百詩篇第6巻46番


原文

Vn iuste1 sera en exil2 renuoyé3,
Par pestilence aux confins de Nonseggle4:
Responce5 au rouge6 le fera desuoyé7,
Roy retirant à la Rane8 & à l’aigle9.

異文

(1) Vn iuste : Unjuste 1672
(2) exil : exii 1650Le
(3) renuoyé : reuuoyé 1653, Anvoyé 1672
(4) Nonseggle : Nonfeggle 1557B 1589PV, Nonsegle 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1840, Non seggle 1672
(5) Responce : Response 1672
(6) rouge : Rouge 1653 1665 1840
(7) desuoyé: desouyer 1649Ca 1650Le 1668, desvoye 1665 1672
(8) Rane : Rame 1589PV 1600 1610 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1716 1840
(9) & à l’aigle : & à l’Aigle 1597 1600 1605 1610 1611 1627 1628 1649Xa 1672 1716 1840 1981EB, & l’Aigle 1644 1650Ri 1653 1665

  • (注記1)1588-89では3-4-1-2の順でIV-67に差し替えられている。
  • (注記2)2行目 Nonseggle は初出の 1557U のかすれがひどく、Nonfeggle か Nonseggle かの区別がつかない。とりあえずピーター・ラメジャラーの読みにしたがって、Nonseggle と読んだ。

日本語訳

公正な者が亡命地に戻されるだろう、
ノンセグルの境界地域でのペストによって。
赤き者への返答は彼に道を踏み外させるだろう、
蛙と鷲から国王を取り去りつつ。

訳について

 Nonseggleは不明。現時点では語義を確定しきれない。

 既存の訳についてコメントしておく。
 大乗訳について。
 1行目 「人が追放され」*1では、un juste (1人の公正な人) の意味合いが出ない上、renvoyer (送り返される) の意味合いも出ていない。
 4行目 「カエルと鷲へ退却するだろう」 では roy (王) が訳に反映されておらず、明らかにおかしい。

 山根訳は特に問題は無い。 

信奉者側の見解

 Nonseggleの難解さにもよるのだろうが、全訳本のたぐいでしか解釈されてこなかった詩篇である。
 テオフィル・ド・ガランシエールは、鷲が神聖ローマ皇帝、蛙がフランス王だろうとしたが、ノンセグルは意味不明とし、それ以外の解釈や語注は行わなかった*2

 エリカ・チータムは1行目をルイ18世に当てはめられる可能性を示したが、全体としては意味不明とした*3
 セルジュ・ユタンは、1行目はナポレオンの百日天下のときに内相になった大カルノーのことで、復古王政についての予言と解釈した*4
 ジョン・ホーグは、Nonseggleをベルギーのモンス (Mons) とドイツのリーゲル (Riegel) を組み合わせたものとし、ルイ18世が亡命中にモンスやリーゲルに滞在していた時期があることと解釈した*5

同時代的な視点

 ピーター・ラメジャラーは2003年の時点では、百詩篇第5巻3番を引き合いに出しつつ、蛙が海賊艦隊、鷲がカール5世で、赤き者は枢機卿などと解釈していたが、事件そのものは特定できないとしていた。
 2010年になると、出典を特定できないのは相変わらずだが、部分的にはウルリヒ・フォン・フッテンのエピグラムに触発されているという見解を示した*6。なお、蛙は疑問符つきでヴェネツィアのことではないかともされている。

 Nonseggleが説得的に解明されないことには、そもそも詩の主たる舞台すら特定できない。


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コメントらん
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  • ホーグの解釈はNonseggleの項目に「とある信奉者」さんが寄せてくださったコメントに触発されて加筆したものです。--sumaru
最終更新:2013年07月11日 22:34

*1 大乗 [1975] p.186。以下、この詩の引用は同じページから。

*2 Garencieres [1672]

*3 Cheetham [1973], Cheetham (1989)[1990]

*4 Hutin [1978]

*5 Hogue (1997)[1999]

*6 Lemesurier [2010]