La vie et le testament de Michel Nostradamus

 『ミシェル・ノストラダムスの生涯と遺言』(La vie et le testament de Michel Nostradamus) は、1789年にパリで刊行されたノストラダムスの伝記である。
 著者は匿名の人物であるが、そこに収められたエピソードの数々は、後年のノストラダムス伝説の形成に大きく寄与した。

題名

  • LA VIE ET LE TESTAMENT DE MICHEL NOSTRADAMUS, Docteur en médecine, Astrophile, Conseiller-Médecin ordinaire du Roi ; né à Saint-Remy le 14 Décembre 1503, sous le regne de Louis XII.
    • Avec l'explication de plusieurs Prophéties très-curieuses.
    • De filiis quoque Isachar, veri eruditi, qui noverat singula tempora. Paralip. Lib. I, cap.12, v.32
    • A PARIS,
    • Chez GATTEY, Libraire de S. A. S. Madame la Duchesse d'Orléans, au Palais-Royal Nos.13 &14
    • 1789

  • 1503年12月14日、ルイ12世の治世下にサン=レミに生まれた医学博士、愛星家、王附常任侍医・顧問ミシェル・ノストラダムスの生涯と遺言
    • とても興味深い幾らかの予言の解説付き
    • 「イサカル族の者たちは、あらゆる時を認識し、識別する能力に長けていた」『歴代誌・上』第12章32節
    • パリ、
    • パレロワイヤル13、14番のオルレアン公妃殿下の書肆ガテーの工房にて
    • 1789年

注記

 『歴代誌・上』からの引用は、ピエール=ジョゼフ・ド・エーツの『ノストラダムスの生涯』の扉を真似たものだろう。引用箇所が全く同じである。
 なお、現在の新共同訳の『聖書』では、イサカル (イッサカル) への言及は12章32節ではなく、同33節になっていて、次のように訳されている。

「イサカルの一族からは、時に応じてイスラエルが何をなすべきかを見分けることのできる頭 (かしら) たち二百人と、その指揮下にある同族のすべての者」*1

 エーツや、この1789年の伝記の引用は、どうも本来の文脈とは少々ニュアンスが異なって見える。

著者

 不明。
 ピエール=ジョゼフ・ド・エーツの伝記と混同されることがあり、ミシェル・ショマラの書誌でもエーツに帰せられていたが*2、エーツは1736年に没しているので、彼が著者ということはありえない。

 ロベール・ブナズラは「匿名の著者」と位置づけているが、版元であるガテーである可能性も示している*3
 ただ、相応の数の資料 (その中には、当時は公刊されていなかった手稿が、明らかに複数含まれている) を渉猟して纏め上げたこと自体は事実のようなので、編著者の調査能力は相応に認められるべきものと思われる。

 反面、緒言のなかで、「われわれが提供するものは『ヤヌス・ガリクス』の名の下に書かれた様々な秀作で知られるエドム・シャヴィニー (Edme Chavigny) によって書かれた手稿から、逐語訳されたものである」と書かれているのは、明らかにおかしい。

 『ヤヌス・ガリクス』(ガリアのヤヌス) は、『フランスのヤヌスの第一の顔』 以外に該当する関連書が存在しないが、その著者はジャン=エメ・ド・シャヴィニーであり、エドムなどという名ではないからだ。また、エーツの伝記からかなり転用しているにも関わらず、エーツの名は隠していることも、この人物の誠実さを疑わせる要素になる。

所蔵先

  • フランス国立図書館、サン・ブリユー市立図書館、リヨン市立図書館ショマラ文庫、マルセイユ市立図書館、ルーアン市立図書館
  • ジュネーヴBPU、Szabo Ervin図書館(ブダペスト)、ヤギェヴォ大学図書館(クラクフ)、ギリシア議会図書館(アテネ)

 公共図書館以外に、ロベール・ブナズラなど、研究者が私蔵している事例がある。

全訳

 当「大事典」では、この文献の前半 (伝記部分) についての全訳と注釈を予定している。完成がいつになるのか (そもそも完成するのか) は未定である。


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最終更新:2014年05月20日 23:54

*1 新共同訳聖書より引用。

*2 Chomarat [1989]

*3 Tronc de Coudoulet / Benazra [2001] p.55