれないが、その代わりに原書にあった貴重な手稿や古版本の写真などには、割愛されてしまったものもかなりある。
コメント
高く評価されている「書誌編」をすべて削った上で、むやみに滅亡を強調するような章を大幅に書き足しているので、訳書として評価できるようなものではない。
「書誌編」 が削られてしまったのは、日本の
ノストラダムス現象にとっては実に不幸なことであったと言わざるをえないが、逆にいうと、日本のノストラダムス現象がいかに歪んでいたかを示す好例でもある。
同じく、
セザールへの手紙の全訳が掲載されている数少ない日本語文献のひとつではあったが、フランス語版原書に掲載された原文はオリジナルの原文ではなく、オリジナルをスペイン語訳したものをさらにフランス語に訳し直したという代物なので、原文からかけ離れた箇所も少なくない。
ダニエル・ルソの信奉者的解釈は、海外でも特に高く評価されているようには見受けられないが、それでも日本語版の質を元に評価されたのでは、彼もたまったものではないだろう。
たとえば、
加治木義博は日本語版のあいまいに訳されていた箇所について、「どうやらリュゾ氏とその本の訳者は、天文学や暦学、占星術などに暗いらしい」と批判していたが、原書と対照すれば、かなり曖昧で誤解を招きやすいが誤訳とまではいえない箇所を加治木が早合点しただけで、その批判が的外れであることは容易に確認できる。
再版
発行部数
『SPA!』1991年3月20日号に掲載されていた公称発行部数は14万部とされていた。そのリストには
のちの改題版が含まれていないので、改題版を含めた数字の可能性もある。
また『日経エンタテインメント!』調査(1997年)では18万部とされているが、その刊行年が1986年とされていることからすると、こちらは改題版が考慮されているはずである (初版と改題版をあわせた数値なのか、改題版のみの数値かは不明)。
書誌
- 書名
- ノストラダムスの遺言書
- 著者
- ダニエル・ルゾー
- 監修者
- 流智明
- 版元
- 二見書房
- 出版日
- 1983年3月10日
- 注記
外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire)
- Titre
- Nostradamus no Yuigonsho (traduction / Le testament de Nostradamus)
- Auteur
- Daniel RUZO
- Directeur
- NAGARE Tomoaki
- Publication
- Futami shobô
- Lieu
- Tokyo
- Date
- le 10 mars 1983
- Note
- Traduction d’extraits en japonais du livre de Daniel Ruzo, Le Testament de Nostradamus, 1982
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最終更新:2013年03月04日 19:45