百詩篇第2巻19番


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原文

Nouueaux 1 veneus 2 , lieu basti sans defense 3 ,
Occuper place 4 par 5 lors inhabitable.
Prez, maisons, champs 6 , villes 7 prendre à plaisance,
Faim 8 , peste 9 , guerre 10 , arpen 11 long labourable 12 .

異文

(1) Nouueaux : Nouueau 1653 1665
(2) veneus 1555V : venus 1555A & T.A.Eds. (sauf : veneux 1589PV, venu 1665)
(3) defense 1555 1840 : defence T.A.Eds. (sauf : deffense 1589PV, deffence 1557B 1588-89 1611B 1649Ca 1650Le 1668 1981EB)
(4) place : la place 1557U 1557B 1568 1588-89 1590Ro 1597 1600 1605 1610 1611 1628 1649Xa 1716 1772Ri
(5) par lors : pour lors 1588-89 1590Ro 1611B 1644 1650Ri 1653 1665 1672 1981EB
(6) maisons, champs : Maisons, Champs 1672
(7) villes : ville 1668P 1716, Villes 1672
(8) Faim : Fain 1605 1628 1649Xa
(9) peste : Peste 1557U 1568A 1568B 1568C 1590Ro 1672 1772Ri
(10) guerre : Guerre 1672
(11) arpen : arpent 1611B 1981EB
(12) labourable : laboura ble 1557U, labourage 1597 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716

(注記)当「大事典」では比較対象としていないが、ピエール・ブランダムールによると、ピエール・メニエの年代なし版では ocuper が on y pert となっている異文があるという。

日本語訳

新参たちが、建物はあるが無防備な場所であり
その時点で人のいない場所を占有する。
草地、邸宅、田畑、都市を気の向くままに手に入れる。
飢餓、ペスト、戦争。狭い土地も耕作するには時間がかかる。

訳について

 4行目 arpen は arpent の揺れ。arpent は20アールから50アールに該当する古い土地の単位で、転じて「わずかな土地」の意味がある。4行目後半はピエール・ブランダムールジャン=ポール・クレベールの釈義 ("L'arpent sera long à labourer") に基づいたが、ブランダムールは 「長い土地は耕作に適するだろう」 とも読める可能性を示しており、ピーター・ラメジャラーの英訳はそちらに近い。

 既存の訳についてコメントしておく。
 大乗訳について。
 1行目 「新参者がかこいのない場に立ち」 *1 は誤訳。basti (bâti) は 「(建物が)建っている」 の意味であって、人が立つ意味ではない。
 3行目 「楽しんで野原 家 町をつくるだろう」 は、prendre (英語の take) を 「つくる」 と訳すのが強引だろう。なお、「楽しんで」 は直訳としては誤りではない。当「大事典」では、à plaisir と釈義したブランダムールやクレベールに従っている。

 山根訳について。
 1行目 「新来の者は護りのない土地を囲み」 *2 は、basti を 「囲み」 と訳すことに疑問がある。
 3行目 「やがて牧場 家 田畑 村や町がうれしい贈り物となろう」 は意訳にしても、原文から離れすぎではないだろうか。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは 「解釈の必要がないほどに平易だ」 とだけコメントした *3
 その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、ジャック・ド・ジャンバルタザール・ギノーD.D.テオドール・ブーイフランシス・ジローウジェーヌ・バレストアナトール・ル・ペルチエチャールズ・ウォードマックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)ロルフ・ボズウェルジェイムズ・レイヴァーの著書には載っていない。

 アンドレ・ラモンは、1943年の時点で、パレスチナに入植しているユダヤ人がいずれ困難に直面することになる予言だろうと解釈した *4 。のちに、ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌもこの線で解釈し、第二次世界大戦中から戦後にかけてパレスチナ地方にユダヤ人たちが移住し、中東戦争の幕が開いたことと解釈した *5


 ヘンリー・C・ロバーツすぐ前の詩とともに、ノルマンディ上陸作戦の予言と解釈した *6
 その日本語版監修者だった内田秀男(未作成)は、人類が月に移住することになる予言と解釈し、同版編集者だった韮沢潤一郎(未作成)は、コロンブスの新大陸到達からピューリタンの北米移住までの経緯を述べていると解釈した *7
 月への移住という解釈はエリカ・チータムの著書の日本語版監修者たちも踏襲した (チータムの原書では一言も解釈が書かれておらず、後の最終版でも 「私はこの詩を解釈できない」 とだけ書かれていた *8 )。

 セルジュ・ユタンは1940年に電撃戦でドイツ軍がフランスに侵攻したことの予言と解釈した *9

同時代的な視点

 ピエール・ブランダムールジャン=ポール・クレベールは特にモデルの存在に言及していない。

 ピーター・ラメジャラーは、『ミラビリス・リベル』、特にその 「偽メトディウス」 において、未来のイスラーム勢力の侵攻によって、小アジアやヨーロッパが広範囲に無人の野となってしまう時期が来ることが予言されていることと重ね合わせた *10


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