別のものは、かつて
ノストラダムス『
予言集』の信奉者たちによって主張されていた、1999年の人類滅亡を回避するために現われるとされた存在である。
ただし、これは
日本独特の解釈であり、海外では実証主義的な研究者はおろか、信奉者たちからさえもまったく支持されていない奇説にすぎず、なんら正当な根拠を持っていない。
だが、1980年代以降の日本の新興宗教などに大きな影響を及ぼした説であり、
日本のノストラダムス現象が国際的に見ても特異な道をたどる上で大きく影響した概念である。
初出
それによると、
恐怖の大王による人類破滅について、王妃カトリーヌ・ド・メディシスから尋ねられたノストラダムスが、それを避けるための条件として、恐怖の大王の前に「別のもの」が現われたならば、破局は回避できるかもしれないと述べた、と紹介した。
五島はこの語が
詩百篇第1巻48番に登場するとして、その詩の2行目を「七〇〇〇年、別のものが王国を築いている(保っている)だろう」と訳した。
【画像】『アザーズ 別のものが来る』
新興宗教への影響
五島の『大予言』シリーズは累計発行部数590万部以上のベストセラーであり、その影響力も大きかった。
新興宗教の中には、自分の教団や教祖、関連する概念などこそが人類を救う「別のもの」であると主張することがしばしば見られた。
【画像】『原田実の日本霊能史講座』
たとえば、幸福の科学の大川隆法によれば、自身に降った 「ノストラダムスの霊」 と称する存在が、人類の破滅を回避する 「別のもの」 は 「あなた方」(幸福の科学) だと語ったことになっていた。
また、世界基督教統一神霊協会(統一教会)の教祖・文鮮明を救世主とする予言本を多く書いていた高坂満津留は、この「別のもの」もその根拠となるものとして採り上げていた。
さらに新興宗教の例とは異なるが、
飛鳥昭雄の漫画作品のなかでは、ユダヤ教でもカトリックでもプロテスタントでもない、ある宗教に従った場合に、恐怖の大王(彼の訳語では「驚愕の大王」)の脅威を退けられると、ノストラダムス自身が述べていたことになっていた。
飛鳥の場合、教団名を直接的には一切明かさないという点でも変則的な事例ではあったが、自身が信仰する団体への入信を暗に勧めていたのではないかと「解釈」する者たちもいた。
実証主義的な検証
詩百篇第1巻48番に登場する
autre は単なる一般名詞にすぎないので、海外のまともな論者の文献では、ことさらに特筆大書されることはない。それどころか、
ピエール・ブランダムールの校訂では、Sept mil ans autre (七千年に別のものが) は、Sept mil ans outre (七千年をこえて) の誤植とされており、autre は校訂された原文から消えている。
ピーター・ラメジャラー、
ジャン=ポール・クレベールなどのように、比較的評価の高い論者の中にも、ブランダムールの校訂を支持しない者がいるのは事実である。
しかし、彼らにしても、人類滅亡を覆す特別な何か、といった理解はしておらず、天使年の周期(354年4か月)に従い、その支配する天体が別の天体に切り替わること(
詩百篇第1巻48番参照) と理解している。
むろん、「別のもの」 を信じることに拘泥しようとする論者は 「いや、『別のもの』 はノストラダムス予言の中でも特に難解だから、海外の論者が誰も気づけていなかっただけだ」 というようなことを言うかもしれない。
だが、もともと 「別のもの」 の提唱者である五島は 「この謎の救いに充ちた“別のもの”をめぐって、いままで、いろんな解釈がみだれ飛んできた」 と述べていたのだから、そのような主張が通る余地はない。
そして、その五島の主張が、現実の海外の研究動向とまったく対応していないことは、すでに述べたとおりである。
なお、蛇足だが、五島の著書 『アザーズ』 (Others) は 「別のもの」 を複数形にすることで様々な 「別の」 何かを提示している。
しかし、
本来の原文 autre は単数形であり、
ヘンリー・C・ロバーツ、
エリカ・チータム、
エドガー・レオニ、
ピーター・ラメジャラーなど、(outre という校訂を採用しているシーバースを除けば) 英語圏の論者は立場を問わず、another と英訳している。
そういう意味で 『アザーズ』という複数形の書名は、
ノストラダムス予言とは遠く隔たった何か 「別のもの」 を表していると判断せざるをえないだろう。
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コメントらん
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- 人類は滅びの時であり、別のものは新人類を生み出すための存在 -- 名無しさん (2014-04-25 18:51:36)
最終更新:2014年04月25日 18:51