Michel Nostradamus: Life and Works

 『ミシェル・ノストラダムス : 生涯と作品』(Michel Nostradamus: Life and Works)は、エドガー・レオニのものと考えられる草稿。タイトル・ページに手書きで「1950」の数字がある。作成年を指すものと思われるが、この数字が事実かどうかを確かめる術は無い。

【画像】 タイトル・ページと一部の拡大。なお、青で隠してある場所には手書きの住所と思しき情報がある。60年以上前の住所を隠す意味があるかは疑問だが、公表を想定した個人情報だったのか不明のため、秘匿しておく。

概要

 タイプライターで作成された1000ページを超える2巻本だが、途中で2分割して製本したという印象で、2巻目は固有のタイトルページを持たない。ページ番号は手書きで記入されており、最後のページは「1027」。
 片面印刷の紙を見開きで製本している。つまり、見開きで文字情報が書かれているページと、(その裏面同士の)見開きで白紙になっているページが交互に来る(白紙にはページ番号は打たれていないので、「1027」というのは純粋に文字情報の書かれているページ数ということである)。

【画像】 外観。なお、比較のために新書本(祥伝社のノン・ブック)を並べた。

 『ノストラダムス:生涯と文学』(1961年)の素材は基本的に出揃っている。すなわち、伝記、書誌、『予言集』の対訳、各百詩篇へのコメント、地名索引、地図、遺言書やいくつかの私信の対訳、(偽物と位置づけている)六行詩集やオリヴァリウスの予言の対訳などである。

 ただし、その内容には手書きによる膨大な書き込みが残されている。書き込みに使われている筆記具は黒鉛筆、赤鉛筆、青ペン、緑ペンの4種(青ペンは経年劣化による色褪せの可能性もあるが、青色と青灰色があるようにも見える。もしこれらが別なら5種)。修正の例として、百詩篇第10巻72番を抜き出しておこう。

【画像】上が本書の情報、下が1961年に公刊されたもの。

真筆性

 先行研究がまったくない。
 ただ、当「大事典」で実物を検討する限りでは本物の可能性が高いと考えている。理由は次の2つである。
  • 偽物の場合、レオニの公刊された文献から何段階か前の版を想定して、タイプライターで作成し、その後に何種類もの筆記具で膨大な修正を施していったことになる。これだけ面倒な手間を施して偽作するメリットがあるだろうか。
  • タイプ版自体は本物で、書き込みが偽物という可能性(たとえば、タイプ版を手に入れたファンが、実際の公刊されたバージョンとの違いをメモしていったなど)もありうる。ただし、その場合、筆記具が4種類以上というのは不自然だろう。この種の校正をやったことがある人間なら分かるだろうが、色を変えるのは、修正の種類で分けているか、1回目・2回目と回数によって変えたかのいずれかの可能性が高い。別人による書き込みならば、そのような書き分けをする必要性に乏しい。
 そして何より、偽作だとしたら、実物が古書市場に出回るまで存在そのものが知れていなかったというのは不自然極まりない。中に書き込まれている手書き情報はきわめて膨大である。それだけの手間を掛けて偽造したのに、誰にもアピールすることなく眠らせ続けていたというのは考えづらいだろう(結果的に当「大事典」が手に入れたからこうして公表できたが、ネットで情報を発信していない好事家が手に入れていたら、存在そのものが知られなかった可能性が高い)。


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最終更新:2016年07月14日 01:54