百詩篇第5巻8番


原文

Sera laissé le feu 1 vif, mort 2 caché,
Dedans les globes 3 horrible 4 espouuentable 5
De nuict 6 à 7 classe 8 cité 9 en pouldre lasché 10 ,
La 11 cité à 12 feu, l’ennemy fauorable.

異文

(1) le feu : feu 1597 1600 1610 1611 1627 1644 1650Ri 1650Le 1653 1981EB 1665 1668 1716 1840
(2) vif, mort : mort vif 1649Ca, vif, & mort 1627 1644 1650Ri 1650Le 1668, vif: & mort 1653 1665 1840
(3) globes : glopes 1588-89, Globes 1672
(4) horrible : horribles 1557B 1649Ca 1653 1665 1840
(5) espouuentable : espouentables 1557B
(6) nuict : nnict 1590Ro 1649Xa
(7) à : a 1588-89 1672
(8) classe : classé 1649Ca
(9) cité : Cité 1672
(10) lasché : lache 1588Rf
(11) La : L# 1628
(12) à : a 1588-89

(注記)1628の4行目の異文は、Lの後にaが逆さまに植字されている。上の欄では#で代用。

校訂

 ブリューノ・プテ=ジラールは1行目の caché を cachée と校訂した *1

日本語訳

生きて火に委ねられるだろう。死して隠される。
球形の中におぞましく恐るべきもの。
夜間、艦隊により都市は灰燼に帰せられる。
都市には火。敵には好都合。

訳について

 1行目についてはジャン=ポール・クレベールの読みを参考にしたが、クレベールやピーター・ラメジャラーは feu は「火」 と 「最近亡くなった人」 の二重の意味が込められているとしている。ラメジャラーやリチャード・シーバースは後者の意味にとっており、ラメジャラーの英訳だと 「最近亡くなった人が離され、死が隠される」 となっている。

 既存の訳についてコメントしておく。
 大乗訳について。
 1行目 「火は燃え残り 死人は隠され」 *2 は、彼女の底本に基づく訳としては誤りとは言い切れない。もっとも、vif と mort の入れ替えは上の異文欄から明らかなように、17世紀半ばに唐突に出現している上に、実証的な論者は誰も採用していないので、現代において支持すべき理由はない。
 2行目 「球体はひどくぶるぶるふるえている」 は、Dedans (~の中で / に) が訳に反映されていない。
 3行目 「夜に艦隊は町に対して攻撃をし」 は表現が弱すぎる。poudre (灰) が原詩にある以上、それを反映させるべきだろう。ちなみに、リチャード・シーバースの英訳では、City reduced to ash... *3 となっている。

 山根訳について。
 1行目 「生きた火 隠れた死が解き放たれ」 *4 は、そういう訳も可能。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは、前半は球体に火が隠されることを描写しており、手榴弾か地雷の予言とした。後半はそのまま港かその近くに停泊した艦隊によって都市が炎上する予言として、具体的な事件などには結び付けていなかった。

 アンリ・トルネ=シャヴィニーは、青年イタリア党員オルシーニによるナポレオン暗殺未遂事件(1858年1月)と解釈した *5アナトール・ル・ペルチエもそれを優れた解釈として、トルネ=シャヴィニーの名前にきちんと言及しつつ、アレンジした *6
 彼らの読み方では、classe は「艦隊」ではなく「一群」とされていて、彼らによって火薬の詰まったものが都市に放り投げられるという、爆弾テロの描写となっている。
 この解釈は、チャールズ・ウォードロルフ・ボズウェル *7 らが踏襲した。

 アンドレ・ラモンジェイムズ・レイヴァースチュワート・ロッブは第二次世界大戦における火薬兵器の使用と解釈した *8セルジュ・ユタンも似たようなもので、第二次世界大戦中の空爆の様子と解釈した *9
 エリカ・チータムも単一の都市が対象となっている点で、イラン・イラク戦争などの20世紀後半の戦争よりも、第二次世界大戦のほうが妥当ではないかとしていた *10

 マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)は未来の戦争の情景としており、息子のジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌも、近未来のパリ炎上の予言と解釈していた *11

同時代的な視点

 ピエール・ブランダムールは、2行目の描写を百詩篇第2巻91番の 「球形の中で死と叫びが聞かれるだろう」 と関連付け、(戦争などの予兆としての) 火球の幻像が空に出現する驚異(未作成)の描写と解釈した *12

 ピーター・ラメジャラーは、特に出典を特定していない。

 当「大事典」としては、ブランダムールの推測は妥当なものだろうと判断する。2行目は凶兆の描写で、後半にある艦隊による都市の襲撃を暗示しているという構成なのではないかと思われる。


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  • ドレスデン爆撃 1945年2月13日~15日と東京大空襲が、1945年3月10日深夜に行われた事を予言か。1行はウィキペディアのドレスデン空爆を参考にした。4行は後に原爆投下を決定したヤルタ会談(1945年2月)の事か? “夜”とは、非合法を意味し、5章81番でヤルタ会談を予言していた事を踏まえると、この推論は正しいように思える。 -- とある信奉者 (2013-08-09 20:50:58)

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